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生まれ変わってお嬢様!  作者: ガイアにゃんこ
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生まれ変わってお嬢様-2

タイトル回収しばらくかかりそうです

パーティーの翌日、昼食を摂った後の午後の勉強の時間、リアーヌはアリー先生に語法を教わっていた。

「違います。この構文は今の場合は使えません。この前にも同じことをお教えしたはずですが?」

今日もアリー先生は厳しかった。

そこでふと昨日のことを思い出したリアーヌは先生にたずねてみた。

「先生は私が学園に通っても問題ないとお思いなのですか?」

「ラウル様がそう仰ったのですか」

「はい。それで昨日、来年から学園に通うかどうかをお父様から問われました」

「そうですか…。」

アリー先生はそう言うと、不意に顔の力を抜いて眼鏡を外し、これまで見たことがないほどに優しくゆっくりとリアーヌに語り始めた

「私も若いころに学園に通っていました。当時の私は今のリアーヌ様に及ばない程度の知識しかありませんでしたが、それでも私の故郷では優秀だったので、私の村に勉強を教えに来てくださる先生に推薦され平民の身ながらに王都へ赴き、学園に通うことになったのです。」

リアーヌはアリー先生との話に今の悩みの解決法を見つけようと思い、たずねた

「故郷を離れがたくは思わなかったのですか?」

「ええ、15年村から出たことなどほとんどなかったので、外の世界に恐怖とまでは言わずとも軽い恐れも抱いてはいましたし、当時の学園に通うのはほとんど貴族の子供たちでしたから」

「ではなぜ?」

そう問うと、先生はどこか遠い思い出を見るようなまなざしでさらに話してくれた。

「私がそのことを言うと私の先生はこうおっしゃったからです。“目の前に幼い才能があれば、大人の仕事はそれが折れないように、また間違った方向に行かないように最大限の協力をすることだ。私は君にあふれる才能を見出した。確かにここでも学園と同じことを学べるだろう。だが、学園に、広い社会に踏み出せば、きっと君は村にいるよりもっと大きなことを学び、得ることができる。私は私の目の前で才能が誰の目にも入らず埋もれていくのが我慢ならないんだ。だから君には王都へ行き、学園で本にはないことを学んでほしいんだよ。”と」

アリー先生はそこまで言うと一息つき、リアーヌに向き直りまた話始める

「リアーヌ様には大きな才能があります。それは私の手の中ではなく大きな世界で花開いていくべきものです。確かに学園に通い始めるのは大体15歳を迎えたころです。ですが、それは慣習のようなもので、決まっていることではありません。もちろん無理強いはしませんが、学園には知り合いがいるので推薦状も書いてもらえるとおもいますし、あなたにはできるだけ若いうちから多くのことを知ってほしいのです。」

そこまで聞いて、先生がそこまで自分のことを考えてくれていたのだと分かったリアーヌは何だか目頭が熱くなった。

アリー先生の今までの厳しい教え方も自分のことを思ってのことだったと分かったからだ。

「そのことは、後で考えていただくとして、いまはシャルレ語の時間です。このままではもし学園に通うことになってもひどい成績しかとれませんよ」

先生は話し終えるとまた眼鏡をかけ、厳しい表情に戻って言った。

「はいっ!」

リアーヌには自分の能力は前世があったためだという自覚があったが、先生の思いを無駄にはしたくないと感じたので、先生をがっかりさせないためにもより一層勉強を頑張ろうと思った。

リアーヌは学園に行く決心がついた。



ラウル子爵は日中領地経営に追われていて、その妻エリーゼもその補佐でいそがしかった。

しかしそれでも子爵は夕食だけは一家三人そろってとるようにしていたため、その夕食の後、リアーヌは両親に学園に通いたいことを話した。

「そうか、うむそうだな…わかった。それがお前の意思なら尊重しよう。しかし、寂しくなるな」

「ありがとうございますお父様。お母様は許してくださいますか?」

父親の了承は取れたので、今度は母親に聞いてみる。

「…私は反対です。やはりまだ1人で世間に出すには幼すぎます」

リアーヌは心の中で苦笑した。

なにせ前世では家庭を切り盛りして妹を育てていたのだ。

それでも両親からすれば屋敷からほとんど出たことのない箱入り娘なのだろう。

別に独立するわけではなく、王都にある寮に入るだけなのだが。

「では…誰か使用人の中から1人付き添って貰えば、許してくださいますか?」

リアーヌは妥協案を提案した。

主従関係にあるとはいえ使用人はみな幼いころからリアーネを育ててくれた姉のような存在だ。

一人で世間に出すのが不安ならば、これなら文句のつけようはあるまいとリアーネは考えたのだ。

エリーゼも少し悩んだ後、「使用人本人の同意があれば許しましょう」と言ってくれた。



しかし、交渉は難航した。

使用人たちはほとんどがアリアーヌ地方出身でさらにその半数が子爵の屋敷のある町の出身である。

リアーヌもこの土地を離れがたく感じた身であるので無理強いはしたくなかったため、母の言う使用人本人の同意は元々取るつもりだった。

しかし面と向かって言えば、リアーヌは元々幼いころから育ててきた妹のように思われているだろうし、そもそもが使用人とお嬢様の関係なのだから本人はあまり行きたくなくともOKをだしてしまうかもしれない。

だからリアーヌは少しずつそのことをほのめかして反応を見てから交渉するつもりだった。

しかしやはり使用人たちはこの土地に愛着を持っていることがほとんどで、リアーヌは領主の娘として誇らしいのやら残念なのやらよくわからない複雑な気持ちになった。

しかし、メイドたちにアタックを続けて三日目、ついに王都についてきてくれそうな娘が見つかった。

その娘とはいつもリアーヌの部屋の掃除をしてくれたり、着替えを手伝ってくれたりするマリナだった。

リアーヌは前世では貧乏な高校生だったので、着替えを誰かに手伝ってもらったりするのに抵抗があった。

なので、普段着を着るときはマリナに頼んで自分で着るようにしていた。

しかし、子爵の娘として極まれにパーティーに出席するときのドレスは一人で着るのが難しく、マリナに手伝ってもらわざるを得ない。

その時によく気恥ずかしさを紛らわすためにリアーヌから世間話を振るのだが、そこから得た情報では彼女の父親は王都の出身らしく、父の実家のある王都にマリナは少なからず憧れを抱いているようだった。

そのことを思いだしたリアーヌはメイド長におねがいしておやつの時間のメイドを一日だけマリナに交代してもらい、そこではじめてリアーヌはマリナに王都へついてきてくれないかという旨を伝えた。

「私が、王都にですか?」

突然の話に戸惑うマリナにリアーヌは自分が学園に通いたいこと、そこについてきてくれる使用人を探していることをつげる。

「別にずっと王都にいるわけじゃあないの。私が学園に通う三年間だけ、お母様を説得するためについてきてほしいの。私が授業の間は自由にしてもらって構わないし、どこか行きたいところがあるなら学園の休みの日には連れていってあげるから。……ダメかしら?」

マリナが少し迷っているのを感じたリアーヌは必殺の上目づかいまでつかって説得する。

この上目づかいはおやつのおかわりがしたいときに使うと成功率90%のリアーヌの得意技だった。

妹のような美少女(後者はリアーヌには自覚はないが)にこれをされると、メイドはみな頬を赤らめて本当はダメなおかわりをくれるのだ。

リアーヌにおやつのおかわりを与えたメイドがメイド長に怒られているのを目撃してから封印している技でもある。

しかしマリナはそんな封印されし必殺技を繰り出したにもかかわらず迷っている。

リアーヌの学園ゆきに母親が反対しているからだろうか。

ラウル邸で働くメイドはそのほとんどが前領主の不法な課税によって畑を失い路頭に迷っていた女性たちをエリーゼが雇い入れることによって救われた者たちである。

農民達の必死の直訴によって前領主はこの地を追い出され、代わりに若くシャルレ王の少年の頃からの友人であったラウル子爵が新たな領主として自ら進んで派遣されてきたのだ。

当時出世頭だった彼が自ら進んで荒れた畑の目立つ辺境に派遣されたことは、当時の王宮を大いに騒がせるニュースとなった。

しかし子爵の活躍は目覚ましく、荒んでいた町は活気を取り戻し、民はみな彼に信頼を寄せた。

また子爵もこの土地を愛し、この地に永住することを決めたのだ。

ここまでがリアーヌが地元の歴史として両親やメイド達に学んだことだった。

「私の母もエリーゼ様に救っていただきました。そしておつかいに行った先の王都で父に出会ったのです。」

マリナの父はリアーヌも知っている。

町で雑貨屋を営んでいて、時たま屋敷にも品物を届けに来るのだ。

「あなたも王都で素敵な出会いがあるかもしれないわよ?」

「私はこのお屋敷で毎日お嬢様のお世話をしているだけで幸せですから」

リアーヌが冗談めかしてマリナに王都に興味が出るような話題を振るも、マリナの答えは変わらなかった。

これは望み薄だと感じたリアーヌはお茶のおかわりを持ってきてくれたマリナに礼を言い、他に王都へついてきてくれそうなメイドを考えた。

しかし、他のメイドは当たりつくしたし、マリナ自身も王都に行くのが嫌なわけではなさそうだ。

どうしたものかと思ったその時、扉をたたく音がした。

お昼時はとっくに過ぎているので食堂に両親が来ることはないし、それならここはリアーヌの自室ではないのでノックはしないはずだ。

誰かと思っていると、扉の向こうにいたのはマリナの母であり、一番の古株でもあるメイド長のメラニーだった。

「失礼します。お嬢様」

「え、ええ、構わないけれど、何の用かしら」

「このたびは、お嬢様にお願いがあってきました」

このメイド長がお願いとは珍しいとリアーヌは思った。

マリナはまじめだが、表情は豊かであるし、暇な時には世間話にも応じてくれる。

しかしその母であるメラニーはその熟練のなせる技なのか、いつも仕事中に表情を変えることはない。

「我が不肖の娘、マリナを王都に連れていくメイドとして選んではもらえませんでしょうか」

だからこそ、この時リアーヌは内心大変驚いていた。

リアーヌが王都へついてきてくれるメイドを探していることを知っていることもだが、仕事中に表情も変えないメイド長が、あろうことか娘を連れて行ってくれないかと頼んだことについてだ。

しかし、これはチャンスだと思ったリアーヌは驚きを隠してメイド長に向き直った。

「ええ、今その交渉をしていたところなの」

「そうでしたか、では連れて行ってくださるのですね?」

今日のメイド長は押しが強いなぁ、とリアーヌは思った。

「それがね、当のマリナがあまり乗り気でないみたいなの。私もあまり無理強いはしたくないし」

「その点については大丈夫です。マリナもお嬢様について行きたく思っています」

「メイド長!?」

マリナが驚いた声を上げる。

「どうしてそう思うの?」

「この子は元々父の実家のある王都に行きたがってましたし、行くのを渋っている理由も誤解ですから」

「どういうこと?」

「この子は母である私がエリーゼ様に恩義があるからこそ、そのエリーゼ様の反対するというお嬢様の王都行きについて行くのをしぶっているのです」

ここまではリアーヌの思った通りだった。

「誤解って?」

「はい。エリーゼ様はそもそもお嬢様の王都行きに反対ではありません」

「なんですって?」

どういうことだろうか?

「エリーゼ様はお嬢様がお一人で王都に行くことには反対していらっしゃいますが、メイドを連れての学園の入学には納得していらっしゃいます」

それは知っている。

だが、快くは思っていないはずだ。

「エリーゼ様はお嬢様が王都に行かれるのが寂しいだけなのです。アリー先生にお嬢様がもう学園に入るべきレベルに達しておられることを聞いた時には大変お喜びになっておられました」

リアーヌは母とメラニーがとても昔からの主従関係であることを知っていた。

きっと娘である自分より話しやすいこともあるのだろう。

リアーヌは少しだけメイド長に嫉妬した。

「なので、ぜひマリナを連れ立って、エリーゼ様を説得してください。きっと素直に学園入学の許可をくださるでしょう。マリナもいいですね?」

「…はい。メイド長がそうおっしゃるのなら」

「ではお嬢様、至らぬ娘ではありますが、どうかよろしくお願いします」

お世話してもらうのはこちらなのだけれど、とリアーヌは心の中で苦笑した。

「ええ、マリナのような優秀なメイドが一緒ならば心強いわ」


その日の夕食で、マリナと一緒に学園へ行ってもよいかと母にたずねると、母はあっさりと許可をくれた。

本当に寂しかったから反対していただけなのかもしれない。

もしかしたらメイド長は素直になれないエリーゼの心の代弁をしに来たのかもしれないと思ったリアーヌはやはりメラニーはできるメイド長だと思った。

東京に二日ほど行かなくてはならなくなったので、更新が空きます。

できるだけ早く書くので気長にお待ちいただければ幸いです。

次は学園に向かう予定です。

なかなか話が進まないことをにゃいとは焦り始めております。

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