第十話 落ち着いて考えよう
ゴブリンリーダーを倒した後は、すっかり他のゴブリンが襲ってくることはなくなった。
リーダーが倒され萎縮してしまったからかもしれない。
なのでその後は、俺が最初に刺さっていた部屋に辿り着くのに苦労はなかった。
部屋についた後はミラが水筒の水で傷口を洗い流し、視界を取り戻す。
傷はそこまで深くなかったようであり、指で強く圧迫する程度で血も止まったようだ。
そしてその後部屋を確認すると、あのゴブリンの骸が3体分転がっていたりもしたのだが――
「魔晶が……抜き取られている……」
息をしていないゴブリンに近づいたミラが述べたセリフがそれだ。
そして彼の見ている部分に注意を向けると、ゴブリンの胸部に穴があいてしまっていた。
ミラがやったものではないことは確かだが。
「僕達がいない間に誰かが来て、魔晶を抜き取っていったみたいだね」
ミラの回答になるほどと納得。
ただ、そうなると……
『つまりこの迷宮には、俺たち以外にも誰かいるということか?』
勿論これの意味は、魔物などのたぐいの事ではなく、ミラのような人間がという意味だが。
「どうだろう? 僕もよくわからないんだけど、ただ魔晶を必要としてるのは基本的に知識あるものだけだね」
ここで人間と言わず知識あるものといったのは、人以外にも知識ある種族がいるという事なのだろうな。
まあ、俺みたいのがいるぐらいなら特に珍しくもないんだろうけど。
『ふむ、あぁでもナイフはそのまま残ってるみたいだな』
俺の念話にミラが頷き、ゴブリンの骸からナイフを回収した。
『そういえば死体はさっきの道には残ってなかったな』
「うん。多分仲間のゴブリンが回収してるんだと思う。死んでしまえば例え仲間だったとしても餌だから」
あいつらは仲間でも食べてるのか……あまり想像したくないな。ミラが忌避感抱くぐらいだしな。
「でも、ここのゴブリンも魔晶が回収されればいずれ屍蝋かして、その後はボロボロと崩れていくけどね」
『ふむ、何か悪影響とかそういったものの心配はないのか?』
「魔物に関してはそれはないよ。だから基本的には取るもの取ったら放っておく場合も多い。逆に言えば屍蝋かするまでは腐らないからその期間が長いものは保存食代わりに利用される事もあるね」
ふむ、魔物の肉も普通に食されているというわけか。
ただ流石にゴブリンみたいのは見た目からしてミラなんかは食べたがらないみたいだけどね。
まあ、腹の減らない俺には関係ないことだけど。
それにしても魔晶だけ抜き取っていった存在はきになるところでもあるかな……でも今はそればかり考えていても仕方がない。
取り敢えず俺たちは改めてお互いのステータスを確認しあう。俺も熟練度が上がったしな。
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ステータス
種別:進化の剣
剣銘 :ロングソード
熟練度:2/10(6%)
耐久値:15/20
重量:1.5kg
進化PT:53
直接属性
切:19↑2打:12↑2突:14↑2魔:0
補助属性
火:0水:0土:0風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
パッシブスキル
【ガイドLV1】【言語理解LV1】【念話LV1】【シンクロナイズLV1】
アクティブスキル
なし
称号
【異世界パートナー(付加中)】【倍返しの反撃者】【ゴブリンキラー】
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スキルリスト(パッシブ)
【ガイド】
LV1:取得済み
次のレベルには50PT必要。
【言語理解】
LV1:取得済み
次のレベルには50PT必要。
【念話】
LV1:取得済み
次のレベルには80PT必要。
【シンクロナイズ】
LV1:取得済み
次のレベルには1000PT必要。
【剣術】
取得には50PT必要。
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スキルリスト(アクティブ)
アンロックなし
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これが先ず俺のステータス。
驚いたのは熟練度が上がったことで、武器の威力もしっかり上がっていたこと。
上昇率はそこまで高くないけど、でも耐久値は5増えてるな。
それに合わせて残り耐久値も少し増えていた。
ミラのHPと同じ条件と考えるなら、上昇分の耐久値が回復するのかもしれない。
最後にみた時より減ってる計算になるのはゴブリンとの連戦やリーダーとのバトルの影響だろ。
そして後は増えた称号か……【ゴブリンキラー】はなんとなく判るな。
ゴブリン相手にするときに何かしら付加要素があるのだろう。
【倍返しの反撃者】は……確かカウンター攻撃で相手を倒したと同時に得られたから、それに関係する力ってところか?
後は覚えられるスキルに剣術が増えている。
これは名前の印象だとそのまま剣術が巧みになるってところか?
う~んやっぱり色々謎めいた部分も多いが、とにかくレベルの上がったミラのステータスも聞いておこう。
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ステータス
名前:ミラ
レベル:6/16↑1
経験値:33/457
HP:39/54↑7
MP:48/48↑7
疲労:20%
状態:良好
力:25↑3
体力:30↑3
精神力:28↑3
魔導力:27↑3
素早さ:33↑3
器用さ:28↑3
攻撃力
切:45↑5打:37↑5突:43↑5魔:0
火:0水:0土:0風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
防御力
切:23↑2打:25↑2突:21↑2魔:14↑2
火:5水:0土:0風:0
光:0闇:0雷:0氷:0
パッシブスキル
【進化の剣の恩恵LVMAX】
アクティブスキル
【スキル共有LVMAX】
装備品
武器:ロングソード
防具:草臥れた革の胸当て
盾 :樫の円盾
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ミラの能力の伸びは相変わらず平均的に上がっている感じだな。
攻撃力の伸びがいいのは俺の熟練度が上がった事もきっと大きいのだろう。
そして密かにミラの最大LVが上昇していた。どうやら俺の熟練度が上がるとミラの最大LVも連動して上昇するようだ。これもシンクロナイズの効果なんだろうな。
ただ、正直最大LV15というのは低すぎる気がしたからこれはありがたいか。
『うむ、ステータスはよく判った。問題はこれからの事だが……』
「そうだね。取り敢えず反対側の扉を出て様子を見てみるしかないのかな……」
ミラもそこから先は未知の領域、勿論俺もだが、そのせいか不安を声に滲ませている。
だが、俺としてはその前に決めておきたいことがある。
『確かにここから出ないと何も始まらないしな。だがその前に俺はスキルを一つ手に入れておこうと思う。あるとないとでは大違いだしな。そこで相談なのだが……』
俺はミラに剣術スキルとガイドスキルのどっちが取りたいかを相談した。
進化ポイントでいったらどちらか一つしか取れない。
シンクロナイズは圧倒的にPTが足りないしな。
勿論他にも言語理解やもう少し貯めて念話という選択肢もあるが、それは現状困っていない以上急ぐ必要もないだろう。
一応ミラにはその選択肢があることも伝えたが、そこは彼も同じ考えだった。
「そこはエッジの好きな方でいいけど……」
『いや、持ち主が固定化された以上俺たちは今後協力していく必要がある。それなのに大事な事を俺だけで決めるわけにはいかないさ』
「協力……そっか、そうだね」
ミラはそう言って一考し、うん、と顎を引いた。
「だったらガイドかな。剣術も役に立ちそうだけど、今のところなくてもなんとかなってるし、ガイドというのが色々と大事な事を教えてくれるんでしょ? だったらレベルを上げておいて損はないと思う」
そうか、と俺は応える。図らずしてミラの意見は俺と一致していた。
剣術も何れは必要だろうが今ではないと思う。
それよりもミラや俺もよくわかっていないこの現状を打破するために、少しでも情報量を増やしておくべきだろう。
俺はミラの許可を得たことでガイドに向かって念を飛ばす。
『頼む【ガイド】スキルのレベルを上げたい!』
――パッシブスキル【ガイド】の強化には進化PTが50必要です。宜しいですか?
【現在の進化PT:53】
『それでいい、頼む』
――パッシブスキル【ガイド】がLV1からLV2に強化されました。ステータス欄に反映いたします。
さて、それじゃあ質問を始めますか――




