呆れ
二人目:猫飯
おそらく俺は今、相当な呆れた顔をしているだろう。目は細く、口が半開きになっている俺の顔。田中のあまりにも真剣な顔とその眼差しに、言葉が出なかった。
数秒間のそんな沈黙。屋上まで聞こえてくる蝉の声が、より大きく聞こえた。田中も冗談でいっているようには見えなかったので、とりあえず小さく声を漏らして頷く。
「どこがだ! 一体俺のどこが空気を読めていないっていうんだ!」
田中は目を見開き、俺の肩を掴んで強く揺さぶる。首がかくかくと前後に動く。すごく苦しい。
大体こいつは本気でいっているのか? 廊下で歩いてる男女の真ん中を堂々とつっきり、重要な話にはほどそれに耳を傾けない。挙句の果てに先生にコーヒーの遣いを頼まれたのに、売店で『コーヒー』とでかでかと書いてあるあの紙パックの甘い奴を買ってくる。普通缶コーヒーだろ。
「教えてくれ藤崎! お前なら分かるだろ!」
首が痛くなってきた。そろそろ頭と身体が分離してしまいそうだ。あととても鬱陶しい。
「藤崎! 藤崎! 藤崎くーん!? もーしもーしもーしも―」
「うるせえ黙れ! そんなんだからお前はなあ……」
もとの呆れ顔に戻った俺は、肩を回しながらつぶやく。