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生まれ変わってお嬢様!  作者: ガイアにゃんこ
9/18

番外編 エリート研究員の恋人-2

全然進みませんね・・・

 (もう!何なのよ!)

イザベルはいつものベンチでアリーを待ちながら憤慨していた。

(仮にも王室直属の研究員ならもっと論理的に考えなさいよ!)

イザベルがアリーと微笑みながら談笑する様子を見た研究室の新人の少女は、そのあまりの衝撃についその様子を言い触らしてしまった。

イザベルとしては別に新しくできた友人と話しながら昼食を摂っているところなど、見られていい気分はしないものの気にはならなかった。

しかし、普段は基本的に無愛想で必要なこと以外は話さない上にいつもイライラしているように見える職場でのイザベルしか知らない者たちにとっては子供のように笑顔で話すイザベルというのは未確認生物のようなもので、イザベルは暫くの間、アリーと話している度に視界の端に仕事場でよく見る同僚の姿を見る羽目になった。

その視線も近頃感じなくなり、皆飽きたのだと内心喜んでいたのだが、今度は職場の端でコソコソと話している所にイザベルが通り掛かった途端に皆黙るという状況に陥った。

若くして研究室でもトップの実績を誇るイザベルは陰口を言われるのも慣れているのだが、今までは先輩研究員がわざと聞こえる様に言っていた(同期か、それより後に入って来た者達はイザベルに畏怖にも似た尊敬を抱いているため、陰口を言われる事は無かった)為、こんな経験は初めてだった。

ついその内容が気になったイザベルは噂をしている後輩の研究員に後ろからこっそり近づいてその内容を聞いてみたのだが・・・

(何で私がアリーと恋人ってことになってるのよ!!)

どうやら同僚達は普段(研究室では)全く笑わないイザベルがアリーの前では心からの笑みを浮かべているのは彼女が同性愛者でアリーと付き合っているからという結論を出したらしい。

「おかしいでしょ!!!」

ついもやもやを吹き飛ばしたくて声に出してしまってから慌てて口を塞ぐ。

「お待たせしましました。イザベル」

そんな彼女の後ろからアリーが声を掛けた為、イザベルは飛び上がりそうになった。

「あっ、アリー⁉︎」

「はい、そうですが・・・どうかしましたか?」

アリーの様子を見てどうやら自分の独り言は聞かれてなかったらしいと判断してイザベルは普段通りに友人に話しかける。

「い、いいえ。なんでもないわ。今日は遅かったじゃない。どうしたの?」

「はぁ、今日は上司の会議に付き添いで参加すると伝えたはずですが・・・」

「え、ああっ、そうだったわね!ごめんなさい、変なこと言って」

「いえ、別に気にしませんが・・・珍しいですね、イザベルが物忘れなんて」

「そうかしら、とりあえずお昼にしましょう」

イザベルはこれ以上余計な事を言わない内にベンチをアリーに勧めた。



 「あなたって知り合ってからしばらく経つけど堅苦しい口調のままね」

アリーは親しくなっても口調は丁寧なままだった(イザベルはアリーの反応を見ながら少しずつ砕けた口調に変えていった)。

研究室での噂に動揺していたイザベルは何とか普段通りの話題にシフトする為に前から気になっていたその事を聞くことにしたのだ。

「ええ、私のこれは学園にいた時に身に着いたものでして・・・職場でも変わらずこの口調なので慣れてしまいました」

「職場はともかくなんで学園でまでそんな丁寧な口調なのよ。友達と話すと時はもっと砕けた話し方の方がお互い楽だったでしょう?」

学園に通っている生徒は基本的に貴族の子女か、それで無くとも裕福な家庭の出身が殆どだったが、彼ら彼女らも同じ様な年齢の相手と話す時は基本的に(一部の例外を除いて)敬語や丁寧語は外して話していたのをイザベルも覚えていた。

「・・・いえ、先生としか話す必要がありませんでしたから・・・」

「え?それってどういうこt・・・・・ごめんなさい、余計なこと聞いて・・・」

イザベルが理由を察して謝った為、途端に辺りが重い空気に包まれる。

「い、いえっ!気にしないでください!もう私には大事な友人ができましたから」

アリーが慌ててイザベルにそう言った。

アリーは場をとりなす為に言ったつもりなのだろうが、イザベルは面と向かって“大切な(・・・)”と言われて照れて俯いてしまう。

「あ、あの・・・もしかして嫌でしたか?」

それを見てアリーが不安そうな顔でイザベルを見つめて尋ねる。

「・・・何がよ」

「ですから、私がイザベルのことを大切な友人と言ったことについてです」

「・・・嫌な訳がないじゃない」

むしろ今までアリーほど歳の近い友人のいなかったイザベルにとって彼女の一言はとても嬉しかった。

「始めは違ったけれど、今はもうあなたと友達であることが誇らしいくらいよ」

俯きながらも頬を染めてそう言うイザベルを見て、アリーは可愛らしい人だなと思った。

「私も貴女が友人であることを誇りに思っていますよ」

アリーも友人の誠意に応えようとイザベルの目を見て自分の想いを話す。

「王都に来て元々あまり人付き合いの上手くなかった私が、まさか学園を卒業してから貴女の様な素晴らしい友人を得られるとは夢にも思っていませんでした。あの日、貴女に話し掛けて良かったです」

そう言って頬を染めながら微笑んでこちらを見つめるアリーにイザベルは自分の頬が更に熱くなるのを感じる。

「・・・ええ、結果的には良かったけれど、でもあんなアプローチの仕方はないわよ?私も始めは警戒してたもの」

「え、そうだったんですか?」

「ええ、初めて会った時に私、あなたに身分証を見せてほしいって言ったでしょう。あれはあなたがスパイなんじゃないかって疑ってたからなのよ」

「それは酷いですね」

アリーが微笑み混じりにそう言った。

「それくらいあなたが挙動不審だったのよ」

イザベルも笑いながらそう返す。

二人は知り合ってからの数ヶ月間の気まずい雰囲気とは比べ物にならない程に打ち解け合い、軽口を言い合える仲になっていた。

イザベルはふと思い付いたことを、アリーに提案することにした。

「ねぇアリー、貴女って次の精霊祭は仕事ないんでしょう?」

「ええ、そうですが、それがどうかしましたか?」

精霊祭とは、元々農耕民族だったシャルレ人が自然に感謝し、お祈りを捧げるという年に1度ある祭日である。

この祭りの期間は国民は原則休日なのだが、商家などは年に一度のイベントとしてむしろ普段より忙しくなる。

しかしアリーはお役所勤めなので、国民に与えられた休日は原則として適用されるため、この期間は役所や王宮の職員は一部の例外を除いて休暇を与えられるのだ。

「その日は私も休みを取るから、二人で街に遊びに行けないかしら・・・もちろん、あなたの都合次第だけれど」

イザベルの方も、もう今期に発表予定の論文は目処が立っていて、後はひたすら実験を繰り返すだけになっている為、彼女の班での仕事は無いに等しかった。

普段はそんな状況になっても研究室に居座って部下達の実験に不備が無いか目を光らせているのだが、イザベル程ではないにしろ研究室の職員は皆難関の試験を突破して入ってきたエリートばかりだし、研究の成果が出なければすぐにクビにされる為、今まで(少なくともイザベルの見ている内は)大きなトラブルも無かった。

今年は久しぶりの新しい友人もできたことだし部下を信じて数日の休暇をとることにしたのだ。

「遊びに、ですか?」

アリーが驚いたような顔をしてイザベルを見る。

「ええ・・・やっぱり精霊祭は実家に帰ったりするのかしら?」

イザベルはアリーの実家が地方で農家をしていると聞いていた為、もしかしたら精霊祭は故郷に帰る予定があるのかもしれないと思ったのだ。

精霊祭は元が自然に感謝する祭りである為、今でも地方の農村では村単位で集まって祭りの期間お祈りをささげるとイザベルは聞いたことがあった。

「いえ、私の実家のある村は大分山奥にあるので精霊祭を祝ったりはしないんです」

「そうなの?」

「はい、私も王都に出てくるまで精霊祭なんて聞いたことありませんでした」

「そんなものなのね」

精霊祭は元は王都近くの土着の行事だったとイザベルは聞いたことがあった。

広く国民に知られる行事になったといっても未だ山奥の田舎のほうには浸透していないのかもしれない。

「だったら祭の間は王都にいるのね?他に誰かと約束があったりするのかしら」

「ありませんが・・・」

「それなら一緒に行きましょうよ!」

「・・・本当に私でいいのですか?精霊祭は大切な人と過ごすものだと聞きました・・・イザベルは私と違って友人もたくさんいるのでしょう?」

アリーはイザベルが友人の少ない自分に気を遣って誘ってくれていると思っていたのだ。

それが分かったイザベルは断られそうな雰囲気に強張っていた頬の筋肉を緩めてアリーの誤解を解くことにした。

「友達は確かに他にもいないことはないわ。でもね、今はアリーが一番の友達だと思っているの。私はアリーと一緒に精霊祭を過ごしたいのよ。」

イザベルは少し低い座高から上目づかいでアリーを見つめる。

「・・・それともやっぱり私と一緒はいやかしら?」

アリーは少しの間頬を染めて言いよどんでいたが、やがて口を開いた。

「・・・わかりました。ご一緒させていただきます」

「決まりね!じゃあ精霊祭の一日目に水鳥の広場に集合ね、時間はどうしようかしら・・・」

その時、昼休みの終わりを告げる鐘が庭園に響いた。

「あっ、昼休み終わっちゃった・・・」

「では詳しい時間はまた明日、ここで決めましょう」

「そうね、じゃあまた明日ね!お仕事頑張ってね、アリー」

「はい、イザベルも頑張ってください」

イザベルは王宮の門にアリーが隠れて見えなくなるのを見送ってから、研究室への道を歩き始めた。


精霊祭のことを考えながら無意識に笑顔で帰ってきてしまったイザベルを見た同僚たちの間で秘密の花園での逢瀬の噂がさらに広まってしまってイザベルがさらに頭を悩ませるのはそれから少し経った後のことである。

番外編はいったんここでお休みにして本編に戻ります。

忘れた頃にまた続きやるのでその時にでもまた読み返していただければ幸いです。

タイトル回収もまだ済んでないですし・・・汗

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