01-世界一愛する者-
目が覚めると、日本家屋の電灯がみえた。
「起きたかしら」
そう言った虎郷は縁側にいた。
既に日は上がっており、感覚的には10時くらいだと予測した。
「いつも通り早起きだな……ッ」
頭痛がする。
あれか、えっと、……そう、二日酔い。
「大丈夫?」
虎郷が尋ねてくる。言葉に起伏がないので、感情が分からない。頭痛も相俟って思考力が低下している。
「まあ」
「そう」
いつも通りの淡泊さ。こんな時くらいしか考えることができないので、今考えるが……。
果たして俺は彼女のどこが好きなのだろうか。
逆に、彼女は俺のどこが好きなのだろうか。
会話は基本的にしていない。するときは何か大きな問題や小さな問題に対して、こういう風に形式的に会話する程度だ。
俺は縁側に座っていた虎郷の横に座る。
「皆寝っぱなしか?」
「ええ。まあ貴方が起きたのだからきっと海馬君も起きるでしょう」
「呼ばれて飛び出て」
そう言って海馬は後ろから俺の肩を触りながら縁側に座った。
「どーなってたんだ、俺」
「酒飲んだらしいぜ」
「ああ、道理で、この頭痛……」
海馬は苦笑を浮かべて、周りの皆を見る。
「こいつらもそうなのか?」
「虎郷以外は全員な」
「少し飲めばわかるでしょう」
「楊瀬と盛り上がってて飲み物は食い物を流し込む手段として使っていた。味なんか一々覚えてねぇよ」
そう言って海馬は立ち上がって、皆を起こしにかかった。
ってマジかよ。
「寝かせといてやれよ」
「いや、帰りたい。俺は帰りたいんだ。そして寝たい」
そう言って海馬は俺たちのメンツを主に蹴り起こした――まあ、蹴ったのは隼人だけであって、残りをけるようなまねはしなかったが。
「お邪魔しました」
俺たちは楊瀬さんにそう言った。
「ええ、また来てくださいね」
楊瀬さんは頭痛など諸共せず、笑顔で言った。或いはそれも嘘か。
あんな誠実そうな嘘吐きを見たことがないが。
「帰る?」
俺の発言に隼人が言った。
「ああ、久々に母親たちと会った方がいいかなぁと思ってさ」
「なるほど、それもそうかもしれない」
そう言って隼人は俺を見ると、
「それなら早く家に帰ってくるといい。僕らは多分家にいるから」
隼人は歩いて行く。
「あ、いつ帰ってくる?」
そう言って虎郷が俺を見た。
「あー、明日の夜かな?」
「そう。じゃあちゃんと伝えとくわ」
「ああ」
「早く帰ってきなさい」
虎郷はそう言って歩き去っていった。
……うん。
そういうところだな、きっと。
「の前に」
俺は家に行く前に病院に行くことにした。
姉に会うためである。
割と近くにあったので数分くらいして到着した。
そして病院のロビーにはいろうと玄関へさしかかった瞬間。
意識を失った。