26-Solicitation-
26話「勧誘」
今日のことを書いても仕方がないことはわかっていますが、題名にもちなんで、皆さんを勧誘させていただく事をあらかじめご了承ください。
現在、東日本大震災の被害が増大しております。様々なサイトで、メッセージを送ったり、募金活動が行われたりしています。はっきり言って、絶体絶命の事態です。自らに何もできないというような悲観的な意見を出さずに、何か1つでもできることをすることを、ただの1中学生の分際でお願い致します。
さて、いつも通りのことではあるが説明しておくべきだろう。
あの後、龍兵衛さんを呼んで「READ TALE」のメンバーを全員引き渡した。最初は、こんな奴らが・・・と驚いていたが、冷静さを取り戻して気絶したメンバー全員を護送車へと入れた。で、今はWRで今日元さんを前に隼人が立っている。
理由は、研究材料である常盤雅をWRへ入れようとしているからだ。
「彼女はタダシ君の大切な人です。もしも彼女を仲間に引き入れなかったら、「READ TALE」の残党に襲撃されてしまう可能性があります」
「でも、お前のわがままをそんなに受け入れられないし・・・・・・」
「僕らの仕事はアフターケアまで担当しなくてはならないのです。僕らには責任があります」
「でもその子は強いんだろう?俺達がそこまでしなくたって――」
「今回の話は聞いているでしょう。油断する可能性があれば、その隙を突かれます」
「んー・・・・・・」
「頼みます。彼女の存在はソウメイ君たちに必要なんです」
「でもなぁ」
説得に対してしり込みしている今日元さん。後ろでは東先輩が背もたれが伸縮する椅子にゆっさゆっさと座っている。俺はその様子を眺めていたが、このままでは話が前に進みそうも無いので、必殺技を使うことにした。
「今日元さん」
「ん?」
「彼女を仲間にすれば、海馬が今日元さんにちょっかいを出しにくくなります」
俺の発言に今日元さんと東先輩が反応する。
「どうやら海馬は彼女を苦手としている節も存在するみたいです。今日元さんを口説く事は難しいでしょう。あの2人は付き合っているはずなのですから。それは東先輩にとってもいいんじゃないですか?なぁ隼人」
「あ・・・あぁ。そうですよ。どうですか?今日元さん」
「そうだな・・・・・・。まぁ、お前のわがままも聞いてみるか。嘉島も言ってるし」
と、俺達からしたらあからさまに責任転嫁することで話は落ち着いた。
東先輩の車に乗って別の場所へと移動する。
「・・・・・・助かったよ。ソウメイ君」
「気にすんな。でも、何であんなに必死だったんだ?お前にしては珍しいよな」
「ああ。さっきも言った通り、君らにとって彼女の存在は必要なんだよ」
「君ら?僕らじゃなくて?」
俺がそう質問すると、隼人は にこっと笑って前を向いた。いや、答えになってないから。
そこで俺は思い出す。そういえば、思わずさっき仲間って言ってしまった。そういう言い方は気に入らなかったのに・・・・・・。もしかしたら隼人はそれが狙いだったのかもしれない。だとすれば何と見透かした奴だろう。
「隼人」
東先輩が言うと
「分かってるよ。もうついたね」
と、簡単に答えてから外に出た。今の言葉で何が分かったのだろう・・・・・・。
そう思ったが、とりあえず俺は隼人に次いで車を出た。
俺達が来たのは例のダンスクラブのビル。警察の出入りが見られるが俺達がそんなに気にする事は無い。
「ここに海馬達を集めてるんだよな?」
「いや、タダシ君がここにいるというのは分かっているんだけど、他の人は偶然集まったらしい」
「偶然?」
「いや、多分偶然じゃないんだろうけど」
そう言って隼人は階段を黙々と上り始めた。俺も続いて上っていく。
ここで、この間隼人がみんなの前で言っていたことを紹介しておくべきかもしれない。隼人も俺と話す気は無いようだし。
ターニング・ポイントとは、回転の能力らしい。それは脳の回転力でもある。だから誰かの予想をはずすほどの「転機」を持っているのだ。そして、彼女の場合は動きにもその能力が加算され、ダンスクラブに所属していた事から、軸や運動神経がしっかりしている。だからあそこまでの風が起こせるのだ。これはとても貴重なタイプらしい。ターニング・ポイントはどちらかと言えば頭脳タイプ・・・発想力やIQに代表される「知能指数」が高くなるらしい。が、それと同時に常盤雅は攻撃型に転換されている。そう言えばターニング・ポイントという言葉には「転換点」という意味があった。だからこそ、隼人は研究材料として彼女を仲間に引き入れたかったのだろう。
と、そこで5階に到着。その階にある「休憩所」に海馬はいるらしい。
「・・・・・・ん?」
「どうしたんだい?ソウメイ君」
「いや・・・・・・何か妙な空気が流れている」
「妙な空気?」
そこまでで、休憩所に到着すると
「嘉島!」
と海馬が走ってきて俺を盾にするように後ろにすがり付いてきた。
そしてそれを追って来た虎郷と音河が
「どきなさい。貴方もろとも突き刺すわよ」
「それは女子の敵だよ!」
と、何とも物騒な発言をした。
「えーっと・・・・・・・」
俺はとりあえず隼人を見る。
「・・・・・・」
隼人は黙って肩を竦めた。
僕らに出来る事を捜しましょう。被災者側の方々がこれを読んでいる可能性はきわめて低いですが、悲観的にならずに、一日でも長く生きられるように前を見据えていてください。明日は絶対に来ます。