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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第一章 決まりきったこの世界
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06-蝋燭-

何でも最後に(笑)ってつけりゃいいんだよ。


明日は晴れかな(笑)?あいつは元気かな(笑)?

テストが近いぜ(笑)!景気が悪いぜ(笑)!

地球が滅ぶぜ(笑)!

とか何とか言って

全く笑えないよねぇ(笑)


「な・る・ほ・ど」

 と、隼人は俺達の話を聞いてそう言った。


 キャンピングカーで、俺たちの見た未来を話を聞いての感想だった。

「それにしても、貴重な体験だよ。『フューチャー・ライン』のアクターがどんな感じに未来を見ているのかが分かるだなんて。いいねぇ。君の能力は」

 隼人は俺に向かってそう言った。

「そんなことは、どうだっていいんだよ。さっさと、お前の調査結果を発表しろよ」

「は?調査ぁ?」

 と、間抜けな声で隼人は答えた。

「………ん?」

 俺は、聞く。

「ん」

 隼人は答える。

「…何の調査もしてないのか?」

「うん」

「じゃあ何してたんだ?」

「ツイッター」

「…………」

 こいつは・・・・・・・・・・・!!

「で、どこか分かったの?」

「うん?」

「場所よ。私たちが見た場所。分かったの?」

「うん」

「どこよ」

 虎郷がそういうが、隼人は答えずに、指を1本突き立てた。

「少し考えてみたまえ。頭を冷やしてね」

 そして、

「じゃあ、僕はこれで」

 と言って、キャンピングカーから降りた。

 次いで俺も降りる。



「何か用かい?」

「え?いや、ついて行くだけだけど」

「ダメだよ」

 ・・・なんでだよ。今までいつも一緒だったじゃないか!!

 とかいう悲観の叫びは無い。

「どうしてだ?」

「彼女のサポートを君には続けてもらう」

 そういって、

「彼女の能力には、君のサポートが必要だ」

 と続けた。

「ファントム・ダーツが生まれるような原因は、彼女の心に問題があるはずだ。それを見つけるためには、ロックを解除する事になるだろうから・・・君の力が必要なんだ」

「・・・・・・・・・ロックなら見つけたぜ。解除コードのキーは『火』だ」

「!・・・」


 ロックとは――


 人が無意識に心の奥底に隠している事、全力で隠さなければならない事。

 そして、その人の心を開けるための『キー』が俺には聞こえるのだ。

 しかし、能力に見合ってないのか、俺には『キー』を使って心を開く事ができない。

 『キー』に密接に関わっている既成事実『解除コード』を、推理しなければならない。

 それを、俺の代わりに隼人がやっている。

 彼の天才的能力なら、『キー』だけで『解除コード』を推理できるのだ。

 まあ。

 つまり俺がバカなのが悪いのだが。


「そうかい。OK。じゃあこちらの手の内も見せよう」

 と、携帯電話を開くと、

虎郷火水こざとひすいに関する記述]

 以下、文字数が10000近くあるので、表記を断念する。

「・・・・・・・・・何だこれ」

「ツイッターと僕の家にある書物とか、後は東先輩に手伝ってもらったり」

 俺は、そのまま携帯を返す。

「見ないのかい?」

「見たところで、俺にはわからないよ」

 そういって、俺はキャンピングカーに身を翻した。

「にしても、平和主義かつ、人道支援大嫌いなお前が、人に協力するとはな」

「・・・君とか、東先輩とか、今日元さんに感化されたのかもね」

「本当にそうか?」

「・・・・・・・・・」

 その反応に、俺は笑って、

「俺も推理力は無くも無いみたいだな」

「うるさいよ。それ以上は、侮辱と看做して攻撃に移る」

「はいはい」

「あと、これからどこかへ行く必要がないなら図書館に行っておいで。あそこは、僕が開けてもらえるように、今日元さんに頼んでおいたから」

「おう」



 そして、ここで隼人と別れて、俺はもう一度キャンピングカーに乗った。

「どうだ?」

 という俺と同時に

「どうかした?」

 という虎郷の声がした。

「「いや、別に」」

 今度も同時に答えた。

「東先輩、図書館へ直行してくれ」

「図書館?」

 虎郷が疑問を口にした。

「隼人がそう言うんだからいいんだよ」

「けどよぉ、流石に図書館も閉まってるだろう」

 と、東先輩が車の時計を指差しながら言った。針は数字の1で重なっている。

 つまり、9月10日の1時5分ということか。

「大丈夫。今日元さんが鍵を開けとくってさ」

「今日元・・・・・・?」

 とても不快そうな顔で東先輩がそう言った。

「チッ!いつも自分勝手に!」

 そして、ハンドルを握ると、爆走し始めた。

「3分で着く!」

「了解」




「ねぇ」

「何だ?」

「あなたたちの仲間って何人いるの?」

 虎郷がそう言うと、東先輩は

「仲間?俺たちは仲間なんかじゃないぜ!少なからず嘉島はな!」

 とイラツキで口調を変化させたまま言う。

「・・・どういうこと?」

「そいつは、俺も今日元も隼人も、さらに言えばお前のことも仲間にするつもりは思うぜ?」

 ・・・・・・・・・。

 俺は沈黙を守る。

「・・・私は、あなたたちを利用しているに過ぎないから、責めるつもりは全く無いけれど・・・・・・どうして?」

「・・・・・・・・・俺は・・・」

 ・・・・・・。

「詳しくは話せないけど、俺もお前と同じだよ」

「?」

「この人達を利用してる。あわよくば、お前もな」

「・・・・・・そう」

 淡白な女だった。いや、感情が少ないということなのだろうか。

 すると東先輩が、

「まぁ、俺たちも似たようなもんさ。お互いがお互いの目的のために、利用しあってる。でも、嘉島以外の俺たちは少なからずお互いを仲間だという意識はある」

 そして、

「でも、俺も今日元も隼人もお前さえ良ければいつだって仲間だと思えるんだぜ?お前が勝手に落ち込んで、皆を守ろうとしているだけだろ」

 と続けて、車は急ブレーキで止まった。

「着いたぜ。とっとと降りろ」







 キャンピングカーから降りて、すぐに東先輩は車と共にどこかへ爆走していった。

 それを確認してから、虎郷の待つ図書館内へと入った。


「さて、ここで何しろってのかな?」

 俺がそういう疑問を持っている中、彼女は「地域」のコーナーへ。

「おい何して」

「彼の趣旨は、きっと私たち自身に見た場所を確認させようという魂胆ね」

 と、俺の言葉を遮ってそう言いながら、地域の写真アルバムを取り出した。

「ここ最近の建物から探してみようかしら?」

「・・・そうだな」

 しかし・・・こいつと隼人は、物事の視点が同じのようだ。



 ・・・・・・・・・・30分程経過しただろうか。

「無いな」

「無いわね」

 地域の写真には、無かった。俺はともかく、彼女も無いと言っているのだから大丈夫だろう。

 いや、大丈夫ではないのか。

「建設物から探してみるか?」

「そんな・・・・・・不動産屋じゃないのよ?そんなものがあるはず無いわ」

 俺は、物件情報の本を取り出した。

「ここは、王城グループ管轄の図書館だぜ?」

「・・・・・・そうだったわね」

 少し溜め息交じりに彼女はそう言った。


 南区、東区、西区、北区、中央区。の5つ。

「どこにする?」

「俺は、東にするかな」

「じゃあ、私が東にするわ」

 東区のファイルを取った。

「・・・・・・・・・・」

 俺は黙って、西区にファイルを取った。

 北区、南区、中央区のファイルは、そこに置いたままにしておいた。


「ところで、あの未来見たとき、どう思った?」

 唐突にそう聞かれた。

「どうって?」

「どう思った?」

 尚もそう聞いてくる。

「・・・・・・・・・んー」

 少し考えた後、

「東先輩があそこまで険しい表情していたところから考えても、少し難題だったか・・・あるいは、焦らす要素がとても近くにあったか・・・・・・。なんだかんだであの人、とっても優しいんだよ」

「・・・・・・・・・」

「あと、お前がさっきみたいに震えてたな」

「・・・・・・さっき?」

「え?あ、あぁ。あの黒いパーカー来た人にすれ違った時・・・・・・・・・!!」

 彼女の顔が青ざめていく。

 ヤバイ!また震え始める!

「大丈夫だ!」

 思わず叫んだ。



 どうやら彼女の場合、隠している内容はトラウマのようなもののようだ。思い出しそうになると、拒絶反応が起こるようだ。そして、記憶を無くす。


 俺は、彼女の正面から、隣の椅子へと移動した。

「・・・・・・・・・落ち着いたか?」

「・・・ええ」

 しかも、自分が何故取り乱していたのかも、分からず、しかし、取り乱していたこと自体は、覚えている。そんな様子だった。

 重症だな・・・。


「お前はどうだったんだ?」

「何が?」

「あの映像だよ」

「あぁ・・・」

 あごをつまんで、少し考えると

「あの建物は、見たことがあるような気がする。懐かしいような・・・そんな感じ」

 そう言った。


 「笑顔」で。


「そうか」

 よくよく考えると、こいつの笑顔は初めて見るな。

「あなたはどうなの?」

「ん?」

 あぁ、そうか記憶はないのか。

 しかし、さっきの禁断の言葉をいうわけにもいかない。

「あ」

「どうしたの?」

「あの、燃えている建物だけどさ」

「?」

蝋燭ろうそくに見えた」

「ろうそく?」

「そう、蝋燭」

 周りから落ちる、建物の欠片とかも・・・・・・。

「ろう・・・・・・そく・・・」

 な!また、禁断症状か?

 と思ったが、そうではなかった。

 彼女は本棚から、中央区の本を取り出した。

 そして、そのまま床で、あるページを開いた。

 俺はそれを見て、

「これだ!!」

 と、思わず叫んだ。

「・・・・・・やっぱり」

「何で?」

「・・・私もあなたと同じように、これを見たとき思ったのよ。蝋燭みたいだって」

 そういいながら。

 彼女はまた震え始める。

 しかし、さっきとは違う。

「どうかしたのか」

「その写真の建物・・・・・・」

「?」

 高級マンションで、26階建て。屋上は、1つの小屋がある。


「こいつは!!!」

「そう、私の家」

「!!」

 俺は、携帯を取り出して。

 俺たちは、同時に走り始めた。

「東先輩!」

『おう!』

 以心伝心とは、とても便利である。

 仲間じゃないけど。


 図書館を出たと同時に、黒塗りの車が、後部座席のドアを開けたまま来た。

「乗れ!」



「すぐに、さっきのとこまで!」

「3分だ!」

「2分で!!」

 虎郷は、震えている。


『PRPRPRPRPR』

 携帯電話がなり始めた。

「隼人?どうした?」

「・・・蝋燭だよ」

「!!」

 それはつまり、

「もう燃えているのか!?」

「!!」

 俺の声に、虎郷の震えが勢いを増す。


 その時だった。

 窓の外。

「蝋燭・・・!」

 マンションの最上階から、下3つまでが、燃えている。



 俺たちは車から降りて、すぐにその蝋燭を見上げた。

「隼人!」

「・・・・・・僕が来た時には、既にこうなっていたよ」

「・・・・くっそ!」


 屋上の小屋は、どうなったのだろう。

 あそこには、虎郷の思い出と、大切な人がいたはずなのに。

 そう思っていた矢先に。


 1番上から、何か落ちてくる。

 それは紛れも無く、炎の中にあった。

 彼女の部屋で、家であり、帰る場所だった。

 それが。

 今。


 僕たちの。


 目の。


 前で。


 落ち「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 彼女は叫んだ。





 その後この炎が、水で消える事は無く。

 風に吹かれて消える事も無く。

 1番下の芯まで、溶かしきった。




 蝋燭としての役割を果たすように。





夢って自由だよね。


交通事故で死んだ彼女が、やさしく笑いかけたり

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