06-王の立場-
婚約者選びというのは、金持ちや上に立つ者としては良くあるらしいのだ。海馬もそのイベントがあったらしいが、逃げたらしい。彼にも事情があるのだろう。
ともかく、彼女・・・音河響花の家系は、昔から何かに秀でているらしい。彼女の場合はそれが「音楽」だったということだ。そしてその家系では、「婚約者選び」で結婚相手を決めるらしい。ここで決まったことは絶対。否定した場合は相手を殺すことで「やり直す」という方式らしい。
「なーるほどねー」
全てを理解した上で海馬は言った。
「俺らもその婚約者選びって見にいけるのか?」
興味本位で俺が訊いた。
「一般人も参加可能だけど、無理だろうね」
「どうして?」
今度は虎郷が訊いた。
「彼女はそこでピアノの演奏をするんだよ。そのステージの席は全て埋まっている。君らはもう遅いよ。1ヶ月前から買わないと」
そこまで言ってから、隼人は部屋に入った。
「・・・私達のすることは決まったわね」
「そうだな」
また、虎郷と海馬が世界に入った。
「・・・えっと?」
「あなたもしかして気付いてないの?」
「呆れるぜ」
また馬鹿にされた・・・。
「話の端々から推測し、監視カメラを見たときの話をあわせると」
「ある事実が浮かび上がってくるわ」
「ある事実・・・?」
「「その婚約者選びには、彼・・・王城隼人も参加する」」
2人はハモって言った。うーむ、もしかして異常なまでに僕は推理力が無いのかもしれないな。
「で、俺達は何をするんだ?」
「まだわかんねぇのか?」
「本格的な馬鹿ね」
「・・・で?何をするんだ?」
「彼と彼女をその関係に持ち込むサポートをすることが、俺達キューピットの役目だ」
キューピットねぇ・・・。
「恐らく、そのイベントにはそこまで多くの人間は参加しない。が、そこに参加する面々はどんな手を使っても、婚約に持ち込もうとするだろう。どんな方法を使ってくるか分かったものじゃねぇ」
多分、どうしてどんな手でも使ってくるのかということが分かるのかを訊いても仕方が無いのだろう。俺には理解できない世界だということだ。
「でもどんな奴が来るかも分からない上に、席は取れないんだろう?」
「それは俺が打開できる」
と言って、海馬は携帯電話をだした。
「・・・・・・爺やか?急遽だが・・・」
と彼は電話を始めた。爺や・・・つまりは・・・。
そして、物語は、約1ヶ月くらい経った、11月19日土曜日。
その例の婚約者選びを成功させる作戦「Angel」を始動させたのだった。