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第七話:下山、そして遥の実家

 山小屋を出発して二日目の正午前。

 両脇を覆っていた紅葉が減りはじめ、ようやく山道を抜けた俺たちは、勾配がなく平たんではあるが、古いわだちが残る泥道を歩いている。

 おそらく人通りが少ないのだろう。


 そして、それからさほど進むことなく、街へと通じているらしい街道へと辿り着いた。

 幅十メートルはあろうかという舗装されていない街道が、南北に延びている。

 街道の向こうは枯れかけた草原であり、ところどころに巨岩が顔を出していた。


「右でいいんだよな?」

「そう、右が富士大公国、左が和国よ」


 南側に行けば遥たちの実家がある富士大公国の首都らしい。


「ここまでくればもう一息じゃの。疲れとらんか?」

「疲れてはないんだけど、腹が……」


 この時代に来て、かなり正確になった俺の腹時計が正午を告げている。

 ここが最後の休憩ポイントらしいので、街道に出る前に昼休憩をとることになった。

 荷車を停め、その横の草原で車座に座っておにぎりをほお張る。

 下りて来た道を荷車がふさいでいるが、ほとんど人が通らない道なので気にする必要はないらしい。


 休憩の間、ずっと街道を眺めていたが、旅人の姿は見えず、護衛らしき乗馬した人に守られた荷馬車の一行と、馬を駆る軍人らしい団体さんが南下していっただけだった。

 どちらの団体さんも、俺たちには一瞥をくれただけで素通りだ。

 というか、先を急いでいる感じだった。


「あれは?」

「公国軍の巡回よ」

「巡回?」

「主に危険な野獣とか妖魔のたぐいの監視じゃ。野盗もたまに出おる」

「妖魔ってあれっすよね。”妖気”のバケモノ」


 ヒカル爺曰く、妖魔とは”妖気”に支配された獣、または”妖気”のみの意識体であり、このあたりに出没するのは前者だということらしい。

 後者は、山岳地帯の一部と地下にしか生息? しておらず、遭遇すれば危険極まりない存在だが、平地にはほとんど出没しないそうだ。

 荷馬車が先を急いでいたのは、野党や危険な獣が出没する危険地帯を、早く通り抜けたかったのだろう。

 軍人さんたちは、昼休憩に遅れないように急いでいたのかもしれない。


 昼休憩を終えた俺たちは、街道の左側を南に向けて歩いた。

 途中何度か軍人さんや荷馬車とすれ違ったり追い抜かれたりしたが、道幅の広い街道では、それも苦にならなかった。

 そして、見えてきた川の向こうには稲刈りが終わった田んぼが広がっており、そのさらに奥に、ようやく民家らしき建物が見えてきた。


 木でできた大きな橋の近くまでたどり着いてみれば、川幅は広く、三十メートルはあって、水深も深そうだった。

 橋の手前には、小屋というには大きな建物と厩舎があって、道を塞ぐように四人の軍人が立っている。

 カーキ色のツナギのような軍服と軍帽をかぶり、腰に刀のようなものを差した男三人に女一人だ。


「あの人たちは?」

「橋の守備兵じゃよ」


 このとき、俺はあることに気づき嫌な予感がしていた。

 こういった場面では、身分証とか入国証とか見せなければダメなんじゃないのか?

 座右のファンタジー小説にもそう書いてあった。


「あの、俺身分を示すモノ持ってないんだけど……」

「ガッハッハ、そんなものは要らん。心配無用じゃて」


 ヒカル爺によれば、和国との国境は、街道をここからずいぶん北上したところにあるとのことだ。

 つまり何が言いたいかといえば、現在地点は富士大公国の国土であり、山小屋があった場所も富士大公国だった。

 ようするに、入国証は国境で必要なのであって、すでに富士公国の中にいる俺たちには必要ないということだ。


「今年は大猟のようだな、爺さん」

「ホッホッホ、おかげさまで、いい猟ができましたわい」

「ふん、仕事が引けたら飲みに行かせてもらおう」


 見た目四十過ぎの、この時代でいえばおそらく百五十過ぎの軍人が、見下すように偉そうな口ぶりで話しかけてきた。

 ヒカル爺は、いくぶん腰を低くして対応している。

 遥の話では、軍人は貴族階級に次ぐ特権階級ということだった。

 それは、命を張って国と民を守ることが建前になっているからこそらしい。

 らしいのだが、それよりも権力を笠にきることのほうに軸足が移っている者も多いそうだ。

 そういう人種は、いつまでたっても出世できない下っ端に多いらしい。

 たぶんコイツらがその下っ端なのだろう。

 俺は遥に合わせてできるだけ目を合わさないように、そして不自然にならないように歩いた。


 そそくさと軍人たちの前を通り過ぎ、橋を渡ってようやくひと心地ついた俺は、道すがら大公国のあらましを遥に聞くことにした。

 彼女によれば、人が生活する街や畑や田んぼ。

 要するに一般人が活動するエリアは、川と堀によって守られているそうだ。

 危険な妖魔や野獣は、川や堀に邪魔をされて、入ってこれないらしい。

 それは、田畑を荒らす害獣も同様なのだが、鳥は侵入できるためめ、稲穂が垂れる収穫前になると、散弾銃をもった農家の人たちが、昼夜見張りをするそうだ。


「へぇー、銃はあるんだ」

「人や獣には無意味だけどね」


 ”気”で強化されたこの時代の人や獣に、銃器は効かないらしい。

 しかし、それでも銃器が存在するのは、田畑を荒らす野鳥を追い払うためなのだという。

 ちなみに、鳥に弾が命中しても、気絶することはあっても死にはしないということだった。

 この時代では、銃器には鳥を追い払うことくらいしか利用価値がないらしい。

 ”気”を溜めておけない弾丸より、溜めておける矢のほうが殺傷能力が高いというのだから面白い。

 そういえば、ヒカル爺の主装備も弓だった。


 銃で撃たれても怪我すらしない。

 この時代の人や獣は、それほどに耐久力が上がっているのだ。

 仮にピストルで撃たれたとして、おもちゃの銀玉鉄砲の弾が当たった程度なのだろうか。

 ハトがマメ鉄砲の例え程度だろうか。

 それとも、当たるとミミズ腫れするエアガン程度なのだろうか。

 銃はあまり普及していないらしいので、気にするほどのことではないが。


 そんなことを考えながら荷車を引いていた俺の視界に、ようやく街並みが飛び込んできた。

 川を越え、両側に広がる広大な田畑を割るように伸びた街道の、少し小高い坂を登りきったところだ。

 見えてきた街並みは、塀や防壁には囲まれておらず、少しずつ民家の密度が高くなっているような印象を受けた。

 そして、さらに歩いて近づいた街の外れに点在する家屋は、屋根に瓦のように板を重ねた平屋だった。

 というか、瓦はどこの家にも使われていないようだ。

 そういえば、山小屋も板ぶき屋根の平屋だったなと、いまごろになって思いだした。


 そして、この辺りまで来ると、農作業をしている人、刈り入れの終わった田んぼで遊ぶ子供、などなど、大公国の住民を見かけるようになった。


「もうこの辺りは安全なんだ」

「川があるし、危険な獣はここまで来ないわ。仮に侵入されても、見通しが良いから」


 無邪気に田んぼを掛けまわる子供たち、農作業をしながらその子供らに目を配る大人たち。

 そこを切り取ってみれば、それはのどかな農村の一場面だった。

 なんとも牧歌的な光景だ。


 しかし、そんな様子も長続きはせず、次第に民家が密集し、やがて民家のかわりに二階建て三階建ての商店や工房、事務所、木造アパートなどが幅を利かせはじめる。

 遥曰く、この通りは富士大公国の目抜き通りらしい。

 十メートル程度だった道幅は、倍の二十メートルほどに広がり、いつのまにか石畳の道に変わっていた。

 道の中央には馬や馬車が行き交っている。

 自動車やバイクはまだ見かけていないが、自転車に乗っている人もいた。

 食材を満載した俺たちの荷車は、申し訳なさそうに道の端を進んでいる。

 俺が引いて歩いているのだからそれは当然だろう。

 道の真ん中を我が物顔でトロトロ進んでいれば、大ひんしゅくを買うこと間違いなしだ。


 南北に延びるこの大通りを、このまま南に一日歩けば大公様の宮殿が見えてくるらしいが、ここからでは当然見ることができない。

 距離的には三十キロ弱だそうだ。

 ここまで大通りを歩いて、たしかに明治時代的技術レベルだということが、なんとなく分かった。


 人々の服装は、和装洋装入り乱れているが、俺が生まれた時代にくらべると、どちらもどことなく雰囲気が違っていた。

 表現が難しいが、簡素というか、余計な飾りがないというか、しかしそれでいて、古めかしさをあまり感じさせない新鮮なデザインだった。


 そして、この街がおそらく計画的に区画整理されているということも分かった。

 坂道はあれど、曲がりくねった道が無いのだから。

 見える範囲の道は全て、東西南北に伸びていた。


「次を左よ」


 その後も遥に言われたとおりの道順を辿り、街に入ってから二時間程度で建物の窓から明かりが漏れ出し、陽もどっぷりと暮れた時間になって、ようやく俺たちは彼女の実家に到着した。

 そして、そこは大きめの食事処だった。

 正面の藍色のれんには、大きく「お食事処」と白抜きしてあるのだから間違いない。

 ヒカル爺曰く、今の時間には酒も出る、いわゆる大衆食堂らしい。

 のれんをくぐった遥の声が中から響いた。


「ただいまー!」

「お前さんはここでまっておれ」


 そう言って遥に続き、のれんをくぐったヒカル爺。

 それから少し間をおいて、一人の男とヒカル爺が店から出てきた。

 少し油で汚れた白い前掛け姿のその男は、ガッシリとした体格の、いかにも体育系な角刈りオジサンだった。


「これは凄い、今年は大猟だ…… で、キミが空君?」

「そうじゃ、倉庫に案内してやりなさい」

「あの、この方は?」

「ワシのせがれじゃ」

「幸作といいます。遥が世話になったそうで――」


 幸作と名乗ったその男は、遥の父親であり、ヒカル爺の息子だそうだ。

 その幸作さんに案内されて、俺は荷車を裏手にある倉庫に引いていった。


「ご苦労さん。疲れただろう、風呂にでも浸かって疲れをとりなさい」


 俺は、幸作さんのその言葉に甘えることにした。

 そして風呂をあがり、遥の母、琴葉さんに案内された場所なのだが。

 何人座れるんだ?

 というほどに長く大きな掘りごたつが、部屋の真んなかにある居間だった。

 その居間は、部屋の広さを除けば、ひと昔前の日本家屋というか、まさに昭和の家族ドラマにでてくるような造りだ。

 誰もいないのでこたつに入って、くつろぐことにした。

 すると。


「あの、つまらないものですが」


 そう言ってお茶とセンベイを出してくれた若い女の人を見て、俺は目を見開いた。


「遥? さんじゃないですよね……」


 顔の造りは遥そのものだが、雰囲気や髪の長さが全然違う。

 こう、なんていうか、おしとやかで清楚な感じだ。

 そして、遥との決定的な違いに俺は気がついた。

 いや、気づかない方がおかしい。


 それは、否が応でも視界に飛び込んでくる、自己主張甚だしい二つの膨らみだ。

 たおやかなその体つきとは、不釣合いなほどに良く育ったふくよかな双丘の、なんとすばらしいことか。

 アメイズィングでエクセレンツな、ワンダフォーあっぱれおっぱいだった。

 自分でも何を言っているのか分からなくなってきたが、気にしないでほしい。


 さらに、長く伸ばした黒髪も、薄い化粧にも嫌味がない。

 普段化粧をしていない遥の健康美もまんざらではないが。

 これはどう見ても別人だろう。


「双子ですか?」

「違いますよ。遥は三つ違いの姉です」

「妹さんでしたか、それにしてもよく似てますね。俺は空といいます」

「琴音です。姉が大変お世話になったそうで。私からもお礼申し上げます」

「いやいや、お世話になったのは俺の方で――」


 琴音さんの、おしとやかで礼儀正しく丁寧なしゃべりかたは、けれんみがなく、遥とはその雰囲気も含めてまるで別人だった。

 気さくで、わりとお気楽な遥といるのもいいが、こういった女性もまた、いいもんだなぁ、とかなんとか考えていると。


「ふぅ、いいお湯だったわ。やっぱり実家の広いお風呂はいいわね」


 こたつで琴音さんとくつろいでいた俺は、遥の声に視線を下から上へと上げていった。

 風呂からあがったばかりの遥は、火照ったその体から淡く湯気が上がり、白い手拭いで髪をまとめあげ、柔らかそうな綿の白シャツに寝巻の下だろうか、薄手のズボンを穿いていた。

 のだが……

 俺の視線は、とある一点に釘づけになってしまう。


 フィット感があるといったらいいのだろうか、柔らかそうな薄手のシャツがピタリと肌になじみ、ボディラインが鮮明に浮き出ていた。

 そのおかげで、形のいい小ぶりな胸の膨らみが否応なく強調され、その頂に……

 シャツの上からでも明らかに分かる、ピンと起って突出した突起物。

 その神々しい突起物が、双丘の丘の頂上で、形のいい頂きのその頂上で、我も我もと自己主張しているのだ。

 俗にいうノーブラのビーチクだった。

 日本語がかなりおかしなことになってしまっているかもしれないが、それは、俺の心の動揺の表れだと思ってくれると嬉しい。


「お姉ちゃん! はしたないです。はやく上着を羽織って、空さんが困っていらっしゃいますよ」

「――!」


 俺の凝視する先に気づいた遥は、慌てて両腕で胸を隠し、茹であがったカニのように赤くなって走り去った。

 久しぶりに実家の風呂でゆっくりくつろぎ、解放感と安心感から俺がいることを忘れてしまった。

 おおかたそんなところだろう。

 いやぁ、いいものを拝ませてもらった、とはさすがに口に出せなかったが、琴音さんが遥の様子に驚いて、その後嬉しそうにしていた意味が俺には分からなかった。


 ともあれ、遥姉妹のラッキースケベ的ダブルおっぱい展開があったその後、客が引いた夜遅くになって、家族全員が集まった夕食の席で、遥の家族に俺は紹介された。

 実をいうと、定宿もなく職にもありつけていない俺は、遥のこの実家で、当分の間アルバイトをしながら住まわせてもらうことになっていたのだ。

 理由は、そうすぐには発掘師にはなれないと言われているからだ。


 さらに、食事処を営む遥の実家は、住み込みで働く料理人さんとかが何人かいて、部屋が余っているらしい。

 俺みたいな居候がひとりやふたり増えたところで、家計にもスペース的にも何の影響もないと説明されていた。


 それはそうと、遥の家族はといえば。

 これがとんでもない大家族だった。

 店主をやっている遥の父、幸作さんとその嫁の琴葉さん、妹の琴音さん。

 歳の離れた兄夫婦の竜司さんと美雪さん、その息子のまだ幼い幸一君。

 ヒカル爺と、その嫁の環奈婆さん。

 遥から見れば曾祖父にあたる源一郎爺さんと、その嫁の綾香婆さんという大所帯だ。

 親子五代、十一人の大家族である。

 成人したり嫁いだりして家を出た遥の叔父や叔母、ヒカル爺さんの兄妹姉妹と、その家族を加えれば、人数はとんでもないことになるだろう。


 そして、この時代ではこういった大家族は珍しいことではなく、中には親子七代とか八代とかが同居するバケモノじみた大家族もあるらしい。

 いくら寿命が延びたからとはいえ、俺がいた時代とは家族構成の常識を見なおす必要があるだろう。

 なにせ、幸一君から見れば曾々爺さん婆さんにあたるヒカル爺の両親ですら、どう見てもまだ六十代にしか見えないということも、その考えが正しいことを裏付けている。


 ともあれ、夜もかなり遅い遅い時間にはじまったにぎやかな夕食だったが、和やかな会話で緊張がほぐれ、俺はいつのまにかそのなかに溶け込んでいた。

 遥は疲れがでたのだろうか、早めに夕食をきりあげて自室に戻ってしまったが。

 そして、夕食の後に連れて行かれた俺がやっかいになる部屋は、居間の横にある木の階段を上がったすぐ横にあった。


「ここが空さんのお部屋になります。自分の家だと思って、遠慮なく使ってくださいね」


 案内してくれた琴音さんが、にっこりと柔らかい笑みを浮かべ、ふすまの引き戸を閉めてくれた。

 案内された部屋は、六畳の畳敷きで、すでに布団が敷かれていた。

 入り口の反対側にガラス窓があり、そこから外をのぞくと、通りに面していることが分かる。

 外はもう寒いだろうから、窓を開けようとは思わなかったが、朝になれば行き交う人々や馬車を見ることになるのだろう。


 広い風呂にゆったりとつかって、こたつでくつろぎ、楽しい団欒の中で夕食にありつけた俺は、ふとんに座った瞬間に襲ってきた睡魔にあらがうことができなかった。

 そのまま横になると、かけぶとんをたぐり寄せるように抱きこみ、眠りにいざなわれたのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 遥や空が移動の疲れで食後早々に眠りについた夜、居間に残った遥の父幸作とヒカル爺、兄の竜司、それに、妹の琴音が語らっていた。


「父さん、空君はどんな感じですか?」


 幸作の問いかけに、ヒカル爺は何かを思い出すように、そして嬉しそうに答える。


「ワシが言うのも何じゃが、あれはいい男じゃよ」

「じゃぁお爺さま、お姉ちゃんの様子がいつもと違うのは……」


 琴音は、ハッと得心がいった表情だった。

 それを見たヒカル爺が口の端を上げる。


「お前にも分かるか、遥は空のことを好いとるよ。口には出さんがのぅ」

「ついに遥に春が……」


 万感の想いが込みあげたかのように涙を浮かべたのは遥の父、幸作だった。

 幸作の息子、竜司も、うんうんと涙ぐみ、その父の肩をたたいている。

 琴音も自分のことのように喜んでいた。


「ただ、空の”気”の量と力は王族に匹敵しよるし、素養も人もいい。いずれは雲の上の人になるやもしれん。そうなれば、いや、ならずとも遥は苦労するじゃろう」

「なんと王族級! それほどに…… それではゆくゆく空君は爵位を」


 驚き、そして顔が強張った幸作に、竜司が諭すように語りかける。


「いいじゃないですか父さん。空君がたとえ貴族になったとしても、遥が彼を選ぶのなら」

「そうじゃのう幸作、貴族に嫁ぐのも悪いことばかりじゃないぞい」

「いや父さん、反対してるんじゃないよ、驚いただけさ。ただ、そうなるとライバルが多いと思って」

「気にすることも無かろう。貴族なら嫁の三人や四人、ふつうにおるしのぅ。問題は遥が空の心を遥が繋ぎとめられるかどうかじゃろうて」


 どうやら、彼らの中では遥が空の嫁になることが、すでに規定事項のようだった。

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