03-王の盗聴-
将来を決める事はたやすい。
将来を選ぶ事は難しい。
将来を見ることは不可能。
『どうだ?画面には映ってるか?音も拾うから待ってろ』
電話からの今日元さんの声がして、海馬のタブレット端末に、店の中の監視カメラの映像が入ってくる。遅れて音も聞こえてきた。
「ありがとうございます。今日元さん」
とりあえず、今日元さんにお礼を言った。
『いいさ。気にすんなって。それに俺も興味あるなぁ・・・。アイツ女には興味なさそうだったのにな』
「或いは、だからこそ、ですかね」
『そうかもな』
「あ、そうだ。海馬の電子板の画面にこれますか?」
『ん?あぁ。ちょっと待ってろ』
そして電話が切れた。
さて、今日元さんが来るまでの間に、彼女の能力についてこの間の続きと行こう。
彼女の能力は「トランスミッション」。身体、或いは意識を電子化し、電気を使っている全ての物に干渉・介入・侵入することが出来る。今のように、監視カメラに侵入し、映像を別のところに送ることも出来るのだ。所謂ハッキングという物だ。その能力を使って俺達の胃の中にある「WE」すなわち、White Electric ――あの鍵の形状だったり、カードキーの形状だったりするもの――を利用して、「WR」を作り上げているのだ。また、彼女の体(主に脳)は、携帯電話の代わりにもなる。そして、最大の特徴はどんな場所でも出来るということ。例え電波を遮断しても、意味を成さないのだそうだ。
『お、来れたな』
「今日元さん。助かりました。今日、一緒に夕食でも」
海馬がまたナンパを始めた。やれやれだな。
『WRでな。皆で食べような』
「クッ・・・!2人ではダメなんですか」
「馬鹿やってないで、画面を見なさい」
「へーい」
という訳で、監視カメラの映像に注目する。
以下盗聴と盗撮。
「・・・・・・もう少し、人目を憚れよ。響花」
「あまり気にしても仕方がありませんから」
女の方は響花というらしい。ふむ、名前は兄と姉に似ているな。親近感がわかないでもない。だが、格好は、最近の女子のファッションではないであろう、ハンチング帽とサングラスで、若干の変装という感じだ。もしかして有名人なのだろうか?
閑話休題。
「で、隼人はどうするんですか?その・・・来月」
「・・・・・・うん。参加するよ。会長の・・・お爺様の移行だからね。従わざるを得ないし」
「参加したくなかったらしなくていいと思いますよ。あなたの意志しだいです。王城は関係ないのでは?」
「いいや。どうせなら参加して、君の未来を見て帰るよ」
「そうですか・・・」
うむ。一体何の話をしているのやら。
「虎郷、海馬。分かる?」
俺の質問に2人は
「ふむ。察するに、彼女は王城君が好きだけれど」
「隼人は気付いていない。さらにあの2人は幼馴染・・・か」
と答えた。
『その場合、あの2人は外国の生活が長かったかもな』
「あんたら、観察力凄いな」
「後は・・・来月何らかのイベントがあるってことくらいかしら」
「ふーん」
と、気付くと。
響花という女性がこちらを見ていた。
そしてその姿を見た隼人がこちらを見て、
「!」
あ、凄い顔した。そして今度は監視カメラと目線がかち合う。
「!」
あ、顔から血の気が引いて、マンガのような縦線がつく。
「行こう!」
「ばれた!」
俺と隼人の同時発言。
『「「へ?」」』
3人とも気付いてなかったのか。とか言ってる場合じゃない!一万円置いて「釣は要らん」とか言ってるよ。ヤバい。
と思ったときには店を出て、街中に行った。
「捜すぞ!」
性も無い事に関しては全力投球の俺達なんだよな。
将来を共にするのは絶対。