22-Elegance-
22話「優雅」
正式には僕が出したかった意味ではないので、あとがきで紹介しますね。
俺達は取り敢えず全員を気絶させると言う方法で勝利を得た。
「響花!急げ!後5分だ」
隼人はそう叫んだ。
「え・・・・・・何が?」
「何かのタイムリミットが、だ!恐らくそれを解決するための何かを長柄川が持ってる!」
「何で私が?」
「僕が女子の体を触るわけには行かないだろう!」
「は、はい!」
凄い剣幕の隼人に音河は思わず丁寧な返事をする。
「・・・クスリだ・・・」
海馬が倒れたまま言った。
「ビンに入った・・・・・・緑色の液体がある。ソイツが必要なんだ・・・・・・」
「・・・・・・あった!」
音河がそれを持ってこちらへやってきた。
「海馬君。誰に渡すかはしらないけど、行ってきたほうがいいよ。君に行ってほしいな。私としては」
「あぁ・・・・・・。ゴメン、皆」
海馬が、それを受け取って歩き始めた。入り口に向かって。
「・・・・・・!」
俺は、長柄川の方を見た。それは俺だから感じられたかすかな気配。
「長柄川が起きた!」
という俺の事実報告と
「彼を撃ちなさい!」
という長柄川の叫び声が同時にその工場に響き渡った。
隼人が目を丸くする。この場合は驚きではなく、失敗したことに愕然としている可能性のほうが高いだろう。
そして・・・・・・。
・・・・・・・・・。
発射音がしない。空砲のような音すらしない。
「・・・・・・どういうことだ!」
花咲が起き上がって叫んだ。そして同時に自分が拘束されている事に気付く。
俺達・・・・・・敵味方含めて見たものは、
2階で倒れている狙撃手たちだった。
「・・・・・・お前ら!一体何をしたんだ!」
丹波も起き上がってそう叫んだ。
「・・・・・・ソウメイ君。何かしたのかい?」
「音河じゃね?」
「火水じゃない?」
「王城君でしょう」
1周回ってきた。つまりこの中にはいないだろう。ということは・・・・・・。
「海馬か?」
「・・・・・・」
俺達の質問に海馬は黙っている。
いや、顔を青ざめている事から聞こえていないようだ。
だが、あの表情は不安や焦燥ではない。どちらかと言うとそれは、驚きと恐怖・・・・・・。
「くっそ」
「アイツか・・・・・・」
「あの状態でも私たちの前に立ちはだかるのね・・・・・・」
花咲、丹波、長柄川は呟く。
「・・・・・・だから・・・・・・怖いんだよ・・・・・」
海馬は呟く。こちらに聞こえるか聞こえないか程度の声で。
「俺の能力を無視できる・・・・・・予想できない行動ばっかりだから・・・・・・」
そのまま一歩下がる。
「だからこそ・・・・・・なんだけど・・・・・・」
彼が口を噤んだと同時に、2階から何かがやってきた。
その何かは言った。
「正先輩はいつも元気が無いように見えます。どうしてでしょうか?私はどんな状況でも元気いっぱいですよ?」
その何かが物語りの元凶で鍵で、そして海馬の固い意志だった。
「・・・・・・雅・・・・・・」
ようやく今回の章の「この世界」の登場です。お楽しみに。
「雅」というのは、日本独特なので、「優雅」という意味にしましたところ、意味が優美さと同義だったので、題名はそちらにさせていただきました。