少年の一日目
退院後、家に帰るなり僕は自室のベッドに飛び込んだ。
ここまで、自分の家が落ち着くことに今実感している。
入院中は何かと不自由というか、リハビリ以外は基本ベッドから動かないし、他の患者さんと仲良くする気になんか起こらなかったし、そんな自分を卑下に思ってきたから今日まで入院期間が伸びてしまったのだろう。
そもそも、そんなに悪い病気でもなかったのに親の心配で入院したおかげで、高校初めての夏休みが無駄になってしまった。悪いことは無かったけど、良いことも無かった。
「隼人。入るぞ」
僕の父親。毎度のごとく、ノックもせずに入ってくるのは何度言っても覚えないので、おそらく、忘れやすいのが悪化してきているのだろう。
「勝手にどうぞ」
僕の口調も口調で問題ありそうだけど、基本これだし、変えようにも少しめんちいから嫌なんだけどね。それに、退院後で疲れていると言えば理解してくれるだろう。
「体調はどうだ?」
ドアを開けるのと同じタイミングで言うから聞きづらかったけど、僕の体調について気にかけているのだと勘づいた。
「んー。まあまあ元気」
言葉少なめなのは、普段からあまり会話をしないから。こればかりは、家族として直していかなければいけないのは分かってはいるけど、やはり、めんちい。
「そうか、なら良かった。母さんも心配していたからな」
「母さんを引き合いに出さなくてもいいよ。そんなの手術前にあれだけ泣けば、誰だって分かるよ」
「そっか………それでも母さんに一言、言ってやれよ」
「めんちい」
今はとてつもなく眠気が強い。おそらく、起きるころには日付が変わっていることだろう。
「眠いし、このまま寝たら日付が変わっているから、父さんが伝えてくれる」
素っ気ないし、言い訳じみているけど、本音だし、眠い。
「分かった。邪魔して悪かったな。おやすみ」
「おやすみ」
そう言った時には、父親は部屋から出て行った。
さて、僕はもう寝るよ。
おやすみなさい