05-視線-
目ってのはどこを見てんのかね?
未来を見ろとか過去を見ろとか現実を見ろとか。
でも今、貴方たちが何を見ているかは分かるよ。
それから夜まで、俺と虎郷は病院に居た。
運良く一命を取り留めた海馬は、それでも気を緩められる状態ではないらしい。
隼人はあのアナウンスを聴いたら、先ほどまでの冷静さが嘘のような顔つきになり、走って病院を出て、車に乗った。ということは東先輩も一緒と考えていいだろう。
また音河は明日には退院できるらしいので、今は動く事の出来る状態にある。
だがそうは言っても俺達に何か出来る事なんて無いので今はこうして動く事も出来ず、海馬の病室前のソファーに座って、人を待っている。音河は退院の準備中。
「何で・・・・・・こんなことに・・・・・・」
「私も海馬君のあんな未来は見えてなかった・・・・・・。王城君への怒りで周りを見ていなかったのかもしれないわね」
「・・・隼人か・・・・・・」
確かに虎郷の言うとおり、アイツの行動はおかしい点が多い。しかし、それでもアイツが事件に関係しているとは限らないわけだが、アイツが事件を知っているという可能性は高い。
「虎郷さん!奏明さん!」
叫び声が聞こえて俺はそっちを振り向く。
「雅。叫ぶな。一応病院でしかも夜だ」
「あ、すみません」
待ち人は雅だった。
「今までどこに行ってたんだ?」
「一昨日のことが気になって、私なりに手がかりを探していたんです」
「一昨日?・・・あ」
時計を見るとてっぺん回って、次の日になっていた。
俺と虎郷が警察署を訪れたのが10時くらい。それから話を聞いて、警察署を出たのが1時くらい。
音河の事故があったのもそのくらいだから、それはつまり、2時くらいから病院に居る事になる。
「・・・とにかく、雅ちゃんは海馬君のところに行ってあげて」
「分かりました」
雅は病室に入った。
「俺達はもしかして・・・・・・」
「間違いなく狙われているわね。何者かに」
「それを知りたいわけだけど、そのためには隼人が必要だけど」
「その彼が非協力的」
「万事休すか」
「断崖絶壁ね」
いまいち緊張感も無く話していると、
「さっさと退院するぞ」
と海馬が部屋から出てきた。
「か、海馬?大丈夫なのか?」
「あぁ。予想外の事態に俺の能力が化学反応を起こした」
「予想外の事態?」
「説明するつもりは無いから、想像しろ。それが答えだ」
「で、どうしてそんな急いでいるのかしら」
「雅が見てきたことによれば、隼人は東先輩と一緒に行動しているようだ。もし隼人が今回の事件に関わってるんだとしたら、東先輩が何か知っていると見て間違いないだろう。そしてアイツが今居る場所と言えば・・・・・・」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
俺はそこで思考を止める。
音河もちょうどやってきた。
「お前ら・・・・・・隼人を疑ってんのかよ」
「そりゃそうだ。今一番怪しいのはあいつだからな」
「そんな・・・・・・おかしいよな?音河」
「・・・・・・」
その音河は黙っている。
「お、音河?」
「私を呼んだのは隼人だった。もし、私たちを故意に狙う連中が居るんだとすれば、私を呼び出した隼人は・・・・・・」
「そ、そんな・・・お前ら・・・・・・」
仲間じゃなかったのかよ!
そう叫びたかった。
だが出来なかった。別に、夜だったり病院だったりとかそう言う理由じゃない。
俺だけは仲間と見ていない・・・・・少なくとも俺は皆を仲間と呼んでいないから。
だから俺はそう言うことはできないのだ。
「・・・いずれにせよ、早いとこ退院しなければなりませんね」
「何でなんだ?今すぐじゃないとダメな理由が――」
「まだ分からないのか?今、この現状で東先輩が居るところはWRだけだろう」
「だから?」
「東先輩が共犯だとすれば、あの人を傷付けるにはそれ以外の方法はない」
「・・・・・・まさか!」
海馬は頷いた。
「今日元さんだ。刑務所に居るあの人を狙うにはそれ以外の方法はない」
画面。