07-The Ringleader-
7話 首謀者
生きたいという気持ちも死にたいという気持ちもどちらも欲望なのに、どうして皆、死にたい気持ちはダメだって言うのかな。
「海馬君・・・なんでココに居るの?」
「あ・・・いや・・・ちょっとな・・・」
海馬は狼狽えながら1歩、2歩と下がっている。
「・・・・・・おい、海――」
「俺、トイレ行ってくる!」
俺が海馬の名前を呼ぼうとしたが、焦るように休憩所を飛び出していった。
「・・・・・・何なんだ?アイツ」
「あんなに恥ずかしがらなくてもいいのに・・・」
長柄川さんは呟いた。どういう意味だろう・・・?
「どういう意味ですか?」
俺が疑問に思ったと同時に隼人が質問した。
「彼、付き合ってる人がいるでしょう?これでお分かりでしょうね」
「・・・なるほど」
長柄川さん・・・このメンバー表にいる、長柄川 里子だろう。彼女はつまり、海馬の彼女ということか・・・。アイツはいつも彼女を怖がっていたからそれも裏づけになるだろう。
「あの、貴方達は何なんですか」
機嫌悪そうに、幼い顔の少女が言った。
「あ、俺達は・・・」
何て説明すればいいんだろう・・・。よく考えると、疑ってかかってると思われちゃ困るから、探偵クラブという言い訳もするわけにはいかないだろう。
「見学だよ。僕らもこのダンスクラブに入ってみようかなと思ってさ」
隼人が声に何の違和感も残さず嘘をつく。
「本当ですか?そんな事に正先輩が来るとは思いませんけど」
と、幼い少女(本当は幼女と略したいが、これは別の意味を含むので却下)が、相変わらずの訝しんだ顔で見ている。先輩ということは年下なのか。
「彼にはここを案内してもらってるんだ。ところで君達の名前を教えてもらえるかな?」
口からでまかせ、でっちあげの隼人君が彼女達に質問した。
「私は長柄川 里子」
「私は常盤 雅です」
と答えてくれた。とりあえず俺は
「何で海馬はどうして彼女である長柄川を避けるんだ?」
と、何とも無い質問をした。単純に距離を縮めて、疑いの目を避けるためだ。が、そのなんでもない会話に
「・・・」
と長柄川さんの動きが一瞬止まった。が本当に一瞬で
「彼は恥ずかしがりやなのよ。知らなかった?」
と元の通りに戻った。何だったんだろう。
「長柄川先輩。時間です。行きましょう」
「あ、そうね。じゃ、もしかしたらこれからよろしくね」
と、長柄川さんが手を出してきた。あ、握手か。都合がいい。
「宜しくお願いします」
手を握った。
[READ TALE:ボマー]
来た・・・!レッドテイルのメンバー・・・!
「じゃあね~」
「はい。また」
俺も隼人のように言葉に違和感のないようにしゃべる。
「隼人。あの長柄川・・・READ TALEだ。しかも能力者だろう。ボマーだから、爆弾の能力だと思う。首謀者だろうな」
「・・・そうか。残念だね」
「残念・・・?何で?」
「海馬君がREAD TALEの存在を知っていたからだよ」
隼人は暗い顔で言った。
「彼は彼女と交際していた。つまり、彼は彼女・・・・・・READ TALEを知っていた可能性が高い」
それはつまり、海馬が今回は敵である可能性があるということ・・・・・・。
だって、誰かが死なないといけない時に、生きたいなんてわがままいえないじゃん。
結局、自分がしたくないことは誰かがしようとしていることをさせたくないんだろうね。
だから自殺志願者は誰かに迷惑をかけたり、一緒に死のうとするんだね。