エピローグ
目の前の信号が青になり、それを待ちわびていた大勢の人たちが一斉に広い横断歩道を渡っていく。
俺も遅れまいとその流れに乗る。
やはり都会の人混みは苦手だ、そんなことを考えながら俺は空を見上げた。
その人混みの中に帝京夢ランドのおみやげ袋を持っている子供がいるのが見えた。
両親に手をつながれ、嬉しそうな顔で笑いながら歩いている。
俺は、去年夢ランドに行った時のことを思い出した。
折原があの後どうなったかは知らない。彼女とは一切連絡をとっていない。
連絡を入れてみようかとも考えたが、そもそも幽霊じゃない彼女と俺は何の接点もないわけで、彼女に幽霊だった頃の記憶が残っているのかも怪しいのであえてやめた。
それにあえてここで突き放すことで、自分の力で孤独の中から這い上がって欲しかったのだ。
「おーっす」
振り返ると、いつの日か相談に乗ってくれた友人が立っていた。
「金子がやっと戻ってきてくれる気になったとはな、待ちくたびれたぜ」
「まあ、たまにはこういうのもいいなって思ったんだよ」
友人がニタリと笑う。
「じゃ、行こうぜ。あっちでみんな待ってる」
友人はそう言うと早足で人混みの中へ歩いて行ってしまった。
俺も急いで追いかける。
「おい、ちょっと待――」
そう言いかけた時、俺の視界の隅にあるものが入った。
キラリと陽の光を浴びて光るもの。
綺麗な金色の髪。その持ち主は約1年前、目の前に現れた少女にそっくりだった。
俺はよく見ようと振り返る。
その金髪の女は人混みに紛れて歩いていた。
間違いない、そう思って声をかける。
「おーい!」
だが。
とっさに名前を呼ぶのはやめた。
彼女の隣にはもう1人、同じ年頃の少女が一緒に笑いながら歩いていた。
「おい、金子! 何してんだよ!」
人混みの向こうから友人が呼んでいた。
少女たちとはもうかなり距離が離れてしまっていた。
やがて、彼女たちは俺の視界から消え去る。
「ごめん、今行く!」
俺は、人混みに足を踏み出した。
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