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第二話 スキル×アンロック

 剣ということを考えればおかしな物言いなのかもしれないが、視界に飛び込んできたのは3体の小柄な化け物と、ひとりの少年だった。


 そして、どうやら彼はその化け物に追いかけられているようでもある。

 3体の化け物は一様に肌の色が濃緑色で、身長は幼少の男児程度、ただそこそこ肉付きが良く、膂力はそれなりにありそうではある。


 3体が3体とも上げ続ける奇声は、意味のある言葉にはとても思えないが、彼らなりに意思伝達は図れてるようで、少年を囲むような連携も見せている。


 開いた口からは小さな牙が見え隠れしていて、先の尖ったエッジの聞いた耳も特徴のひとつか。

 楕円形の眼は顔の半分を占めるぐらいに大きく、少し窪んでいて醜悪さに拍車をかけている。


 俺はこの化け物に対して知識があった。確かいわゆる魔物と呼ばれる類のもので、ゴブリンというのが正式な名称だ。


 このゴブリンは強さで言えば、戦闘経験のない人間がひとりで相手するには厳しいが多少でも武器の扱いに精通していたりすればそれほど手強くない、筈であるが、正直今見ている分にはとても楽勝という雰囲気ではない。


 先ずいくら相手が小柄な魔物とはいえ、数の違いが大きい。

 逃げていた朱髪の少年はひとりであるし、それにゴブリンよりは上背が高いとはいえ、男として見るなら小柄な方だと思う。


 何より装備が悪い。脚には麻製と思われるボロボロのズボン。それを紐で縛り止めてる形だ。腰の脇には革製の水筒が括りつけられている。

 腰から上も決して上等と言えないような泥汚れの目立つ首の長い半袖のシャツ。一応シャツの上には革製の胸当てが装着されてるが、やはりどこか古びた印象だ。


 おまけに手に持っている短めの剣は刃こぼれが酷く、今にもポキっと折れそうなぐらいだ。

 唯一左腕に装着されている小型の丸盾だけは、そこそこ役に立ちそうにも思えるが――

 しかし、何故こんなところにそんなオンボロな装備の少年が? といった感じだ。


 ただ……何か訳ありなのは確かかもしれない。彼の特徴でもある朱色の髪は、元々は短いながらも整えられた綺麗な色だったのでは? と思える痕跡も伺えるが、今は砂と土埃ですっかり汚れ、毛もあちらこちらに跳ねまわってしまっている。

 

 目鼻立ちは整っているし、大きな瞳と中性的な顔立ちは美形というよりは可愛らしいといった感じだが、ボロボロの装備と全体的に薄汚れた感じが色々台無しにしてしまっているな。


 と、そんな彼ではあるが、どうやら覚悟を決めたらしい。 

 この場所はそれなりに広めの空間だし動きまわって戦うにはいいと思ったのかもしれないな。


 実際彼のその動きは中々俊敏だ。


 ゴブリンは仲間と声を掛け合い、逃げ場を防ごうとするが、こなれた動きで少年はゴブリンを避け、時には縫うようにしながら相手を翻弄する。


 見た目のボロさと違って身体能力はかなり高そうか。

 剣の握りもしっかりしているし、歳の割に素人臭さは感じさせない。


 ただ、それでも装備の悪さは致命的か――相手のゴブリンは全く知性がないというわけではないようで、身体には原始的な貫頭衣、そしてそれぞれが手に石槍、棍棒、切れ味の悪そうなボロボロのナイフを持っている。


 正直質の悪さは少年とどっこいどっこいといったところだと思うが、それでも小柄な彼からしてみれば当たれば十分に脅威と成り得るだろう。


 だからこそ少年は、同じ位置に留まるような事はせず、動き回っているのだと思うけどな。

 と、そんな事を思っていたら、ナイフを持ったゴブリンが少年に飛び掛った。


 結構思い切った攻撃だな。一発で仕留めようとでも考え気が焦ったのか。

 でも得策とはいえない。案の定、彼は軸をずらし半身になってその一撃を躱した。

 

 当然攻撃に失敗したゴブリンは着地と同時にバランスを崩す。

 攻撃に目が行き過ぎて、重心が前に傾きすぎてるからそうなるんだ。

 

 そしてそれを見逃すわけもなく、少年はその首目掛けて刃を振り下ろした。

 これで終わり――だったろう本来なら。

 だが、彼が手にしていた剣は相当疲労していたようだ。


――パキィーーン。


 空間に残酷な響きが広がった。結局ゴブリンに対しての一撃は致命傷に至らず、僅かに首の肉を抉ったに過ぎない。


 この時点で手持ちの武器がなくなったのは痛すぎることだろう。

 どうみてもサブウェポン的な物は携帯してなさそうだしな。


 しかも今武器が破損し折れた事で、少年の動きが一瞬止まってしまった。

 そこへ仲間のゴブリンが突き出した槍が迫る。

 脇腹を狙う一撃だ。しかし左側だったのだ幸いしたのか、既の所で丸盾で受け止める。

 そのまま後ろに飛び退くが、彼が退いた位置にもう1体のゴブリンの姿。


 危ない! と思った時には棍棒で横殴りにされる。

 反射神経が良いのか、盾を滑らせて割り込ませたが、中途半端な体勢で受け止めてしまった為に小柄な少年の脚が地面を離れ、緩い弓形を描くように漂い、そして地面に身体を打ち付けゴロゴロと転がった。


 その先には――俺が刺さっている台座がある。

  

 さて、困った。いや、正直言うと出来れば俺を抜いてくれるとありがたいという思いがある。

 が、状況的にそれはどうなのか?


 何せ彼にとっては結構なピンチだ。

 3体のゴブリンに命を狙われ、更に唯一の武器も失ってしまっている。


 勿論だからこそこの剣を、つまり俺をといいたいところなんだが、なにぶん、もっか俺の剣は錆びてボロボロの状態である。

 更に耐久値が3とあまりに貧弱。


 武器としてみればヘタしたら今折れた剣より頼りないかも知れない。


 ただ、それでもないよりはマシかもしれないし、俺だってこのまま指を咥えてみているのは嫌だ。

 いや、咥える指なんてこの姿じゃ持ち合わせていないけどね。


 でも――問題はどうやってそれを伝えるかなんだよな……彼が気づいてくれればという考えもなくはないけど、でもこれに気づいたからって使うか? て話だ。

 こんなオンボロの剣。俺だったら頼らない。

 

 そう考えると、やっぱ俺から伝えられるのが一番なんだが――でも、その手段がな……


 と、そんな事を考えていたら、床に這いつくばっていた彼が咳き込みながら立ち上がる。

 中々痛々しいな――


「ギャギャ!」

「グギェ!」

「ギェギェギェ!」


 ゴブリン共が喧しい。どうやら一撃を加えたことで勝った気にでもなってるようだ。

 醜悪な顔を歪める姿は腹ただしくもある。


「Χβδπ!」


 てか、やっぱこの言葉って理解できないのかな……せめて言葉がわかればな……


――パッシブスキル【言語理解】がアンロックされました。

――スキルリストに追加いたします。


 て、へ? 言語理解? え? マジで?

 おいおい本当かよ。

 て、事はそれがあれば彼の言ってる事が判る? もしかして意思疎通が出来るのだろうか?


――パッシブスキル【念話】がアンロックされました。

――スキルリストに追加いたします。


 てかまた増えた! 

 えっと、つまりこれで言語理解と念話というのを覚えたということか?

 いや、取り敢えず見てみるか。

 ステータス!



──────────

ステータス

種別:進化の剣

剣銘:錆びた剣

熟練度:1/1

耐久値:3/10

重量 :3kg

進化PT:150

直接属性

切:3打:5突:2魔:0

補助属性

火:0水:0土:0風:0

光:0闇:0雷:0氷:0

パッシブスキル

【ガイドLV1】

アクティブスキル

なし

称号

なし

──────────



 増えてねぇし! やっぱり変わらないじゃん! なんだよこれ一体どうなって……いや待てよ?

 確かアナウンスではスキルリストに追加って言ってたよな……もしかして、スキルリスト!



──────────

スキルリスト(パッシブ)

【ガイド】

LV1:取得済み

次のレベルには50PT必要。

【言語理解】

取得には20PT必要。

【念話】

取得には30PT必要。

──────────

スキルリスト(アクティブ)

アンロックなし

──────────


 出てきた! やっぱりそうか! 

 つまりスキルリストにはアンロックされたスキルがそれぞれ表示されるってわけか。

 そして必要なポイントも。

 

 問題はこのポイントが何かって事だが……これは考えるまでもない。

 進化ポイントっていうのがそれに決まってるしな。


 つまりポイントを使用すればこのスキルが手に入るってわけだが――さてどうしよう……。

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