03-世界一非道なヒーロー-
「その雷……あの柱に電流を送ったのはお前か!!」
「ああ。まあ、流石にあれだけの電力を使うことはできないのでなぁ……。俺から精製したが……思ったより強かったようだ」
「てめぇの所為で、どうなったと――」
道理場は右腕を手刀形にして縦に振るった。
俺は咄嗟に横に転ぶ。
「油断するなよ……お前はここで殺すと決めている……つまりは全力だ」
「くっそが!!」
俺は叫びつつ割られた窓から外に出た。
「外か……まあいいだろう……」
道理場は外に出ていく俺を静かに追いかけてきた。
できるだけ住宅街や中心部から離れよう。コイツの能力はどうも危険な香りがする――。
「中心部から離れたい気持ちは分かるが……遅い」
道理場はそう言った。
「手伝ってやる」
言ったかと思うと、俺を背後から突風が押した。
「うぐぁ!?」
「適当に選ぶぞ……」
そう言ったかと思うとスピードはどんどん上がり目も開けられないほどになっていた。
気付くと少し広いところにいた。工場の跡地を広くしたはいいが、特に何か建てる予定はない、そんな雰囲気の場所だった。
「……俺は別に全世界の人間を殺したいわけでもないし……被害を広げるのは俺もそんなに望んでいる訳ではない。お前らが邪魔なだけだ」
「何なんだ……いったい何なんだよ! お前!」
「気にするな……というか、俺も知らん」
「は!?」
「リーダの言うことを聞くだけだ……お前が王城隼人の言うことを疑問を持つことなく聞くようなものさ」
そう言って。
そう言って、道理場は俺の腹を蹴り飛ばしていた。
「ぐ……!!」
俺は受け身を取って前を見た。
相手の膝が俺の顔をとらえた。俺はそのまま吹き飛び地面に這いつくばる。
「油断するな……敵が全てを説明してやるほどの優しい奴ではない……」
「くっそが!!!」
俺は両手を地面にたたきつけて、思い切りよく立ち上がり相手に向かって突っ込んだ。
「考えなしでくるな……」
道理場はそう言って、右腕を構えた。
瞬間光る。
道理場はそのまま右腕を横に振るった。ここまで2秒足らず。
「早いっつーの!!!」
俺はそう言って跳んだ。
「まだまだ……」
そう言って道理場が上を見た瞬間俺は左腕を振るった。
「……!!」
道理場は瞬間顔をそらした。
当然だ。先ほど立ち上がるときに砂を手に掴んでおいたのだから。
俺はそのまま道理場を殴った。
道理場はギリギリで回避してから目をこすって俺を見た。
「卑怯な男だ……!!」
「うっせーよ……勝てばいいんだよ!!!」
我ながら最低なセリフを吐いたところで――。
電話が鳴った。