12-俺にゃまだなんかあんだって-
「シンデレラ。バトローション」っていうのも書いてますのでそっちも宜しく。イメージが違うので、危険性があるよ!
海馬が突っかかってきた。拳を固めている。
「ぶっ飛ばす!」
彼の運動神経は俺よりも上だ。正面から正々堂々と戦って勝てるような自信は無い。正々堂々と奇襲戦法だ。
俺は、地面に左手を構えた。地面が捲れあがる。
海馬の拳はそのまま突き破る。
「お前・・・地面をぶっ壊したって事だからな・・・」
「俺の強さをなめてかかるなよ・・・!」
めくりあがった地面の厚さは30センチ・・・十分な厚さだ。別になめてかかったわけではない。単純にそこまでの強さがあるとは思わなかっただけだ。
当然、俺は後ろに下がる。間合いを取らなければ勝てそうにも無い相手だ・・・。
「距離をとっても勝てはしない」
「俺の心ってそんなに読みやすいですか?」
思わず敬語。同時に、何か飛んでくる。
さっき破壊した床の破片だ。投げたのか・・・。
「もう一発だ!」
2個目が飛んで来る。今度は、左手で受け止める。そして形状を変え、ナイフの形にする。
「うぉぉぉお!」
そんなに軽くはない。質量自体は変わらないのだから。
「飛び道具なら、俺には当たらん」
そう言って真っ直ぐ突っ込んできた。
目の前に立った。いや、立ったというほどの長さ正面にはいなかった。左手の甲で俺の右頬を殴る。
強い・・・・・・。
なめていたわけではないけど、ここまでとは思わなかった。本格的に死ぬ。
そこで俺の視界から強制退去を命じられた海馬が言う。
「俺の運のよさはさっき分かったろう?こんな方法をとってまで何がしたいんだ」
「命の尊さを教えたいと思う」
「ふざけるな!!」
俺に向かって、石を投げ続ける。壁の破片も含めて投げてくる。
俺は、左手でボロボロにするか、よける。
大丈夫・・・隼人が何とかしてくれる。
「嘉島君!」
ほら来た。
「昨日の植木鉢だ。どうしてあんな事が起きた。それに、本当に運がいいのなら、彼は自分の過去を・・・・・・母親や父親に対する憎悪を感じる事なんて無いはずだ!!」
「うるさい!!」
隼人の声を海馬が遮る。
一体何の事だろう。そう思ったときには海馬の投げた破片は俺に衝突する。
「!!」
もちろん痛い。しかも、1個くらうとリズムが崩れる。バイオリズムが崩れるとはこのことか!!いや、違うけど。
2個、3個、4個と追撃する。
隼人・・・一体何を俺に伝えたいんだ・・・。
植木鉢のことが起きたのは何故か?そんなの決まってる。
飼育委員が植木鉢を落としたからだ。あの植木鉢が落ちてこなければこんな事にはならなかったろう。
・・・・・・ん?どうして植木鉢が落ちてきたんだ。だって、根本的に運がいいのなら――。
植木鉢は落ちてこないはずではないか!
そうだ。運のよさが最高級で完璧ならば、植木鉢が落ちると言う事もない。
過去の話もそうだ。もし、彼の運がそうであるならば、母親が彼の言うようなことになるはずが無い。
つまり、彼の運には何らかの弱点がある。
それさえ分かれば・・・。
俺は右手を地面につけた。もう既に、10個近くの破片が当っている気がする。そのままの態勢で地面を壊した。俺はそこに自らの脚を引っ掛けて、転ぶ。
「!」
案の定、そのタイミングで投げた彼の石から衝突を免れた。
俺は、地面を強制的に捲り上げて壁を造る。
「・・・・」
俺が、海馬の弱点を探る方法。それは海馬に近寄って気持ちを読み取る事。俺の能力は、右手と左手に偏っているが、何もしなくてもどちらともの能力を軽く持っている。俺が近づけば、その人から情報を軽く認識できるし、俺が立っている近くの空気は軽くなっている。だが、深くの事を読み取るためには、彼に右手で触れるしかない。
ならば。
そう思ったときに、予想通り俺の正面の壁が右手で壊される。
俺はその腕を右手で掴んだ。
探せ!3秒以内だ!!
そして、2秒で、左手の追撃によって、俺の体は後方に向かってぶっ飛ばされる。
あぁ・・・本当に運がわるいな・・・
「何をしたいかは分からんが、お前の能力で、俺の弱点を調べようとしたのであろうと言う事くらいは分かる。だが無駄だ」
「・・・・・・」
「俺も知らん」
そう、読み取ったが、分からなかった。というか、彼にはこの能力について、『運がいい』という要素以外を知らないようだった。
「・・・」
俺は、倒れた体を起こした。
「「ある1つの仮説を立ててみよう」」
俺と隼人は同時に口を開き、同じ言葉を吐いた。
俺は、両手に石の破片を持つ。そして、それの形状をナイフにする。
走りだす。海馬の正面に、向かってそれらを投げる。
「俺に飛び道具は効かん!」
それを回し蹴りではじく海馬。
「じゃあ、飛び道具で勝ってやるよ」
海馬はその蹴りの勢いで、1周回ってから振り向いて
「なっ!」
驚きの声を上げた。
俺は地面に触れたまま――1メートル四方くらいの地面をずっと伸ばしながら。
海馬に突っ込む。
「おりゃぁぁぁぁあああ!!」
その伸ばし続けた床を槍のように鋭くして、巨大ナイフを1本作りだして、海馬にさした。
「ぐああああああ!!」
痛みには慣れていないようで、すごい声を上げた。耳が張り裂けそうだ。
「ど・・・どういうことだ!!俺の運が負けるわけが無い!」
「「仮説の結果はこういうことだ。君は・・・君の運は、『予想外の事』には対応できない」」
つまり、あんな巨大なナイフが出てくるはずが無いと思っていたことが原因だ。
まさか、母親があんなことになるとは思っていなかったのだろう。
まさか、植木鉢が落ちてくるとは思わなかったのだろう
だから、彼の運は悪いように作用した。
「・・・そう・・・いうこと・・・か」
そして、海馬は少しずつ冷静さを取り戻していく。
「・・・流石にあんな巨大ナイフを見せ付けられたら、俺ももう予想外なんて事はなさそうだ」
「・・・そうでもないぜ?」
俺は左手を構えた。
「隼人も虎郷も予想外の必殺技だ」
俺は左手を、引いた。
「・・・何をする気だ・・・?」
「飛び道具で勝ってやるって言ったろう?」
隼人も虎郷も海馬も不思議な顔をしている。当たり前だ。俺だってできると思っていない。
俺は左手を前に突き出した。
「!!」
海馬の体が後ろに向かって吹き飛ぶ。
門に激突する。門の扉をへしゃげることでようやく海馬は止まった。
「・・・あちゃ・・・手加減できなかったか・・・」
「な・・・何をしたんだ?嘉島君」
隼人も虎郷も驚いた顔をしている。当たり前だ。俺が1番驚いている自信がある。
まぁ無理も無い。俺は、海馬に触れずに、海馬を10メートル程度ふっ飛ばしたのだから。
俺の体は、能力上何かの『記憶』を送信し続け、何かの記憶を受信し続けている。つまり普段、何もしていない時には空気の『記憶』を送信し続け、空気の記憶を『受信』し続けている。左手はその中でも、空気への送信が激しい。つまり、そこには空気が密集しているのだ。
だから、俺はそこにある空気をふっとばした。
この年でカメハメ波を成功させてしまった少年であった。
・・・・・・長かったな。
読者さん。お疲れさまです。目を休めてください。