10-Doubt-
10話 疑う
「海馬君、どこに行こうとしているの?」
「メンバーに会いに行く」
「そんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫だ。問題ない」
「ふざけてないで真面目に答えて」
「・・・・・・大丈夫だ。お前らをアイツらに会わせることが目的だからな」
海馬は言いながら、話しかけてほしくなさそうに歩くペースを上げた。
すると虎郷は俺の横に来て、
「・・・海馬君は何を怒っているのかしら・・・?」
「・・・・・・どうやら長柄川って人は、海馬の彼女らしいんだ。だから・・・・・・」
「なるほど・・・内心穏やかではないということ」
「まぁ・・・そういうことだろうな」
「それもそうね。私でもそんな状況なら・・・・・・」
そこで虎郷は口を閉ざした。
俺は思い出す。木好一也・・・・・・彼女の元彼で、彼の生きがいの根源だった存在にして、彼女をこんな風に作り上げてしまった青年・・・。虎郷との出会いにもなった事件。それの犯人が木好一也・・・・・・。
あの時、彼女も犯人であった木好さんに対して、怒りの気持ちと悲しみ・・・・・・そして紛れも無く、愛があったはずだ。
それがしっかりした物であったかは分からないけれど。
どちらかと言えば、歪んでいた。
と俺は思うけれど。
そんなことは俺はが言えることじゃないと、同時に思うのだった。
しばらくして、建物内の1つのホールに到着した。そこには今のところ1人の女性が居る。
「・・・・・・あ、確か、嘉島さん・・・・・・と・・・・・・そちらは?」
「虎郷です。こんにちは」
「長柄川です。どうも」
とそこまで当然の流れのように済ませた後、長柄川は海馬の方を見た。
「どうしたの?またココに来て。もしかして、もう1回ここで踊ってみようとか――」
「思わないよ。俺はサッカーをやめるときにここもやめたんだ。俺は元の俺に戻るつもりはない。あの時の俺は今の俺とは違う」
「・・・・・・そう」
若干暗い感じの空気を悟ったのか
「のどが乾いたわ。嘉島君。ジュース買ってきて」
と虎郷が言った。
「って、パシリかよ!」
「いいわよ。じゃあ一緒に行きましょうか」
と、それだけ言って、俺の腕を引いてそのばから消えていった。
休憩所の自動販売機の前に立って、動きを止めた虎郷。
「どうしたんだ?急に・・・・・・買わないのか?」
「・・・・・・ねぇ、嘉島君」
「・・・・・・?」
「海馬君・・・本当に長柄川さんと付き合ってるの?」
「え?」
「・・・・・・・・・いえ、私の勘違いね。きっと」
と、納得しない顔でお金を入れて、缶コーヒーを買って、元の道へと歩いていった。
いや、それより・・・・・・長柄川さんと海馬が付き合っていない・・・・・・?例えそうだったとしても何の問題も無いんだろうけど・・・・・・。
この疑問・・・は何だろう・・・・・・。何か引っかかる。
「虎郷、どういう意味だ?」
「私はアレがカレカノ関係には見えないのよ」
「・・・・・・でもだからなんだってんだ?」
「・・・・・・いえ、いいのよ、だから。私の興味本位だから」
と、相変わらず納得していない顔で、俺の発言を受け流した。
「・・・・・・でももし」
虎郷は呟くように言った。
「そういう関係じゃなかったら・・・・・・海馬君はどうして怒ってるのかしらね」
今思うとこの時から俺は「レッドテイル」を疑うべきだったのかもしれない。