01-王城-
さって・・・面白い世界で行こうか。
王城隼人は世界有数の財閥グループである、王城グループの人間である。それは気っても切れない関係にある。王城はそれが嫌だった。
金持ちであるということや上流階級の人間である事だけで、媚びへつらう大人たちや妙な目で見る同級生。あるいは、それを迫害しようという人間達。自分が王城グループの人間であるということだけで決まってしまった未来。だから、彼は同意見を持った虎郷を助け、同じ境遇に居た音河を助けた。全ては王城が王城であったが為だろう。
ともかく。
彼はそんな王城を嫌っている。だから、彼は堂々と宣言したのだ。「王城を越える」と。それは、王城グループの前でもそういったし、音河財閥の前でもそう言っていた。そして何より俺を引き入れるために彼は「君を利用する」と宣言した。それと引き換えに俺は願いを叶えてもらう約束をしたのだ。
隼 に 人 と書いて 隼人 。
彼は自分の名前をつけてくれた事だけには親に感謝している。彼はその由来を聞いたときにそう思った。全てを越えようという意識がそこにはあるのだ。
だから彼は手に入れた。最強の能力を。「シンキング・キング」というアクターを。
それは、情報があれば何でもできる能力。目的のために手段を見つけられる能力。もちろん穴はある。だがそれでも彼の力は異常なのだ。
そもそも彼がその能力を手に入れたのは、迫害を受けた時だったそうだ。
僕は一体何をすればいいのか。どうすればいいのか。何が足りないのか。何がおかしいのか。
僕は一体何が悪いのか。何をしてきたのか。どこにあるのか。いつ見つけるのか。
決して見つからないのか。どうして見つからないのか。いつもそこにあるのか。
何もしていないのか。
そういう希望や願望、欲望とは違う別の何か。意識や考えじゃない。
それは絶望から生まれたのだろう。
彼は自分が王城として生まれてきた事は、嫌だけど悪くは無いと言っていた。
「神様は生まれてくる場所を選ぶ。だから僕には選ぶ権利は無い。いや、それは人間全てに適応する事実なんだけど」
いつか隼人はそう言っていた。
「だとすればこれは運命なのさ。僕は王城を越えるために生まれてきたのさ。その権利を与えてくれた事を僕は光栄に思うよ。そして、僕をそういう風に育ててくれた両親にも感謝している」
神様から与えられた使命。迫害から逃れるために導き出した絶望。自分の走るべき運命。
それを彼は神様から与えられた権利といっていた。
「あと、君みたいな人間に会えたことかな。僕はとてもいい気分だよ。君みたいなのには君だけだったから」
そういわれて俺は何と答えたろう。
照れくさくて笑った気もする。馬鹿か、と一蹴した気がする。或いは同意したかもしれない。
そんないつか忘れるようなことはどうでもいいのだ。
この世界が始まったのは12月16日金曜日
それから約一週間後の12月24日土曜日。クリスマスイブの夜だった。
王城グループ本社の屋上、ホワイトクリスマスの雪だ。電灯は明るくは無い。
風が強く、雪が凍てついて痛いが俺達はそこに立っていた。
「隼人・・・・・・腕引きちぎってでも帰るぞ」
「奏明・・・・・・君をそう呼ぶようなときがくるとは思わなかったよ」
その言葉が終わると、待ち受けていたように雪が止む。
そして運命の乱戦が始まってしまったのだった。
俺達は失ってから気づくんだ。この世界の存在に。
いい加減に僕も真面目に解説とかしようかな。