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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第四章 回り廻るこの世界
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19-ROCK 'N' ROLL-


19話「ロックンロール」


 さて、いくら語り部を放棄したとは言っても、何もかも無視すると言う方法をとるわけにはいかないだろう。俺としては、このまま3人の戦いを紹介しない方法も一手だとは思うが、まあ、語り部を担当していた以上は責任は俺が問われるのだろう。なので、3人の戦いを紹介するが、俺みたいに長くド派手にはならないだろう。


 てな訳で、音河の戦い方を紹介しておこう。あぁ、心配しなくてもここも、まとめで担当している「俺」が、第三者目線として話をしよう。


「貴方が、丹波で間違いなさそうね」

 音河はギターを構えなおす。

「・・・・・・まぁ、俺っちが丹波な訳だが・・・・・・。ぶっちゃけて良いっすか?」

 丹波が頭を掻きながら言った。

「ぶっちゃけ俺っち・・・・・・興味ないんだよ。この闘い」

「・・・・・・」

 音河は強くギターを握りなおす。

「そう身構えんなって。別に油断させようなんて魂胆じゃねえから」

 丹波は態勢をリラックスするように猫背になる。

「この闘いってさ・・・・・・。単純にあの長柄川の私利私欲のためなわけ。海馬を自分の物にするための所謂、リーダーのわがままなのさ。あ、リーダーってのは『READ TALE』の・・・・・・って、知ってるか。まぁいいや」

 丹波は独り言のように話を続ける。

「さらにぶっちゃけちまったら、俺っち・・・・・・長柄川が好きなわけ。だから海馬をわざわざ引き戻すよりは・・・・・・ってわけ。だから偶然に見せかけて3回ぐらい殺そうとしてみたんだけど・・・。アイツはやっぱり運がいいな。俺としては迷惑な限りだぜ」

「・・・・・・」

 だから何?

 そう言いたそうな顔で音河が丹波を睨む。

「・・・・・・あぁ・・・・・・。もういいや。話し合いなんて何の意味もなさそうだ」

「そうよ。さっさと片付けさせてもらうわ」

 音河はギターのピックを構えた。

「ショック・ノート!」

「・・・・・・あ。見えた」

 丹波はそう呟いて、側転で避ける。

「超音波の一種か?いや、アレは衝撃波か。それにあのギター・・・・・・。やっぱお前らも俺っちらと同じか。皆気付いてるみたいだな。うん。よし」

 そこまで丹波は言ってから。



 高速で音河に近づく。

「!」

「ソイツは至近距離では利用できそうにないな」

 丹波はそのままの勢いで両足でギターを蹴る。正確には音河がガードして、その位置にギターが来ただけなのだが。

「・・・・・・」

 音河はもう一度ギターをかき鳴らす。今回は連発だ。


「うおわ!」

 しかし丹波はその近距離では、どんな運動神経でも避けられないはずの音符弾丸を避ける。

「俺っちの目と耳を舐めるなよ!俺っちは周りの空気密度との違いを見分けられる!つまり――」

「衝撃で揺らいだ空気を見分けられるからそれなりの距離なら避けられるってことね」

「その通り!」

 そのまま丹波は音河との距離を縮める。

「なら!」

 音河はギターのヘッドを相手に向ける。

「スリングショット!」


 ギターのヘッドから弦が伸びる。

 それはつまり、目がいいことや耳がいいことは何の関係もない事が最大の特徴である。 

「なんじゃそりゃ!」

 丹波そう叫びながらこけるように地面に倒れる。

 それだけでは格好悪いが、それが1メートルも無い距離でそれができると言うのは、十分の凄さである。イメージとしては、30センチの距離でドッチボールの玉を避けるくらいの難しさである。


「どりゃあ!」

 そのまま倒れた状態から右足を音河の腹を狙う。

「クッ!」

 その腹をギターでもう一度ガードする。


「元の出来が・・・・・・違いすぎる・・・・・・」

 音河はそう呟いた。

 そして思考を始める。

 一体どうやって勝てばいいのか。相性はともかく、あの運動神経と能力では攻撃が当る事は無いだろう。だとすれば、それこそ油断を誘うしかないだろう。

 だがどうすればいいんだろうか。

 その思考の間でも、丹波は攻撃を何度も向かわせる。もちろん音河は防戦一方になる。


「・・・・・・もう諦めろ!!」

 丹波は叫ぶ。

「俺の運動神経と能力がある限りお前は―――」

 コッ・・・・・・。

 彼女の――音河のような耳でなければそんな音も聞こえないような音が鳴る。

 が、丹波は

「!」

 驚くように止まる。過剰にその音に反応する。

 音源は、2回撃った衝撃波が当った先にあった工具が突然落ちてきたのだ。


「何だよ・・・・・・驚かせやがって」

 そう言って、丹波はもう一度こちらを向いた。

 それで音河は気付いた。

 彼は耳が良すぎるから、どんな小さい音でも聞こえるのだろう。だから、その音が奇襲だったときのためにいちいち大げさに反応しなければならないのだ。

 ということはそれで油断を誘えれば。

 そう思ったときだった。




「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 どこからかそんな叫びが聞こえた。



 嘉島だった。いや、正確には嘉島の攻撃で花咲が叫んだのだ。その痛みに対して。

 そして・・・・・・。 

 丹波は以上に反応した。過剰に反応した。


 そして音河はその穴を逃さなかった。

「スリングロープ!」

 音河は弦を縄のように伸ばして、丹波の体に巻きつける。

「しまっ――」

「ショック・ノート!」

 音河は衝撃波を放った。

 当然身動きのとれない丹波は後方に向かって吹っ飛ぶ。

「く・・・・・・っそ・・・・・・」

 そんな小さな声を吐いて、丹波は動かなくなった。

 その声もきっと、音河にしか聞こえなかっただろう。


「何とか・・・・・・勝ったよ」

 そう言って、地面にへたり込んだ。

 そこで気付いた。

 自分の姿がいつの間にか、ロックテイストの服装になっていることに。

「また・・・・・・制御できなかった」

 少し残念そうに音河は言った。



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