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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第四章 回り廻るこの世界
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20-Genius-

20話「天才」


人間は完璧じゃないし、完璧な人間は居ないんだよ。


何か長所がある人には1つは短所があるらしい。


貴方が完璧だと思う人でも絶対に短所があるんだよ。

「・・・・・・面倒だね」

「あなたの速さほどではないわ」


 先鋒の戦いの最中に居た虎郷と長堂寺の闘いを(過去と未来を)中継してお送りしています。

 つまりは、虎郷の戦いだ。

 だが、今回は能力等の余計(?)な物が入る余地は無い上に、無駄な会話も少ない。

 純粋に戦闘を楽しむような人種・・・そして戦闘に向いている人種の闘い方だということだ。


「そろそろ諦めてくれよ・・・・・・」

 言葉のやる気の無さを全く感じないレベルでの猛攻。

「私が諦めるのを諦めなさい。貴方は何でも早いのでしょう?」

 同じく静かに言いながら、全ての攻撃を手や足で押し返すように防御と攻撃を同時進行する。

「諦めるのも・・・・・・早いはず!」

 先とは違い、叫んでから思い切り長堂寺の拳にぶつけ返す。

「・・・・・・」

 長堂寺はそのままの勢いで空中に吹っ飛ぶ。

「・・・・・・諦めが早いことは否定できないけど」

 空中で1度回転して、地面に着地


 するころには既に虎郷との距離を縮めていた。

「ダンスは諦める事は無かった」


 そしてそのまま勢いで虎郷の腹を右足の蹴りで突く。

 だが虎郷は黙ってそれを両腕の二の腕部分で、長堂寺のふくらはぎを上に向かって飛ばす。

 そして若干崩れたバランスを狙い、右足を長堂寺の残った左足に向かって横薙ぎに振る。

 しかし、そこも流石ダンサーと言ったところか、横から攻撃された足を流れに逆らうように筋力でそのまま立たせて、上に向かって強制退去させられた足をすぐさま戻して、結果、両足で虎郷の足を挟む。

「くっ・・・・・・」

 虎郷が声を思わず声を上げる。

 長堂寺は体をその状態でねじる。靴が引っ掛かり、そのまま虎郷の体が宙を舞う。

 そして虎郷は地面に叩きつけられた。

「か・・・・・・はッ・・・・・・!」

 衝撃を放出するべき場所が無かったためか、口から空気が漏れる。

「まだまだいくよ・・・・・・」

 そう言って、長堂寺は虎郷の体を蹴り上げ


 られなかった。

 虎郷はその状態から長堂寺の首元に手を伸ばす。

 それこそ突然思いついたように。忽然と思いついたように。

 しかし、あらかじめ予想したかのような速さで手が伸びる。長堂寺がその位置に来た瞬間を、目を瞑ったままでも分かったように。


「見えてるのよ。私には」

「・・・・・・」

 黙って、長堂寺が力を緩めた。

「諦めたの?」

「その辺は弁えてるよ・・・・・・」

 言ってから、そのまま倒れるような勢いで折れ曲がる。そして


 そのまま虎郷の体を前方へと投げ飛ばした。

「・・・・・・諦める事を諦めるのを待つのを諦めるべきだ」

 ややこしいことを言いながら長堂寺は虎郷を追いかける。

「そう・・・・・・。じゃあいいわ」

 言って虎郷は、着地しながら後ろに向かって拳を振るった。

 それは、そこにすでに追いついていた長堂寺の顔面に直撃した。

「貴方の行動・・・・・・これから先は見えているわ」

「・・・・・・ギリギリのスピードで切り替えしてみせるから・・・・・・それは無理だ」

 そう呟いてバク転で着地して態勢を整えた。

 それと同時で虎郷が追いつく。その虎郷の肩の服を掴んで足を虎郷の腹に突きたてた。が、思い切りではない。それは所謂支点になるべき足。そのまま、虎郷の体を後ろに向かって受け流す。

 巴投げだった(分からない人は検索!柔道の技)。

「・・・・・・!」

 しかし虎郷の動きは先ほどまでの勢いとは違って、急にスピードが落ちる。というよりは、わざと重力をかけているようだ。

「見透かしているのよ。未来を」

 そう言って虎郷は、投げ飛ばそうとする長堂寺を見下ろす態勢で止まった。

「どうやら貴方は、スピードの分攻撃力がないようね。もしかして衝撃の分散スピードも早いのかしら。まぁいいわ。これで終わらせるわ」

 虎郷はそう言って、右腕を振りかぶった。

 そしてそのがら空きの腹に向かって拳を振るう。

「しまった!」

 珍しく早くしゃべって、肩から手を放して防御に向けるが、その所為で、重力加速度も拳に加わる。

「貴方の防御は意味を持たない」

 静かに虎郷は長堂寺に吐き捨てて、拳を真っ直ぐおろした。


「・・・がッ・・・!」

 口から胃液の混じった血が飛び散った。そして一言

「僕は・・・・・・」

 といって、気を失った。

 何が言いたかったのか、何を伝えたかったのかはわからないが、1つ分かった。


「貴方・・・・・・一人称は「僕」なのね」

 文字通り、最初で最後の一人称だった。



それでも完璧な人がいたとしたら、


それは人間らしさという長所をなくしているから、すでに完璧じゃないのさ。

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