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弁天の日吉・捕り物事件簿①  作者: shiroikaze
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エピローグ

御茶之水の一角に隣接する御茶之香に住まいして、御茶之香西斉と名乗る当代随一ではないが、随ニか随三の絵師が、宿下がりした日吉を、一枚絵にした。

しかも、鯔背な若者姿と、可憐な弁天様の二枚組みが評判となり、飛ぶように売れた。

以来、山王の申し子、「弁天の日吉」として、江戸中に知れ渡った。


水茶屋にでも出ているなら、一目見ようと、押すな押すなの大盛況になるだろうが、本人は、捕り物が面白くてやりたがる。

もっとも親は大反対。


山王祭りも無事に終了したある日のこと、本人はどこ吹く風とばかりに、鯔背な若者姿で今日も町内を見回っていた。


一人の虚無僧が近づいてくる。


虚無僧こむそうとは禅宗の一派である普化宗の僧であり、剃髪しない半僧半俗の存在である。

虚無僧の様相については、

「尺八を吹き喜捨を請いながら諸国を行脚修行した有髪の僧」とされており、「多く小袖に袈裟を掛け、天蓋という深編笠をかぶり、刀を帯した」と伝えられている。

深編笠に顔を隠し、偈箱げばこは、江戸時代には、天皇家の裏紋である円に五三の桐の紋が入っており、よく知られている「明暗」などとは書かれてはいなかった。


小刀だけを腰に帯び、手に尺八と刀袋に入った小振りの刀を持っている。


日吉の目の前にたち、

「弁天の日吉殿か?」


別に危害を加えられるとは見えないが、用心しなから答える。

「そうですが、なにか?」


「勝手使いで申し訳ないが、故あって顔を出す訳にはいかぬゆえ、貴女にお願い致したい。」

虚無僧は、刀袋ごと日吉に持たせた。

「これを、近藤八郎殿に、お返しして下さい。」

「えっ、近藤様に・・・」


虚無僧は深編笠を持ち上げ、顔を見せた。


「あっ!!」

そこには、髷を切り落とされた風間党の吉川友衛門の顔があった。


第一話 了




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