10-襲撃-
襲撃・・・・・・終劇・・・・・・。
ひゃはははは。
朝は俺よりもいつも早く起きる虎郷の姿がその日は無かった。
最初は単に起きるのが遅いだけかと思ったが、玄関が開きっぱなしでそこに新聞が落ちてあった。
「連れ去られた・・・・・・わけじゃなさそうだな」
服を着替えてから外へ飛び出したようだ。
一体何故だろうか、という疑問とともに、冬の寒さを感じて玄関を閉じて、服を着替える作業に移ることにした。
新聞を掴んで、リビングの机の上において、どう突き詰めても最終的にジーンズとパーカーに落ち着く俺のファッションセンスによって着替えながら、一面の大きな記事を読んだ。
『刑務所・少年院 内部からの爆発 警察内部の犯行か』
・・・・・爆発?
詳しく読むと、昨夜、爆弾を作っていた少女が少年院を爆破する事によって脱出し、他の犯罪者も脱出させ、さらに刑務所まで破壊したらしい。
「・・・・・・おいおい・・・・・・」
少し寝るのが遅かったら昨日知っていただろう情報だった。
それにしても・・・・・・どういうことだ?内部から爆発って・・・・・・どうやってそんなことするんだ?
そして何だ・・・・・・この内臓をえぐるような嫌な感じは・・・・・・。
これが俺達に関わってくるってのか?
そして俺は、脱獄囚リストを見た。人数は警察の頑張りによって、7人に抑えられたようだ。
「・・・・・・・・・・・・!!」
これは・・・・・・。
「どうかしましたか?」
「おはよー。どした?」
雅と音河が服を着替えて出てきた。そうか、女子は部屋で着替えるのか。という感想を持ちつつ、俺と同じくらい早く起きる海馬の姿が見えないことを疑問に思って、左右を見渡す。
「ん?どうかしたのか?」
と、そこで海馬の登場。どうやら、全員集合らしい。
・・・・・・何か雅が海馬を睨んでいる。喧嘩でもしたのだろうか。
「あれ、ヒスイが居ないね」
「ああ。どうやら家を飛び出したらしい」
「飛び出した?どういうことですか?」
海馬から距離を置いたまま俺の横に立つ。
「新聞見てくれ」
「・・・・・・刑務所・少年院 爆破・・・・・・!?」
音河が目を丸くする。雅も睨んでいた目を強くする。視線は何故か海馬。
「で、それがどうかしたのか?」
海馬はやけに反応が薄いな。まぁいいけど。
「その脱出者の中に居るんだよ。木好一也・・・・・・虎郷の元恋人だ」
「こ・・・・・・恋人って・・・・・・。じゃあ、この間言ってた『本気で愛していた人』ってこと?」
そういえば、音河が仲間になってからそんな話をしていたような気がする。恋バナとしてだったか。
「・・・・・・そうか。つまり、そいつを追っていったってわけか」
「多分。だから俺は追いかけるよ」
「そうだな。俺も行こう。常盤と音河も付いて来い」
「了解ー」
と、気の抜けた返事で音河もついてくる。雅は黙ってついてきた。
そして玄関を出て数個の段差を降りて、扉を開ける。そして俺は右手を地面につけ―――。
「ぐおわ!」
海馬が上から落ちてきて、扉を通らず上を飛び越える。
「何すんだ!」
どうやら雅が海馬を蹴り飛ばしたようだ。
「ど、どうしたんだ、雅!?」
取り敢えずは雅に質問してみる事にした。
「・・・・・・違います。彼は正先輩じゃないです」
「は!?」
「私に対する呼称も違います。驚きが小さすぎます。起きるのが遅いです。違和感ばかりです」
「・・・・・・あっちゃー・・・・・・。ばれてやんの」
そして、海馬は立ち上がり、上の服を脱ぐ。
まるで、マントで、一瞬隠れた時に着替えるような速さで、早着替えを成功させる。
「って・・・・・・お前」
新聞をよく見ると書いてあった。
脱獄者
木好一也 長柄川里子 花咲満 長堂寺志楽 丹波龍馬 etc・・・・・・.
「花咲先輩」
「変装が役に立ったと思ったんだけど・・・・・・。どうも俺は演技は苦手みたいだな。細かいミスがある」
そう言って花咲は戦う態勢を取った。
「悪いけど俺は逃げる方向性をとらせてもらうぜ。3人も相手には出来ないからな」
「海馬はどうしたんだ!?」
「アイツには風呂場で寝てもらった。後ろから殴ってみたから動かないだろうな・・・・・・っと!!」
花咲は思い切り腕を振った。
先頭に居た雅はそれを受け止める。
「!!」
違った。狙いはそっちではなかった。
どうやら爆弾を隠し持っていたようで、俺と音河に向かって5個くらいの爆弾が来る。
「しくった!」
防御態勢を取れていなかった俺の目の前に飛んできた。
ドゴォ!
小さな爆発だが確かにダメージはある。
まぁ、当ればだが。
「ふぃー・・・・・・」
目の前には海馬が居た。爆弾の場所は彼の右横のブロック塀が壊れているので、まぁ、彼が弾いたと言う事だろう。
「海馬!?どうして・・・・・・」
花咲が驚く。
「花咲・・・・・・俺はどうやら気絶しなかったようだ・・・・・・。寝たふりしてみたら、お前が思ったより面白いアクションに出てくれて助かったぜ」
そして海馬は一歩ずつ近づく。
「く・・・・・・!」
花咲が背を向けて走り出す。が、それはかなわず、雅の足に引っ掛かってこけた。
「花咲」
「・・・・・・また、俺は負けたのか・・・・・・。まあいいだろう」
「・・・・・・運が悪かったな」
静かにそう言った海馬の拳は花咲の右頬を殴り飛ばした。
頭を地面にめり込ませて気絶した。