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集いて交わる僕たちの日常(仮題)  作者: 煉瓦猫ぷぅ
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被害ナシ飛来アリ

五人目:天ノ川 こたろう

「勘の良いガキは嫌いだ」

 刹那――田中の右手は俺の左の耳をかすめ、背後の金網をつかんだ。一瞬の隙に奴の腕が消えた。そう認識した次の瞬間には首を縮めることも、身を固くする暇も許されず、俺は田中に圧倒されていた。

 校舎の高い屋上に風が吹きつける。蝉の声ははるか遠くに行ってしまったようにすら感じた。目が充血した田中を視界の正面において、俺の疑いは確信へと変わった。

 コイツハタナカジャナイ。

 本能が必死で警鐘を鳴らしている。俺は今、最高にヤバい状況に置かれているのだと。目の前にいるこいつは俺の友人(極力認めたくないが)ではない、田中のツラした何者かだ。しかもエネミーサイドであり、少なくとも俺と友情ある関係は築けそうにない存在らしい。

「お、おい」

 呼びかけの声すら自然と震えていた。自分でも情けない声を出してると自覚はある。だが俺がこいつに抱いていた確信はすでに恐怖へ変わりつつあった。

 だって男に壁ドンされてんだぜ? 恐怖以外の何物でもない。

 左手でガシャン。金網を田中はつかんだ。腰元の高さを左手でつかんだのは俺を逃がさないためだろう。そこでようやく俺の感情は完全に恐怖へ変貌を遂げた。

「選べ。頸動脈をえぐり取られるか、ここから飛び降りるか」

 田中は表情のない顔を更に近づけ、そう言ってきた。唐突にえげつない質問を投げかけといてしかも生きる選択肢を与えないのですね本当にありがとうございました。田中が握る金網はぐにゃりと歪められている。

「あぁ、もう……めんどくせえ事になっちまった……」

 声になったかもわからぬ声をあげた。田中の鼻からはやはり毛が出ている。そんな事に目をやってしまう程度に俺の思考はままならぬ状態に陥っていた。

「……なっとォッ!!」

 だから実力行使してみた。簡単に言うと田中の急所を膝で蹴り上げたのだ。これでも中学の頃は空手をやっていた身だ。腕っぷしならそこそこの自信がある。

「さあ、早く選べ」

「いや待て落ち着け。なんでお前まだ俺を壁ドンできてんの?」

 まったく効いてない。壁ドンはキープされていた。

「返答無し。これより執行する」

「えっ」

 今から俺の目の前で起こった事をありのままに話す。田中の口から銃身が現れた。

 あの、その、うん。よく分からないが……グッバイ、マイ、ワンダフルライフ。

「なぁにやっとんじゃこのポンコツゥゥーー!!」

 人生を諦めたその時、謎の声と共に飛来した膝蹴りが田中の顎を射貫いた。

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