09-大人-
僕は大人と子どもの間を目指します。
・・・・・・いや、コナン的な意味じゃ無しに。
「・・・・・・なんでお前らまで勝手に捜査してんだ?」
警察署に到着して、3人の女の姿を見た俺はまずそう言った。
「貴方が一日で諦めて、別の行動を始めるはずが無いわ。どうせ1人で戦おうとしていたんでしょうけど、そうなれば私達も一緒に戦うわ。だって私達は彼が何と言おうと仲間なのだから」
虎郷が答える。音河と雅も同意するように俺の顔を見る。
「・・・・・・・・・・・・」
全く・・・・・・。
どうやら隼人は裏切っても諦められる事は無い上にとても愛されているようだ。
そんな俺達の様子を見た龍兵衛さんは少しイラついた顔で言った。
「・・・おい。話、聞きに来たんだろう?喫茶店行くぞ」
「どうしてですか?」
「俺が捜査しているのがばれたら色々と困る」
それだけ言うとそのまま外に出て行った。
喫茶店についてすぐに、
「じゃ、事件の理由ってのを聞かせてもらえます?」
と海馬が言った。年上に対する敬意のような物を何一つ感じられない。
「一ヶ月前、王城グループの会長であり、頭脳探偵の祖父である王城 椎名が病床についた。それが事の始まりだそうだ。犯人のうちの1人が口走った情報から、ここまでたどり着いたんだ」
「どんな情報だったんですか?」
「どうやら、今回の事件を起こしたのは幹部の人間らしい。その情報から、俺が頑張って捜してきた「仙波 周真」だそうだ」
さっきから地味に自分をアピールしている気がする。
が、その疑問は以下のように解決した。
「それ、龍兵衛さん1人で調べてないですね」
と、雅が言った。
「・・・・・・そうだな。警察として動いたのは俺だ。協力したのは今日元だ」
「今日元さんが・・・・・・!?」
そうか。さっきから、自分をアピールしていたのは、こちら側から質問させたのだろう。おそらく今日元さんの性格からして「俺が協力した事は隠しておいてくれよ」とかそんな事を言ったのだろう。だから龍兵衛さんは相手側から質問されるのを待った訳だ。
「回りくどい事しますね」
「何の事だか」
そう言って龍兵衛さんは話を続ける。
「口走った情報は幹部に頼まれた、ということだけだった。だから他の情報は俺と今日元の2人で集めた事になるな。じゃあ続けるぜ。
王城グループの社長であり、頭脳探偵の父、王城 鉋は今、新しい研究のために時間を費やしているようで、その社長は誰かさんに遺伝させたように、猪突猛進な節があるらしい」
誰かさんね・・・・・・。心当たりは1人しか居ないな。
「それで?」
「ああ。だから社長さんは研究に没頭中で気付いていないようだ。それで、幹部のやろうが勝手に行動を起こしたって訳さ」
「なるほどな・・・・・・」
納得は出来た。
「よし、行くぞ」
俺は宣言した。
「殴りこみか?」
龍兵衛さんが訊いた。
「今すぐにでも行きます」
「やめておけ。死ぬぞ。これから先は俺に任せておけ」
「警察は動けないでしょう。だったら俺達でやって見せます」
「別に警察で動く訳じゃない。俺の兄弟なら精鋭の警備員数人くらいは集められる」
「それもどうせ上からの圧力とかで行動不能でしょうね」
「どちらにせよダメだ」
「俺達の責任です。俺達でやります」
「子どもに責任もくそもあるか!!」
龍兵衛さんが珍しく叫ぶ。喫茶店の空気が凍る。静まる。
「子どもが死んだら悲しむのは大人だろう。お前は悲しむ人間の事を考えちゃいない」
悲しむ・・・・・・。
俺が隼人たちと仲間の関係を作らない理由も、身近な人間が死ぬ悲しみを少しでも減らすためだ。
でも、俺は他の人を考えていなかった。自分が大切ならばそれでよかったのかもしれない。
「子どもは大人に頼っていいんだよ」
そう言って立ち上がった。
そして会計を済ませて、俺達全員で店を出た。
「そういえば、どうして龍兵衛さんは俺の携帯電話の番号知ってたんですか?」
「この間隼人に会ったときに、『僕にもしものことがあったらこっちに連絡してください』って頼まれたんだよ」
「・・・・・・」
心の中で笑った。
何とまあ・・・・・・先を見透かしたやろうだな。
先走りもいいところだ。いい意味で。
「じゃあ、お前らは何もするなよ。俺は何とかしてメンバー集めるから」
「了解です」
と、取り敢えず返事してから
「今日一日はおとなしくしよう」
という考えになり、帰路へと足を向けた。
そして家について、電話で先生から無断で休んだ事を咎められたので、明日からしばらく休むと思いますと告げた。
それ以外には何事も無く、そのまま俺達は夕食と入浴を終えて早急に睡眠に入った。今回はWRには俺は行かなかった。多分皆も行ってないと思う。
明日は龍兵衛さんがどうであれ、襲撃に行こう。
そう思っていた。
次の日、俺達は思わぬ方向からの襲撃を受ける事になった。
朝起きると、虎郷の姿が無かった。