06-継承-
「ん?何だ、お前ら。急ぎの用か?」
と、WRで気の抜けた返事で返してきたのは東 諒その人だった。
「東先輩。訊きたい事が――」
「隼人のことだな。いいだろう」
見透かしたように東先輩は言うと、椅子を出現させて座り込んだ。
「何かあったらしいな。俺も聞きたい」
と、何も知らない今日元さんも話に参加して来た。
「音河と海馬が狙われた。それらに隼人と・・・・・・東先輩。あんたが関わっているかもしれない。俺達はそう考えている」
「そうだな。俺と隼人は関わっている。が、それだけじゃないな。あいつらは、嘉島と常盤も狙ったはずだ」
「・・・・・あれもか・・・・・・」
「それが、アイツらのやり方だったわけか。やれやれ・・・・・・どおりで隼人が・・・・・・そうか」
「どういうことだ?」
「それはこっちの言いたいことだな」
東先輩はそう言って俺を睨む。
「アイツがこうなったのは仕方が無い。でも、アイツは不器用なりにヒントを出していたと思うぜ。助けてほしかったのかどうかは分からんねぇけど、少なくとも後のことは嘉島や虎郷、音河、海馬、常盤・・・・・・お前ら全員に託したはずだ。だとすれば、アイツは間違いなく、ヒントは嘉島・・・・・・お前に多く与えられていたはずだ」
「ひ・・・ヒント?」
何言ってんだ?
俺に・・・・・・アイツが・・・・・・助ける?
「何言ってんだ?東先輩」
心の中で呟いた事を今度は口に出した。
「分からないならそれまでだ。だけど、1つ忘れないでほしいのは、アイツはお前らを守るためにお前らを捨てたんだ」
「捨てた・・・・・・!?」
何だ、一体何が起こってるんだ?
いかん・・・・・・脳みそキャリーオーバーだ。
「捨てたって・・・・・・どういうことでしょうか?」
俺の代わりに虎郷が質問する。
「そのままの意味さ。少なくともこれから隼人はお前らの前に現れない」
「どこにそんな根拠があるってんだ?」
海馬がそう質問すると
「さぁな」
と東先輩は答えた。
「さぁな・・・・・・って、隼人と一緒にいたんですよね?何か知っているんでしょ?」
音河が珍しく怒る様な言い方で質問した。
「何か知っているからってそれが答えではないだろう?答えは必ずしも目の前には無い」
「何を言ってるんでしょうか?ハッキリしてください」
東先輩の要領を得ない発言に雅が言った。
「威勢がいいな、新入り。そうだな・・・・・・今日元、テレビ出してくれ」
「まぁ、いいけど・・・・・・?」
首を捻りつつも今日元さんはテレビを出した。こういう大型な物は今日元さんに権限がある。椅子や机くらいは俺達でも意識的に出現させられるのだが、バーカウンターや飲み物は基本的に今日元さんの権限である。
閑話休題。
で、そのテレビの電源をつけると、緊急記者会見と書いてあった。
「・・・・・・そんな・・・・・・!」
画面に映っていたのは隼人。
そこに書かれてあったのは「王城グループ 次期社長」というプレートがあった。
「何かの間違いだ!そんなはずないよ!だって隼人は――」
そう言って音河は叫ぶが、その声は当の本人、隼人によって打ち消される。
「僕は次期王城グループの社長を継ぐことをここに宣言します」
隼人は強い意志を持った目で言った。