もう何がなんやら
六人目:たの
田中はふらっとその場から離れた。
俺は一瞬理解が遅れた。遅れたというかなんというか。っていうか声の主は誰だ。
その人物は田中を膝蹴りし華麗なるバク宙をして着地をした。
「ふぅー」
俺は目を疑った。黒ニーソとミニスカート。この学校の生徒だろうか。まったく身に覚えがない。というか可愛い。
田中は白目を剥いて痙攣をしている。それはもう俺の知っている田中じゃない、そう(田中っぽい何か)だ。
何がともあれ命拾いしたのだ。常識的考えて御礼を言わないといけない。
「ありがt」
「あんた死にたいわけ」
「は」
もう訳が分からない。助けてもらったとはいえなんだその口ぶりは。可愛いは前言撤回だ。
「にしても、まだこんな生き物がこの世界にいたとわねぇ」
彼女は(田中っぽい何か)の方を向く。すると(田中っぽい何か)が動き出す。
「フ、フジサキィギイテグレヨ……」
その姿は(田中っぽい何か)ではない。(何か)だ。
片目は白目を剥き、下をだし、四つん這いになっている。鼻毛はさっきよりも長い。こいつ人間じゃねぇ。
「き、きめぇ……」
「これ、あんたの友達」
彼女が(何か)に指をさして問う。
「友達ってか……まぁうん」
「あんたもまぁ悪趣味だね。こんな友達持つなんて」
「いや、ちょっと前まではまともな空気読めないヤツだったんだけど」
「あーそっ。じゃあ、悪いけどあんたの友達殺すね」
「は!!???」
彼女は俺のリアクションなど見もせず。(何か)へ走り出した。
「美少女ローリングかかと蹴り!!!」
意味の分からない技を言い、高々とジャンプする。
そして……
ザシュッ
(何か)が真っ二つに裂けた。あれ、人間のかかとってあんなに切れ味いいっけ。
「もう、何がなんやら」
俺の頭はオーバーヒートした。