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相談と笑顔。

時雨ちゃんも大変です。

お父様とお兄様はあれから優しすぎて私はどうしたら良いのか解らない。

私の記憶の中にはその対応方法は存在しない。

スキロフさんやケーシーさんも加わって家での居心地は悪い………ありがたいし、恥ずかしさがなければ………無理だ………私には無理だ。


「で?アーリーは家から逃げて来たのか?」

「………はい。ポレマオさん、お兄様達にいい加減にするように言ってもらえませんか?」

「俺にあの二人と戦えってか?それは俺に死ねって言ってんのと一緒だぞ!」


ポレマオさんは苦笑いを浮かべた。


「………ごめんなさい。」

「謝るなよ!アーリーが本気で言ってんなら死ぬ気で説得してやっから!俺を頼ってくれんのは嬉しいからな!」

「………甘やかし隊?」

「なんだその珍妙な部隊は?」

「お父様が私を甘やかしたい人の集まりだって言ってました。」

「………否定は出来ないな。」


否定してよ!っと私は叫びたかった!


「良いじゃねえか!アーリーが幸せそうにしてくれたら俺らは満足なんだからよ。」

「私の中身はアリアンロッドさんじゃ無いんですよ。」


私は、お兄様に言ったのと同じ言葉をポレマオさんに投げた。


「………勇者から聞いたけどさ、お前が居た世界は平和なんだってな!戦争をしない国で魔物も居なくて医療が発展してんだろ?それは生きるって事に執着しちまうよな!けど、この国では死ぬってのは身近なんだよ。だからさ、死ぬよりも生まれ変わる方が重要なんだよ。アーリーの体を使ってるのがお前を卑屈にしてるんだったら違うぞ!お前がアーリーの体を使う事になったからアーリーは幸せに生まれ変われるんだ!皆お前に感謝してんだから、胸はって幸せになれ!」


ポレマオさんの言葉に私は目から鱗な気持ちだった。


「俺と話して良かったろ?なんかあったら俺が相談にのってやるからな!」

「………ありがとうございます。気持ちが軽くなりました。」

「だろ?嫁に来ても良いぞ!」

「………考えておきます。」


私は、背後からただならぬオーラを感じながらそう言った。

ポレマオさんの顔色が青くなっていくのが見えて、やっぱりお父様かお兄様が後ろに居るのだとさとった。


「じ、冗談だよ、な~?」

「考えておきます。」

「おい!お前解ってんだろ!否定してくんねえと俺が殺されちまうだろ?」

「はやく生き返れる様にディオ君にたのんであげます!」

「うわ~計画的!安易に滅多なこと言うなって事だな?解ったから助けろ!」


振り替えるとそこに居たのはお兄様だった。


「お兄様。」

「今言っていたのは本気かな?シグレ?」

「ポレマオさんは好きですが結婚するほどじゃないです。」

「好き………なのかい?」

「好きです。お兄様も好きです。」

「………」


お兄様は複雑そうな顔をして苦笑いを浮かべた。


「騎士団長と同じ好きって事かな?」

「………そうですね~比較的そうだと思います。」


私はお兄様の手を握ると首を傾げて言った。


「お茶の時間にしませんか?私、喉が乾いてしまいました。お願いします。」


お兄様は私がお願いだと言うと嬉しそうな顔をするようになった。


「解ったよ。じゃあ、魔法局に行こう。美味しいお茶とお菓子を出そうね。」

「はい。」


そして、ポレマオさんの方を向くと言った。


「話を聞いてくださってありがとうございます。」

「おう、また来いよ。」

「はい。今度はお菓子を作ってきます。」

「惚れちゃうだろう!」

「じゃあ、手土産は無しです。」

「………また来い。」

「勿論また来ます。」


私は、そこから魔法局までお兄様と手を繋いで歩いたのだった。






魔法局に付くと他の魔導師の人達がお茶やお菓子を出してくれた。


「ありがとうございます。」

「いいえ、何なりとお申し付けください。」


魔導師さんはニコッと笑った。

私も笑顔を返せたら良いのに。


「あ、あの、嬉しいです。」

「!じ、自分も嬉しいです!」


魔導師さんはへにゃっと笑った。


「おまえ、戻って良いよ。」

「イディオン様!かしこまりました。」

「お兄様、この魔導師さんは自分のお仕事もあるのに私にお茶とお菓子を出して下さったんですよ!冷たい言い方をしないでください。」

「天使様!」


魔導師さんは瞳をキラキラさせた。


「天使様、大丈夫でございます!天使様に気遣っていただけて幸せでございます!ありがとうございます!」


私は、天使じゃありませんよって言いたかった。

けど魔導師さんはそれだけ言い残すと去っていってしまった。


「あうう~。」

「仕方がないよ、シグレは天使の壁画にそっくりなんだから。」

「あうう~。」


お兄様はクスクス笑ってから可愛いと呟いた。

私は、いたたまれなくなって出されたお菓子を口に入れた。


「美味しい。」


私は、上機嫌でお菓子を食べた。


「シグレはそのお菓子が気に入ったみたいだね。」

「お父様………なんで解るんですか?」

「パ~っと明るい雰囲気になるからかな?見ていて私まで幸せな気持ちになるよ。」


お父様はそう言ってふにゃっと笑った。

誰もがつられてしまいそうな笑顔だ。


「私もお父様みたいな笑顔が作りたいです。」


お父様はクスクス笑って言った。


「すぐに出来るようになるよ。シグレはこんなにも笑顔を作りたいって思っているんだから!」


お父様の言葉に私は嬉しくなって頷いた。

嬉しいも楽しいも幸せもこの世界に来て増えたのは確実で私は、その感情たちすべてを笑顔で表したいのだと思えていた。


「お父様………笑顔の練習したいです。」


私の言葉にお父様はとびきりの笑顔を作った。

そして、私の手を握ると言った。


「じゃあ、私の顔を見て!」

「はい。」

「眉毛を動かせるかな?」

「………はい。」


私は、眉間にシワを寄せて見せた。


「じゃあ、次は口をイーってして。」

「イー。」

「口を閉じてごらん?」


私は、そのまま口を閉じた。


「その口が笑顔の口だよ!それを練習すると良いよ。」

「はい。」


私は、自分の頬っぺをつまんで頷いた。


「それも可愛いけど、無理しないでゆっくり笑えれば良いよ。」


お父様はそう言って私の頭を撫でてくれた。

お父様やお兄様を見ていれば笑顔か必要だって解るんだ。

だから私は、練習しようと心に決めたのだった。



笑顔の練習始めました。

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