疑い
三人目:絶望オレオ
いつもだ、いつもこいつに邪魔される。俺が学校に入った時にもこいつとひとくくりにされて変な奴扱いされるし……俺の夏休みの計画だって、こいつの空気読めない性格のせいで……。
いや待てよ。ふと自分の脳裏に一つの疑念が浮かぶ。
田中は今、家族旅行で海外を満喫中ではなかったか?
「藤崎ぃ……いい加減俺の重大発表を聞いてくれよぉ」
へらへらとした俺の知らない田中の顔は、貼り付けたような笑顔の向こうから冷たい瞳が俺の反応を伺っているように見えた。
蝉の音やグラウンドから聞こえる気だるげな部活の声も俺の耳から遠ざかる。昼寝で重くなった脳みそをフル回転させて思考する。
どうしてこいつはまだ日本にいるんだ? どうして俺の目の前にいるんだ? こいつよく見たら鼻毛出てないか?
やがて俺の頭はこの疑念でいっぱいになった。
「お前は誰なんだ?」
まさかこいつは変人KY学生田中に偽装した本当のスパイなのか……? もしそうだとしたらそのことに気がついた俺は……!
田中の目がギラリと怪しげに光ったように見えた。
ガシャリと大きな音が俺の後ずさりを阻害する。いつの間にかに俺は田中から逃げようとしていたのだ。
幸い、田中はそんな俺に気がつかずにゆっくりと口を開く。