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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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57-経験則の科学-


「助ける? 俺を? 何からだ?」

「貴方自身を縛っている物からですよ」

「何だと?」

「王としての執着」

 そう言って隼人は笑った。

「さっきまで僕が持っていて、そして捨てたものです」

「貴様、そんな意志で俺に勝てるというのか」

 一条字は睨む。

「正直俺と貴様は同等だと思っていた。貴様は王としての存在に固執していたからだ。相手より上に立とうとする意志は何よりも強い。最強になろうとする意志だからな」

「……」

「それが無くなってしまった以上……貴様が俺に勝てる道理はない」

 またも圧力が強くなる。

 しかし隼人は動揺せず、

「そうですね。僕は貴方には勝てません。なぜなら、貴方には『ヒート・アップ』があるから」

「……」

「『ヒート・アップ』あなた方で言うなら、『経験則の科学』ですね」

「口を慎め。分かっているのならば説明する必要もない」

「ですね。だとすれば、分かっているでしょう? 僕が今からどうするか」

「ああ。俺に勝てる方法があるとすれば、それしかない。もっとも勝てたとしても『今回だけ』だがな」

「一度の勝利を振りかざして最強を名乗るつもりはありません」

 隼人は構えた。

 圧力はほとんどない。いつもの威圧感が0と言っても過言ではなかった。

「その程度で勝てるわけがないだろう」

 一条字はもう一度そう言ってから体を低く構えた。


=========================

 王。

 それが俺に与えられた使命だ。

 絶対者。負けることは許されていない。俺の負けは俺の持つ全ての崩壊を意味する。

 同じ王である以上こいつに負けるわけにはいかなかったが、王でなくなった以上、こいつに勝たなければならなくなった。

 だからやるならば、一撃必殺。なぜなら向こうもそれを狙ってくるはずだから。

 カウンター、或いは俺から突っ込むという方法もあるが、威圧感のなくなったアイツに勝てる手法なんてあるわけがない。

「行きます」

 王城隼人は言う。

 俺はカウンターとしての態勢で準備した。

 王城隼人はまだこちらには来ない。仁王立ちで構えている。その姿に妙な感覚を覚える。

 威圧感なんて何にもない。しかし『嫌な予感』がするのだ。

 何かが来る。何かがおかしい。何もないところから何かが来るような気がする。

 『無』

「!?」

 気が付くと王城は目の前に居た。

 先ほどまでとは比べ物にならない威圧感を持って。


=====================================


 ドォン、と。

 一条字は隼人の拳を腹部に喰らって、地面に倒れた。

 微動だにすらせず、その攻撃を受け止めた。そして動かなくなった。

「な……何が起きたんだ」

 隼人が何をしたのか分からない。

 なぜなら隼人は、その場から・・・・・走って一条字・・・・・・・目の前まで行・・・・・・、殴っただけなのだから。

 そんな俺に隼人はこちらを見て笑った。

 そして、後ろに向かって倒れた。

「隼人!?」

 隼人の方に走る。何だ、何かの能力でも使われたのか!?

 そんなことを必死に思った俺とは対照に隼人は

「勝った……」

 と喜んでいるのだった。


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