王立シャルレアン魔道学園-3
キャラ名考えるのがここまで大変な作業だとは・・・
入ってきた女教師は入学式で司会をしていた人だった。
「えー、ごほん。私がこの特待生クラスを担任することになったイザベル・メニルです。みなさん、これからの三年よろしくお願いします」
イザベル先生がきりっとした声で自己紹介をして、今後の予定について簡単に話始める。
「今日はこの後特に講義の予定はありませんが、特待生クラスからもクラス委員を選出しなければなりませんので、今日中に決める予定です」
世界が変わっても学校というのは案外変わらないものだなとリアーヌは思った。
「この中で誰か立候補する人や委員に推薦したい人がいる人はいますか?」
今日が入学式であった上に特待生クラスは生徒のほとんどが地方から出てきた庶民であるため、皆今日が初対面となる。
推薦したい人などいるわけがなかった。
しかし、だからといってそんな見ず知らずの人間に囲まれた状況で自ら進んで立候補できる肝がすわった者も居なかった。
「なんです、誰もいないのですか?」
皆周りをキョロキョロするばかりだった。
「仕方ありませんね、決めるのは明日まで大丈夫ですから皆さん考えておいてください」
先生はそういうと教室を出て行ってしまった。
「えっと、今日はもうこれでお開きなのかしら・・・」
「そう・・・なんでしょうか・・・」
しばらくすると先生はまた戻ってきた。
「なんですか、あなたたち。皆さんそろってなぜ帰っていないんですか」
どうやら帰ってよかったらしい。
「でも丁度良かったです。リアーヌさんはどなたですか?」
「え、は、はい!なんでしょうか!」
突然の指名にリアーヌは驚きながら返事した。
「そう、あなたが・・・」
「?」
「いいえ、なんでもありません。この後私についてきてください。お話があります」
「はあ、わかりました」
先生はそういうとまた出て行ってしまった。
今度は帰っていいと分かっているため皆そろそろと帰り支度を始めた。
「ではリアーヌ、私もこれで・・・」
「ええ、また明日ね、アンヌ」
さっき彼女がなぜ一瞬言葉に詰まったのかは分からなかったが、もうアンヌの様子に違和感を感じなかったためリアーヌはもう気にしないことにした。
アンヌが教室から出ていくのを見送ってから先生の後を追うように言われていたことを思いだし、リアーヌは慌てて荷物をまとめて教室を飛び出した。
廊下にはもう先生の姿は無く、仕方なくリアーヌは勝手の分からない学園を探し回ることにする。
しかし、しばらく歩いても同じような教室が続いているだけで先生はいなかった。
そこでリアーヌはいったん職員室を探す作戦にシフトすることにした。
場所は分からないが、担任の先生をしている先生なら、きっと職員室にいるだろうと考えたからである。
校舎を移って階段を上っていると入学式で挨拶をしていた縦ロールの女に出会った。
「そこのあなた、まちなさい!」
リアーヌが会釈して横を通り抜けようとすると声をかけられた。
「私はこの学園で生徒会長をしているジュリエッタよ。あなたは?」
「え、ええと・・・一年のリアーヌです」
「そう、一年生だったのね。だったら知らないのも無理もないけれど、この校舎は一般生徒は立ち入り禁止よ」
「そ、そうなんですか!?すいませんでした!」
「いいのよ。でも今度からは気を付けてね・・・ところで、どうしてあなたはこんな所をうろうろしていたの?」
「実は先生に呼び出されているんですけど職員室の場所がわからなくって・・・」
ここで生徒会長に嘘をつく必要はないためリアーヌは正直に訳を話した。
「そうだったの。職員室はあるけれど、先生が場所を指名したんじゃないならたぶんそこにはいらっしゃらないと思うわ」
「え、どうしてですか?」
「この学園の教師はほとんどが学園長に招かれて研究場所を提供する代わりに教師をやってくださっているの。だから教師というよりは研究員としての色が強い方が多いのよ。」
リアーヌはそれを聞いて入学式の後のクラスでのイザベル先生の態度を思い出した。
確かに思い出してみると、失礼な話だが彼女が教師に向いているとは思えない。
「それで、どの先生によばれているのかしら?私が研究室まで連れて行ってあげるわ」
「え、でもご迷惑じゃ・・・」
ここでリアーヌは日本人特有の遠慮を発揮してしまった。
「いいのよ。困っている生徒の役に立つことをするのが生徒会の仕事ですもの。」
「じゃあ、イザベル先生のところまでお願いします。」
しかし、ジュリエッタ生徒会長がいいと言うため、せっかくの好意を無下にするのも失礼に感じたリアーヌは甘えることにした。
「・・・!」
しかしジュリエッタ生徒会長は先生の名前を聞いた途端に驚いたような顔をして黙ってしまった。
「あの、生徒会長?」
「・・・いいえ、なんでもないわ。行きましょうか」
「え、は、はい!お願いします!」
一瞬の間に疑問を感じつつもリアーヌはジュリエッタの後に続くことにした。
「イザベル先生の研究室は離れにあるの」
「え、離れなんてあるんですか?」
「ええ、彼女は王室の研究所から4年前に学園長が無理やりスカウトしてきてね。その条件として彼女だけ個別に建物を建ててそこで研究させるというのとさらにもう一つの条件をつけてやっと承諾したって話よ」
「すごい方なんですね・・・」
「・・・ええ、ほんとうにね・・・着いたわ。ここがイザベル先生の研究室よ」
話ながら外を歩いていると不意に生徒会長が足を止めた。
「え、何にもないですけど」
リアーヌはもしかしてからかっているのかと思ったが、仮にも生徒会長である彼女が幼気な新入生である自分に対してそんなことはしないだろうと思い直してきょろきょろと辺りを見回した。
「ええ、何もないわよ。地上にはね」
そういうと彼女は突然地面に這いつくばって何かを探すように芝生の地面にその手を這わせはじめた。
「え、なにしてるんですか・・・?」
「あなたも探しなさい。・・・ええと、このあたりにあったと思うんだけど・・・前に来たのは随分前だったし、どこだったかしらね」
コンタクトでも落としたのかな?とリアーヌは思ったがこの世界にそんな物があるなんて聞いたことがない。
仕方なくリアーヌは何を探しているのかもわからず目の前の突然奇行に走り始めた生徒会長と同じように地面をまさぐった。
「あの・・・何を探しているんですか、私たち」
「いいから探しなさい・・・ええと・・・あったわ!」
ぶつぶつ言っていたジュリエッタが突然声をあげた。
リアーヌが近づいて見てみると、芝生に取っ手のようなものがついている。
ジュリエッタがそれを引くと、中から受話器の付いた古い固定電話のようなものが出てきた。
「なんだ、電話ですか・・・って電話!?」
もちろん転生してからそんなものを見たことはない。
もしかすると王都ではもう流通しているのだろうかと思い、生徒会長の方を見ると彼女も急に大声を上げたリアーヌに驚いていた。
「なによ、急に大声あげてはしたない。それよりあなたこれを見たことがあるの?」
「え、電話じゃないんですか?」
「でんわ?それは聞いたことがないけど、これは通信魔道鈴よ。イザベル先生が開発したものでまだ市場に出回っていないはずだからきっとあなたの言うそれとは別物ね」
そう言って彼女は通信魔道鈴の受話器の部分を手に取り本体のボタンを押していく。
「ええと、パスワードはこれで良かったわよね・・・あ、先生、私です。生徒会長のジュリエッタです」
ジュリエッタがそう受話器にそう話すと何も無かった芝生の一部がせりあがってきて、地下へと続く階段が現れた。
「イザベル先生の研究室は地下にあったんですね・・・」
「ええ、開いたということは中にいらっしゃるはずよ」
「はい。わざわざありがとうございました生徒会長」
「いいえ、私も彼女に用ができたから丁度よかったわ」
「そうだったんですか(ん?用事があったじゃなくてできた?)」
ジュリエッタはリアーヌを置いて先に下りていってしまった。
疑問に感じつつもリアーヌは彼女の後を追う。
階段は地上からは暗く見えたが足元は証明で照らされていたため特に危なくは感じなかったが、足元しか見えなかったため、急いでジュリエッタを追いかけたリアーヌは階段が終わった瞬間に、前を進んでいたジュリエッタにぶつかりそうになって尻餅をついてしまった。
「何やってるのよ、全く」
そう言いながらジュリエッタはリアーヌに手を差し伸べてくれた。
「すいません。よく見えなくって・・・」
「怪我はないわね?」
「はい、大丈夫です・・・ここは?」
そこは広い通路だった。
「この先にある突き当りが彼女の研究室よ」
「他の部屋は他の先生の研究室ですか?」
ふと疑問に感じたことをリアーヌは歩きながらたずねた。
「いいえ。言ったはずよこの施設は彼女が学園長に建てさせたもの。他の部屋も全部彼女の私室よ」
そういえばそうだったとリアーヌは思い出した。
「・・・やっぱりすごい人なんですね、こんな施設をたった一人の為に作るなんて」
「そうね・・・ここよ」
扉には『イザベルの研究室』と書かれている。
「失礼します。ジュリエッタです」
ジュリエッタがノックしてさっさと入ってしまい、慌ててリアーヌも自分の名前を名乗って後に続く。
「いらっしゃい、ジュリ。貴方が訪ねてくるのは久しぶりね。リアーヌは遅すぎよ!私ずっと待ってたんだから・・・」
そこには入学式や教室でのパリッとしたスーツとは打って変わって可愛らしい部屋着を着たイザベル先生がいた。
これ100話くらいでやっとタイトル回収できるんじゃ・・・