18-まとめ-
さて、今回もまとめは「俺」が担当する。
いい加減、「アンタは一体誰だ」って質問が飛び交いそうだが、まぁ、優雅かつ華麗に無視するとしよう。
今回の事件の責任は、虎郷が言っていた通りだ。その責任は全て、隼人にあるということになる。事件というのは、選挙戦での3つの事件も含めた、4つの事件だ。そういう意味では、彼女・・・虎郷が全てを理解したように話していたのは、事件を見ていたからなのかもしれない。だが、そんなことは今更いっても仕方がない。
隼人の言葉が、音河響花の心を暴走させた最後のトリガー・・・すなわち、決めの一手になったわけだが、そもそも彼女の願いはなんだったのか。
別にクイズでもないので、早急に答えると
「自分を認識する」という願いだった。
それはつまり、自らの道を自らで決めたい。誰かに決められたくないという願いだった。そう願ってしまったのは、社長が嘉島達に、婚約者を選ばなかった理由――隼人が選ばれなかった理由を話した後の社長と音河響花の会話のせいだった。
当然、響花は訊く。
「どうして隼人が駄目なんですか?」
と。
それはそうだ。暴れなかったよりはマシなはず。いくら王城を捨てたと言ってもだ。しかし、社長はその質問にこう答えた。
「何も持っていない者を音河の婿にするわけにはいかない」
それはつまり、王城の名を捨てたものは必要ない、という解答だったのだ。しかし、彼女はこの言葉に怒りはしたものの、頭ごなしに否定できる内容ではなかった。
彼女の心を蝕んだものは、社長の去り際の一言だったのだ。
「貴方のためなんだから」
心の中で何かが歪んだ。何かが叫び声を上げた。そして怒りがこみ上げた。
私のためを思うなら、そんな解答にはならないはずだと。
そんな歪みと歪みによって、不安定に曲がった心のままステージに向かった。
そして、隼人の発言を聞いてしまった。
これで良かった。
彼女の中で何かが叫んだ。自らの心を開放した。彼女の心が折れ曲がり、自らの願いを叶えようと何かが爆ぜた。それが彼女のアクターとして力を得た「願い」だった。
今回は、男子の属性――女子にもたまに当てはまるが――にある、「鈍感」が招いた結果なのだ。
そんな結果になってしまったのは、彼女が自らの世界を縛られていたせいなのかもしれない。
そんなことから考えても、今回のオチは「悲憤慷慨」という言葉が相応しいのだろう。
ちなみに説明しておくとすれば、
「悲憤慷慨」とは世の中の不義不正や自分の運命に対して、悲しみ憤ること。
皮肉にも、狭い世界に居た彼女にとっては、相応しい言葉なのだろう。