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プロローグ
あまねく世界を司る存在同士が争っていた。
その争いは恒常的に行われる、他愛ない意地の張りあいだった。
本気で相手をつぶそうと考えているわけではない。
どちらが強いか、賢いか、美しいか。
ただの意地の張りあいである。
あるとき、その争いの余波が時空の壁をすりぬけ、わずかにもれでた。
彼らからしてみれば、それは取るに足らない極々わずかで、極々稀薄な揺らぎでしかなかった。
そのわずかで希薄な揺らぎの極々一部が、さらに薄められ、世界に拡散していった。
全てを知る存在である彼らには、その影響が分かってしまう。
あまたの星々が存在する世界。
そのなかの稀有な星。
意識を持った有機生命体が存在する星、そのひとつが地球だった。
そこに近づく争いの余波。
それは、全ての有機物に劇的な変化をもたらす。
守らねばならない、命を。
与えなければならない、生きていく力を。