12-The Explosion-
まぁいわずもがな。
僕ぅーが僕ぅーであるためにー♪
・・・・・・あと知らない。
「隼人・・・・・・すぐに来い」
俺は炎を真っ直ぐに見つめながら、隼人へと現状報告を始めた。
『・・・・・・どうしたんだい?』
「大変な事になった」
事件の発端は海馬だった。
というか。
「海馬が居ねぇ」
だった。
「一体どこに行ったんだ?」
「目を離すべきではなかったわ。彼が何かに怒っているのは間違いなかったのだから」
「じゃあアイツの失踪は、アイツの怒りと何らかの関係があるってことなのか?」
「或いは、それ以上かも」
「それ以上?」
探索を開始しつつ、俺は虎郷の言葉に疑問を投げかける。
「彼の怒りは失踪以上の何かを引き起こすかもしれない、ということ」
「・・・・・・」
つまり、虎郷はこう考えているのだろう。
海馬は怒りの矛先である人(或いは物)に対して、何らかの行動を起こす可能性がある・・・・・・と。
しかし。
「本当に海馬は怒ってんのかな」
「・・・・・・どういう意味?」
動きを止めて、虎郷はこちらを見る。俺も動きを止める。
「いや、虎郷の言っていることは、多分そうなんだと思う。けど俺にはそうは見えない・・・・・・いや、それだけには見えないんだよ。何というか・・・・・・悔しさとか寂しさとか・・・・・・そういう、他人への強い感情と言うよりは、自分への負の感情というか・・・・・・」
そんな俺の曖昧模糊な発言を虎郷は咀嚼するように考えた後、
「そう」
と言って、探索活動に戻った。
が、もう一度だけこちらを見て、
「私のは一種の勘。あなたのは能力に基づく確かな感情。どちらが正しいのかは一目瞭然でしょう?」
それだけ言うと、また探索活動を再開した。
「・・・・・・居ないわね。本格的に大変な事態かもしれないわ」
「確かに、虎郷の言うような心情――推測だったとしたら、アイツが何か行動を起こす危険性があるってことだからな・・・」
「私の戯言は聞き流してくれていいのよ」
「・・・・・・なんか怒ってる?」
気のせいだといいんだが・・・・・・。
・・・・・・。
「否定しない!?」
「・・・・・・」
「まさかの無視!」
どうやら怒っているようだ。そんなに自分の意見を否定された事がムカついたのだろうか?仕方が無い。ご機嫌を取るためには一体どうすればいいのだろう。こういうのは女子の扱いに慣れている海馬少年を・・・・・・捜さなきゃ!
いつの間にかループにはまっていたようだ。うーむ。事を丸く収めるには、やはり海馬の存在が不可欠だな。
そう思いながら、1階のロビーに到着した。
「あ」
さて、原因且つ、俺の救いの手がそこにはあった。てか居た。
「海馬」
「よう」
気楽にいつも通りの挨拶をした。
「急に居なくなってどうしたん――――」
「近づかないほうがいいぞ」
俺の会話を遮るように海馬が言った。
「どうしたの?海馬君」
「これだよ」
と、片手で1つのプレゼント仕様の箱を持ち上げた。
「これ、時限爆弾なんだ」
「なッ・・・・・・」
「あと5秒で爆発する上に、水銀レバーがかかってる」
「!」
俺と虎郷は同時に動いた。
俺は床を破壊して、虎郷は家具を念力で持ち上げる(?と思った方は、第1章を)。電車以来の、バリケードコンボだ。とか言ってる場合じゃなかった。
コミカルに言うと。
ぼかーーーーん。
という音を立てながら、そのプレゼントが爆発した。ギリギリバリケードが間に合ったという感じで、周囲の人々は助かった。が、その人たちの野次馬根性と叫び声の所為で、現状理解という場合ではなくなった。だから取り合えず、俺は携帯電話を取った。
「隼人・・・・・・すぐに来い」
でも僕が僕であるために必要なのは、
間違いなく、希望だと思う。