16-The Truth-
16話「真実」
真実はいつも1つ!
とは限らない。
「・・・・・・海馬君・・・・・・どうしてそこまですんの」
長柄川 里子が言う。そして海馬の髪の毛を引っ張る。
「早く諦めたらいいじゃない。そして私たちと一緒に行動すればいいのよ」
「・・・・・・ざけんな・・・・・・」
海馬は腹の奥から出すような声で言う。
「・・・・・・そうだよ・・・・・・。彼のことは・・・・・・あの子達に任せたんだ・・・・・・」
長堂寺 志楽が言う。
「戻ってきてくれたら・・・・・・立つ瀬がないよ」
ドガッ!
長堂寺の蹴りが海馬の横腹にヒットする。
同時に長柄川は手を放したため、海馬の体は横に向かって飛んでいく。
「そういうな、長堂寺。アイツは利用できるだけの価値がある。俺は賛成だな」
そこに居た海馬の体を、花咲満は元の場所に投げ飛ばした。
「俺っちも彼を引き戻したいねぇ。それにコイツはアレがある限り、反抗はできないだろう」
丹波龍馬が長柄川同様に、髪を引っ張って言った。
「・・・・・・うっせ・・・・・・。さっさと・・・・・・助けろ・・・・・・」
「じゃあ、俺っち達の仲間になるのか?」
「・・・・・・誰が・・・・・・」
ドゴッ!
丹波が怒りの表情で、隼人を殴る。手は放さない。
「・・・・・・カハッ・・・・・・」
口から空気が漏れるような音。
海馬の限界が窺われる。
「もう殺しちまおうぜ?」
「嫌よ。彼は私のものにする」
どこから出てくる執着心なのかは知らないが、丹波の物騒なセリフを掻き消す。
「で・・・・・・どうするの?貴方が仲間になれば助けるわ」
「俺の・・・・・・仲間は・・・・・・アイツらだけだ」
「後15分よ」
「・・・・・・くっそ・・・・・・が」
・・・・・・もうそろそろ危ないか。
「・・・・・・ん?」
丹波がこっちを向く。そういえばアイツは目と耳が良いのだった。10メートル・・・・・・許容範囲か。
「・・・・・・妙な音がする」
「音?」
長柄川が反応する。
「何か金属を叩く音だ」
「金属?」
「あっちだよ」
彼が指を指す方向。それは――。
「・・・・・・扉?」
隙間風が入る程度に開いた扉。鍵が閉まっていてそこまでが限界だったのだ。
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
「・・・・・・まさか・・・・・・」
長堂寺が驚く。彼のようなキャラクターでは珍しい反応だろう。
「丹波君!誰がいるの?」
「待て、今から見――」
ドゴォォォォ!
見事に扉は開いた。というか、壊れた。
「なかなかの重労働ね」
蹴破った残骸を見て虎郷が言った。
「女の子にやらせるなんて、男の子としてどうなのか・・・・・・。私としては甚だ疑問だよ」
音河がギターを構えたままで言いながら前へと進む。
「しょうがないだろう。僕が時間をかけるより、2人の力で開けるほうが圧倒的に楽なんだから」
隼人は誰よりも先に、虎郷が蹴破った扉を踏みしめた。
「別に俺が変形させて入っても良かったんだけど」
お約束ながら、俺は順番に則って言った。
「さて、タダシ君」
隼人はそのまま扉の上を歩き、扉を越え終わった。俺達もそれに続く。
そして彼は決め台詞のように言った。
「助けに来たよ」
だって正しい事がひとつじゃないから。
正しい事が2つあれば、たどり着く真実はそれ以上ある。