12-真実の解決-
最近、人気が落ちてきて、悲しさのあまり引きこもり化しそうです。
立てこもり犯の前、5メートルの距離に虎郷は立って、言った。
「さっきの言葉……どういう意味?」
「あ゛?」
「貴様ならそういう手でくるだろうって……」
「あ〜。その話ねぇ…ククク……」
男2人は笑った。そして立てこもり犯の男が叫ぶ。
「聞いて驚け!!」
「や…やめろ!!」
御堂の抗議は虚しく、立てこもり犯は続ける。
「コイツは俺達のような人間を利用して、自分の株を上げようとしていたんだ!!!!」
狭い廊下にその声が響きわたる。ざわめきが割と大きくなった。
「そう。それだけ聞ければ十分だわ」
虎郷はそれだけ言うと一歩ずつ近づき始めた。
「はぁ?お嬢ちゃんは退いとけ……よ……」
語尾がだんだん弱くなったのは、彼女の殺気に、2人の男も御堂も気圧されたからだ。
「お、おい!!!コイツがどうなってもいいのか!」
とうとう死亡フラグというか負けフラグを立てた。
「どうなってもどころか、どうでも良いわよ。そんなくずみたいな人間」 と、虎郷はまるで蔑むように言って
彼らの視界から消えた。
「がッ………はッ……」
次の瞬間には、3人とも纏めて地面に叩きつけられた。
「コレで解決ね……」
虎郷はレコーダーの電源を切って、気楽な声で
「警備員さーん」
と呼んだ。静まった廊下に先ほどのように声が響きわたった。
カジノでは、騒ぎがむしろ2倍になっていた。
理由は2つ。1つは格好良く締めた一国の王に向かって「イカサマだ」と言った男とその王の戦いが始まってしまい、人が2倍くらい集まったためである。もう1つはその賭けの戦いに、1万で戦ってきた王に、100円で戦いを開始して、男が勝っているからだった。ちなみに王の方は既に10万ほどを費やしている。ポーカー、ブラックジャックと来て、今はルーレットだった。
ディーラー(恐らくジャンの息(というか金)のかかった人間)が玉を転がす。
「あ…赤11」
「黒21」
玉が転がり落ちる。入ったのは、黒の21番。
「また、あの男だ…」
「アイツ強いなぁ…」
本来、強いなんて物ではない。相手の息のかかったディーラーにさえ、勝っているということなのだから。
「………!!!」
ジャンが立ち上がり、海馬のスーツの襟を掴む。
「貴様…何をした…!」
「何のことだ?」
「こんなに勝てるはずがないだろう!ポーカーすればフォーカードかフルハウス!ブラックジャックなら必ず21!ルーレットはピッタリ一致!あり得ないだろうが!」
「何であり得ないなんて言えるんだ?」
海馬が挑発する。とうとうジャンは痺れを切らして言った。
「だぁかぁらぁ!!イカサマしているトランプ勝負に俺が負けて、金で雇ったディーラーにすら勝てるなんておかしいっつってんだよ!」
カジノという空間には場違いな音…つまり、静けさを作り上げた。気付いたジャンは
「あ…アァ…」
と、今更ながらに渇いた声を上げた。
「残念。もう釈明はできないぜ」
海馬は少しだけ哀れんだような目でジャンを見た。それは同情に近い物だったろう。そして海馬はニヤリと笑って言った。
「運が悪かったな」
ようやく俺なわけだが、虎郷や海馬とは違ってド派手な展開はない。
「おい、西条さん」
俺は声を掛けた。
「・・・・・・何?」
明らかに訝しんだ目と声で俺に応対する。
「怪しいもんじゃないって・・・。そんで、」
取り敢えず釈明してから、ソファーを指差した。
「そこのソファーの下に、もう1個爆弾があるぞ」
「え?」
西条はソファーの下を覗き込む。
「・・・・・・あった」
西条は素早くそれをはがして、乱暴に振り上げた。周囲の人々は一歩下がりながらも、感嘆の声と拍手を西条に送る(俺は!?)。
「良かった・・・。これで安心だね」
「・・・どうやら、そうみたいだな。上の階で犯人が数人の警備員を殴っていたようだけど、もう捕まったようだ。メチャクチャ暴れたらしいぜ」
「そう・・・・・・なのか」
と、俯いて苦笑いした。
「それにしても彼女はどうしてこんな犯行に至ったんだと思う?」
「・・・・・・どういうことだ」
「いや、こんな犯行を行う理由はなんだったのかな?って」
「そこじゃない」
俺は周囲の目を気にせず、西条を追い詰める事にした。
「何で犯人が女だと思うんだ?」
「え・・・?」
「俺は一言も女だと言ってない。むしろ、殴ったとか暴れたとか言って、男の印象をつけたはずだ」
周囲の人も数人は頷いている。同意見のようだ。
「いや、それは・・・」
「そもそも、お前の対応はおかしいだろう。どうして、爆弾に対して何の処理も行わず持っているんだ」
俺は西条の手から爆弾を奪う。そして、タイマーの部分を指差す。8:88 というデジタル表記で止まっている。
「これ、作動してないだろう?」
「・・・・・・!」
「どういうことだ・・・?」という周囲の声。警備員が西条に対して疑いの目を向ける。
テロリロリーン。嘉島のパラメータがアップした。注目度が15上がった。
「大体、爆弾をどうしてあんな乱暴に扱えるんだ?振り回したら危ないだろう。現に周囲の人間は一歩下がってた。危機管理能力が無さ過ぎるぞ。アンタほどの人間なら、水銀レバーくらいは聞いたことあるだろう?無駄に振動を与える事は危険に繋がる」
「・・・・・・・・・」
俺に対する注目度が上がる。周りの人々は唖然として見続けており、警備員は興味深く聞いている。それでも俺は彼を追及していく。
「1番疑問があるのは、お前の安心した瞬間だよ」
「ど・・・う・・・」
動揺しながらも俺に向かって目を向けて対応する。どういうことだ・・・と言いたいのだろう。
「何で、2個目の爆弾が見つかって安心できるんだ。2個見つかったらもっとあるかも知れないだろう?つまり、お前は知ってたんだよ。爆弾が作動しないのも、爆弾が2個しかないのも、犯人が女である事も」
「う・・・あ・・・・・・・」
さて、出来れば目立つ行動は控えたいがここまでくれば言うしかあるまい。
「この爆発事件はお前の仕業だ」
一応、探偵を名乗る以上の仕事は何とか出来ただろう。
追伸
僕は今「超高校級の嘘つき」を目指していると言う事を考えて、前書きをお読みください。
ちなみに、まだ中学生。