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生まれ変わってお嬢様!  作者: ガイアにゃんこ
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王立シャルレアン魔道学園-1

アリー先生の知り合いの推薦状によってリアーヌの学園入学の手続きはとんとん拍子で進み、とうとう学園の入学式に出席しそのまま寮に入るために屋敷を出発する日になった。

出発の朝、父親である子爵の計らいで、屋敷の前には幼いころからずっと育ててくれてきたメイド達や両親が勢ぞろいしてリアーヌの門出を祝ってくれた。

マリナも先輩メイドや母であるメイド長、雑貨屋を営む父に囲まれ激励の言葉をかけられている。

リアーヌは自分の目的のために行く学園であるので、今更ながらそれに付き合わせるマリナに申し訳なくなってきた。

本人の同意のもとについてきてもらっているとはいえ、結局メイド長である母について行くと言わされたようなもので、“本人の意思で”とは言い難い結果となってしまった。

そのことを後からマリナに謝まると、「王都に行きたいと思っているのは本当ですから。」と笑って言ってくれたけれど。

とにかく両親にしばしの別れの言葉を告げたリアーヌはマリナとともに馬車で大きな駅のある隣町まで出発した。




「お嬢様、そろそろ王都に到着しますよ」

マリナの声でリアーヌは目が覚めた。

暖かい列車の客室で揺られながら長時間過ごしている間に眠っていたらしい。

二人の乗る魔道機工によって従来の蒸気機関車の倍ほどの速さを実現できたらしい魔道特急列車はそれなりの速度で走っているように見えた。

初めにマリナに聞いた説明によると、魔道特急は車輪の摩擦を魔道機工によって抑えたために速さを実現できたそうで、そのために魔道機工に精通していてさらに機工を制御できるだけの魔力の豊富さを持つ技師が乗っていないといけないんだとか。

そのため乗車料金も高めに設定されているらしい。

窓の外を見ると王都の中心に近いためか家屋が増え、道行く人の数も故郷にある時々連れ出してもらっていた町とは比べるべくもないほどになっていた。

「王都に着いたらまず寮の部屋の下見に行きましょう。本日はまだお嬢様は学園に入学していらっしゃらないので宿に泊まっていただくことになりますが、これから三年も過ごす場所ですし、入寮してからお部屋に不備が見つかるといけませんもの」

マリナが今日の予定を話してくれる。

わざわざ決めてくれなくても自分で考えられるのに、とリアーヌは思ったが、自分はまだ十二歳でお付きの人もマリナしか連れていない。

マリナだって母親であるメラニーがラウル邸で働き始めてから生まれたのだから相当若いはずであるが

「ねぇ、マリナ」

「それと、入学に際して制服の受け取りも…え、はい、お嬢様、なんでしょうか」

「あなたって、いまいくつなの?」

リアーヌはつい聞きたくなって話を遮ってしまった。

女性に歳をきくのは失礼だが、こちらも女の身であるし何よりマリナはまだ歳を聞かれて失礼にあたるような歳の見た目ではないし良いだろうとリアーヌは自分の中で納得した。

「私ですか?先月16になりました」

前世の自分より若かった

「そ、そう、思ったより若いのね」

「はあ、お嬢様ほどではないかと」

よく見ると今まで自分の容姿と比べて随分大人に見えていたマリナは確かに16歳相応に幼い顔つきをしていた。

「あ、あの、お嬢様?」

これはあまり苦労を掛けられないな、とリアーヌが思っているとマリナが頬をかすかに染めていた。

「あら、ごめんなさい」

ついじっと見つめてしまっていたらしい。

「どうかなされましたか?」

「いいえ、なんでもないわ」

「そうですか、あ、お嬢様、到着したみたいですよ」

そんな会話をしているうちに列車は王都の中心にあるシャルレアン駅に到着していた。




王都はすごい賑わいだった。

前世でリアーヌは東京に行ったこともあったが、人の数では東京に軍配が上がるものの、その賑わいの度合いは負けるとも劣らない。

「すごい人の数ですね」

「そういえばマリナはアリアーヌから出たことがないの?」

「実は物心着いた時からお屋敷で働いていたので、お屋敷の外にはほとんど出たことがないです」

そういえばリアーヌは今よりもっと小さい頃に厨房でお皿を拭いている小学生くらいの女の子を見たことがあった。

そんな頃から今までほとんど屋敷から出たことがないのなら、もしかしたらメラニーの強引なマリナ押しも娘に広い世界を見せたい母心なのかもしれない

「まずは寮の下見ですね」

マリナが王都の地図を見ながら歩き出す。

「マリナも寮に住むの?」

「いいえ、使用人用の施設が寮の近くにあるようなのでそちらに」

どうやら使用人と一緒に王都に上ってくるのはリアーヌだけではなかったらしい。

アリー先生の話では今も学園に通う過半数の生徒が貴族の子女や富豪の子供たちらしいので、おかしな話ではないのかもしれない。

「寮は二人部屋なのでしょう?一緒に住めばいいじゃない」

リアーヌの父であるラウル子爵は彼女のことを溺愛しているので、二人部屋をリアーヌ1人のために借りてしまったのだ。

「い、いえ、私のようなものがお嬢様と一緒に寝泊まりするわけにはいきません!」

「そう?私は別に気にしないのだけれど」

むしろ二人部屋に二人で住む方がお金がもったいなくなくて良いと思ったリアーヌではあったが、確かにプライベートな空間は与えてあげた方がいいと思い直した。

「この建物ですね」

マリナの案内でたどり着いたそこにはとても大きく豪奢な建物があった。

故郷のお屋敷もリアーヌの前世での住まいとは比べられないほどに大きいものではあったが、学園のたくさんの生徒が入っているためか、来客用や使用人たちの住まいなども内包していたはずのお屋敷よりも何回りも大きい。

「大きいわね」

「そうですね、この寮だけで200人は入寮できるはずですから」

その200人全員の部屋と寮の運営に関わる施設が入っているのならばこの大きさもうなずけるとリアーヌは納得した。

「お嬢様のお部屋は3階の角部屋ですね」

マリナの案内で部屋に上る。

廊下や階段の作りも豪勢でやはり富裕層のために作られた寮なのだと分かる。

「この部屋です」

その部屋はとても広かった。

使用人を呼び寄せて使わせるためかキッチンも完備されており、ベットは二人部屋であるため二つあったがそれぞれに二人は入れるくらいの広さがあった。

「すごいわね…」

生活に必要な物はすべてそろっており、故郷の屋敷にあるリアーヌの部屋よりも広い寮の部屋におもわず溜息が漏れる。

「やっぱりマリナもここに一緒にすみなさいよ。お父様には私から伝えておくから」

自分ひとりで使うには広すぎる部屋にもう一度マリナの説得を試みる。

「いえ、私にこの部屋は贅沢がすぎます。使用人用の寮で十分です」

しかしマリナは頑なだった。

部屋を変えてもらうことも考えたが、明日が入学式であるので空いている部屋があるとも思えない。

仕方なくリアーヌはとりあえずこの部屋に住むことに了承し、契約書にサインをした。

「では、次に制服とお嬢様の生活に必要なものを買いに行きましょう」

寮の部屋に故郷から持ってきた荷物を置いて町に出る。

「部屋に必要なものはそろっていたんじゃないかしら」

「ええ、家具の類は部屋の備え付けのものを使っていただくことになりますが、学園で必要な用具などを選んでいただかなくてはなりませんので」

「それもそうね」

リアーヌは故郷から筆記用具の類と数着の衣服しか持ってきていない。

マリナと持っていくものの相談をしている時に都会の流行に合わせるためになるべく持っていくものを減らし、現地で買うことを決めたためである。

「制服はこちらの店に注文してあります」

王都に到着するのが入学式の前日であると分かっていたため、あらかじめリアーヌの体のサイズを計測し、発注しておいたのだ。

「リアーヌ様でございますね」

店に入ると奥からスーツを着込んだ髭のダンディーな50前後の見た目の男が出てきた。

「ええ、そうです」

「お待ちしておりました。ご注文の制服はもう仕上がっております」

男がそう言うとまた奥から若い女が真新しい制服をもって出てきた。

「こちらが王立シャルレアン魔道学園の制服にございます」

広げてみたそれは灰色のブレザーの胸の部分にシャルレ王国のマークとおそらく学園のマークであろうワッペンがつけられていて、それが赤いスカートとセットになっている。

そして赤いスカートとブレザーを取り出した箱の下からは黒いマントが出てきた。

「これは?」

「学園の式典に出席される際に着用を推奨されているマントにございます。なんでも学園の開設のきっかけになった魔導士がマントを好んで着用していたことに端を発するものだとか。」

黒いマントは広げてみるとライトの光を受けてキラキラと光って見えた。

「リアーヌ様のために特別な布をご用意しました」

「特別な布ですか?」

「はい、よりよいものをとのご注文でしたので東のレルムリアから布を輸入し、仕立てました」

「何が特別なのですか?」

「はい、このマントの布には魔力を練り込んで織ってあり、通常の銃弾程度なら通すことはありません」

「本当ですか!?」

にわかには信じがたかった。

リアーヌの前世にも防弾繊維は存在したが、それは分厚いベストなどだ。

マントはきれいではあるものの薄く、銃弾を止められるとは思えない。

「はい、本当です」

しかし、店員はそう言い切った。

魔力というものは最近レルムリア王国を中心に魔道機工が発達してきているとはいえ、古代から発見はされていたもののそれがなんであるかはまだはっきりとは解明されていないらしい。

この目の前の男も店の信用に関わることだし嘘はついていなさそうだし、なにより断言する以上は一度は試したのだろう。

ここで仕組みを説明しろとこの男に言っても意味がないか、とリアーヌは思うことにした。

「わかりました。確かに受け取りました」

代金分をマリナに家で渡された資金から支払ってもらい、店を出た。


その後も学園で必要なものや教科書などを買ったリアーヌは、食事を済まし、入寮したばかりの寮に帰って扉の前でマリナと別れた後シャワーを浴びて、床に就いた。

旅の疲れもあったのかその日はぐっすりと眠ることができた。

予備校が始まりました。

投稿ペースが落ちますが、週一投稿目指して頑張ります。

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