表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わってお嬢様!  作者: ガイアにゃんこ
7/18

イザベル先生の研究室

いつもより少し長いです笑(誤差の範囲)

 リアーヌは自分の目と耳を疑った。

目の前にいる女性がさっき教室にいた人と同一人物には思えなかったのだ。

「ええと、失礼ですがあなたはイザベル先生ですか?」

「?ええ、そうよ?さっきまで同じ教室にいたじゃない」

「・・・そうですよね、変なこと言ってすいません」

リアーヌは小声でジュリエッタに尋ねることにした。

「あの、生徒会長・・・」

「わざわざ“生徒会長”なんて呼ばなくてもいいわよ。会長か、ジュリでもいいわ。何かしら?」

「ではジュリ先輩、先輩の知っているイザベル先生ってこんな人ですか?」

「?・・・ああ、そういうことね。彼女、仕事で人に会う時は人が変わったようになるから。こんな話し方をするのはプライベートの知り合いだけなのよ」

「そうなんですか・・・」

たしか彼女は学園に来る前は王宮の研究所にいたはずである。

確かに宮仕えの身でこんな話し方をしていたらお叱りを受けるかもしれない。

だとするとこの話し方がこの人の素なんだなとリアーヌは思ったが、そこでひとつ分からないことがあった。

リアーヌは今日初めてイザベル先生と面識を持ったはずで、会話もまだ数えるほどしかしていない。

先生との接点が過去の自分にあったのかどうかリアーヌには思い浮かぶ節が無かった。

「あの・・・今回何故私は呼び出されたのでしょうか」

もしかしたら自分に先生がありのままの彼女を晒してくれる理由がそこにあるのかもしれないと思い、リアーヌは話を先に進めることにした。

「今回私がここに尋ねてきたのもその事について聞く為です」

すると、ジュリエッタもそう続く。

「何故貴女は今回、彼女をこんなにも簡単にラボに通したんですか?」

リアーヌはここに連れて来たのはジュリエッタであると思ったが、確かにイザベル先生ははじめ、彼女に着いて来る様に言っていた。

その時の行き先がここだったなら、始めからリアーヌを招くつもりだった事になり、ジュリエッタの言い方も理解できる。

「リアーヌはいいのよ。半分身内みたいなものだし」

それに対してイザベル先生はあっさりとそう返す。

「身内って・・・私今日まで先生にお会いしたことありませんよね?」

リアーヌはつい先日までアリアーヌ地方から出たことが無かったはずであり、また彼女は前世から記憶が連続している為か、自身が乳幼児であった頃からの記憶がある。

今までイザベル先生が屋敷に訪ねて来たり、パーティで会ったりした記憶はリアーヌには無かった。

「ええ、そうね。会ったのは今日が初めてよ」

そして先生自身もそう言っている。

「では、身内とは?」

ジュリエッタが横から先生に尋ねた。

「だって、恋人の教え子は自分の教え子みたいなものでしょう?」

「え?確かに今日から私は先生の教え子ですが・・・恋人?」

言葉の意味が分からずにリアーヌが先生に尋ねると、なんでもないようにイザベル先生は答える。

「ええ、だってあなたがアリーの教え子の(・・・・・・・・)リアーヌでしょう?」

「はい、そうです。リアーヌです・・・って、じゃあアリー先生の言ってた学園にいる知り合いって・・・!」

「あいつ、私のことそんな風にあなたに紹介したのね・・・。そうよ私がその知り合いよ」

あの堅物に見える厳しさの塊みたいな先生に同性の恋人がいるなんて想像をしたことも無かったリアーヌは戸惑いを隠せない。

だが今の話だと、自分は目の前にいる先生のおかげで学園に入れたようなものであるようだし、とりあえずお礼をしなければ!とリアーヌの日本人だった頃の感覚が彼女の中で優先すべきことを決定する。

「あ、あの、この度はこのような素晴らしい学校に推薦していただき、ありがとうございました!」

「もう、いいのよ。そんなにかしこまらなくっても。身内みたいなものだって言ってるじゃない」

そこでそこまで話についていけていなかったジュリエッタが会話に口をはさむ。

「え、どういうことですか!貴女が直接会ったことも無い娘に推薦って・・・!?それに、貴女に恋人がいるなんて私聞いたことありませんよ!」

「なんで私がジュリにそんなこと言わないといけないのよ」

「ぐ・・・それは、そうだけど・・・」

「あの、失礼ですがお二人はどんな関係なんですか?」

リアーヌはアリー先生とイザベル先生の関係も気になったが、ひとまず目の前の二人の関係について尋ねることにした。

「ああ、この娘私のストーカーだったのよ」

イザベル先生がとんでもないことをなんでもないように言ってのける。

「え、そうだったんですか。ジュリエッタ生徒会長」

「なによ、その目は!呼び方も戻ってるし!違うわよ!私がストーカーなんてするわけないじゃない!」

リアーヌが軽蔑した目でジュリエッタを見ると、焦ったように否定する。

「うふふ、冗談よ」

「なんだ、冗談ですか・・・」

イザベル先生は童顔でとてもかわいらしい顔つきをしているし、はっきり言って美人であるため、リアーヌは一瞬信じてしまった。

「この娘、私に弟子にして下さいってしつこく付きまとってたのよ。ついにはラボの場所まで突き止められるし・・・仕方ないからラボの入り口の通信機のパスワードを教えてあげたんだけど、そのおかげでリアーヌを連れてきてもらえたし結果オーライね」

「・・・ジュリ先輩はなんでそこまでして弟子にしてほしかったんですか?」

この地下ラボが先生の住居替わりなのだとすると、やはり立派なストーカーでは・・・とリアーヌは思ったが、見た目まともそうなジュリエッタがそれだけの理由でストーカーまがいのことをするとは思えなかったため、理由を尋ねることにした。

すると、すごい勢いでジュリエッタが詰め寄ってきた。

「だって、あのイザベル・メニル女史がこんなに近くにいるのよ!あの魔力伝導効率の三倍方式の論文やその次の年に発表した摩擦軽減方の新方式を応用した魔道特急の開発に最も貢献したと名高いあのメニル女史が!私いてもたってもいられずすぐに教えを乞いに行ったわ!なのに新任の挨拶の後から学園中を聞いて回っても目撃談が無くって、仕方なく学園長に居場所を聞きに行ったら学園の機密情報だから教えられないって言うのよ!」

「ち、近いです、近いですよ!ジュリ先輩!」

リアーヌは自分が学園に来る時に乗っていた魔道特急のことを思い出し、あんなものまで開発している人に自分は推薦されてこの学園に入ったのか、と内心ビビッたが表には何とか出さないで済んだ。

「それならジュリ先輩はどうやってラボの場所が分かったんですか?」

今までの話の流れで疑問に思ったことを聞くと、今度は先生が苦笑交じりに答える。

「私が生活用品の買出しに朝市に出かける為に学園を出るときにつけられていたらしくて・・・その後にばれたラボの場所を他の人に黙ってもらう代わりに話を聞いてあげる約束をさせられたのよ」

「先輩、そこまで尊敬する先生を脅したんですか・・・」

「だって、仕方なったのよ・・・朝市から学園に帰ってきた先生に弟子入りを頼んだんだけど、この人私のこと相手にしてくれなくって・・・これは粘り強く交渉するしかないって思ってつい・・・」

やはりこの生徒会長は少し危険だとリアーヌは再認識した。

「この娘、それから毎日通い詰めてきてね・・・でも近頃はご無沙汰頃だったから諦めてくれたのかな?って思ってたんだけど・・・」

「そんなわけないじゃないですか。新入生を迎えるに当たって色々と生徒会の仕事が忙しかっただけです。」

「そうよね・・・」

「なんで先生はジュリ先輩を弟子にしてあげないんですか?」

別にイザベル先生がジュリエッタのことを嫌っている風にも見えなかった為、リアーヌが疑問を口にする。

「うーん、別にジュリだからって訳ではなくてね、私自身が人に物を教えるのに向いてないのよ。嫌味な言い方になるけど私って物心着いた時から勉学に関して出来ないことが無かったから・・・質問されても何がわからないのかが分からないから、結局は教科書でも読んだ方が早い教え方になっちゃうのよねぇ」

リアーヌは前世ではどちらかというと努力の人であった為、級友に教える行為自体は得意であった。

しかし、国家規模の発明が出来るイザベル先生にとっては学生の勉強など、お遊びの範疇に思えるレベルなのかもしれない。

それ思えば先生の言うことも理解出来なくは無かった。

「でもそう思われるのでしたら何故学園で働こうと思ったんですか?」

「王室の人事部と揉めて前の職場に居づらくなっちゃってね・・・そんな時に母校の縁で学園長に声を掛けてもらえたのよ。しかも教鞭を取らずにずっと引きこもりながら研究してていいっていう契約でね」

そこまで聞いてリアーヌは疑問に思った。

「え、でも先生って私達の担任をして下さるのでは?」

「ええ、だって仕方ないじゃない?素面では滅多なことでは私に弱みを見せないあのアリーがわざわざ王都まで来て私に頼みに来たのよ?」

「アリー先生が?何をですか?」

「“自分の教え子を推薦してほしい”ってね!全く、恋人に久々に会ってすぐに違う女の話をされたのよ?勘弁してほしいわ!」

「アリー先生が・・・」

リアーヌはアリー先生に学園に出来れば早めに通いたいという自分の意思を伝えた日のことを思い出した。

彼女は一言“そうですか”と言ってその日の授業をお終いにすると、急いで支度をしてラウル子爵に一言告げると風のように旅立ってしまったのだ。

それから三日ほど経つとまた帰ってきてリアーヌに厳しく勉強を教えてくれたが、その時にどこへ行っていたのかを聞くと知り合いに会いに行っていたと言ったのだ。

その時はまじめな先生が家庭教師を放り出して会いに行くとはよほど大事な用だったのだろうと深くは聞かなかったが、まさか恋人に自分のことを頼みに行っているとは当時は思いもしなかった。

「あいつ、私がそんなに優秀な子なら受験して入ればいいじゃないって言ったらなんて言ったと思う?」

「え・・・なんて言ったんですか?」

「“貴女の推薦で入ればあの娘の将来の経歴にも箔がつくでしょう?”って言ったのよ!その上“出来ればあなたが直接授業をみてやってほしい”なんて!図々しいにもほどがあるでしょう!?あんなんだから友達が少ないのよ!まったく!“貴女にしか頼めないんです”なんて言われたら断れないじゃない!」

リアーヌは自分のことなので申し訳なくなりながらも、アリー先生の突然の頼みを文句を言いながらも全てきいてくれたイザベル先生は本当にアリー先生のことが好きなんだなぁとなんだか暖かい気持ちになった。

「そんな訳だからリアーヌ!教えるのは不慣れだけど遠慮なくいくわよ!覚悟しときなさい!」

「はいっ!」

自分の恩師にそこまでさせたのだから、リアーヌは明日から頑張ろうと決意を新たにした。

「・・・・す。・・い・・すよ・・・」

そんな時、ずっと黙っていたジュリエッタが何やらぶつぶつ言っているのがリアーヌの耳に入る。

先生もリアーヌの視線を追い、ジュリエッタの様子に気づいた。

「え?何よジュリ、ぶつぶつと気味悪いわよ?」

「ずるいですっ!ずるいんですよっ!リアーヌばっかり!私も先生の授業受けたいです!」

見るとジュリエッタは既に涙目である。

確かにリアーヌは自分は縁故だけで先生に授業を教えてもらえるのにずっと頼んでいたジュリエッタが何も無しではあまりに不平等であると感じた。

「あの、先生・・・とても不躾なお願いなんですがどうか先輩にも授業を教えてあげてくれませんか?」

「んー、確かに私もこれから教育者なんだし不平等はダメよね・・・でも私はリアーヌのことで精一杯だし・・・」

“リアーヌ達”ではなく“リアーヌ”と言っている時点でだいぶ先生の中では不平等であるとリアーヌは思ったがややこしくなるので口をつぐんだ。

「・・・じゃあジュリ、貴女リアーヌと一緒に授業受けなさいよ」

「え、先生、それはさすがに・・・」

ジュリエッタはタイの色からしてどう見ても上級生であり、少なくとも一学年は上である。

「!それでいいです!それでいいからお願いします」

「え、でも先輩、そんなことして大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ!今から学園長に頼みに行って私をリアーヌのクラスに編入させてもらうわ!」

ジュリエッタはもう一度一年生からやり直すといっているのだ。

そんな無茶な、とリアーヌは思ったがイザベル先生の授業は彼女にとってそれだけの価値があるものなのだろう。

ジュリエッタは「行ってくるわねっ!」というと地上へ走っていってしまった。

あの暗い階段であんなに走って大丈夫なのだろうか、とリアーヌは思ったがしばらくしても誰かがこけたような音はしなかったため大丈夫だったのだろう。

「まあ、私からも特別な処置を学園長に頼んでおくわ」

「いいんですか!」

「なんであなたが喜ぶのよ。・・・あの子も私に教えを乞うために結構無茶してたからね、はっきり言って迷惑だったけど少しは可愛がってあげないとかわいそうだもの」

少し毒のある言い方だったものの、地下のラボまで通すくらいには憎からず思っている部分もあったのだろうとリアーヌは思った。

「さて、あなたも寮に帰りなさい。そろそろ暗くなるわ。また今度休みの日にでも遊びにらっしゃい」

「はい!ありがとうございました」

先生に礼をしたあと、見送られながらリアーヌは壁に手を這わせながら階段を何とか上りきった。

外に出ると辺りはもう夕暮れだった。

やっぱり予備校は甘くなかったです・・・

これからも一週間目指しますが基本的に不定期掲載になると思います。

次は番外編の予定です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ