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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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56-結果論-


 一条字が俺から隼人へと身の方向を変えた。俺に後ろから殴られるとか考えていないのだろうか。

「今更起きたか、王城隼人」

「……」

「しかしどうする? 貴様の仲間は嘉島奏明だけとなってしまったぞ」

「……」

 隼人はしばらく黙っていたが、突然

「はぁ……」

 とため息を吐いた。

「何だ? こんな結果にしてしまったことへの自らへの不甲斐無さに向けてか? それとも王座を失墜した自分の現状へか? どちらにせよ貴様の責任だが――」

「ここまでさせてしまうとは申し訳なかったなぁ、と思いまして」

 隼人は言った。

「誰に対して言っている?」

「彼らですよ」

「……」

「僕が王に固執し過ぎたり、自らの目的だけのために行動したりしていた所為でこうなってしまったわけですから」

 隼人は空を見上げる。

「僕のためだけに動く必要なんてないんだ。僕は……王である必要なんてなかったんだから」

「失墜した王に興味はないぞ」

 そう言って一条字は体を低く構え、両手も地面についた。

「『突進』」

 そう呟くと一条字は猛スピードで間合いを詰めた。当の本人である一条字は大気圏を突き抜けるロケットのように体の周りに赤色の壁を作っていた。

「隼人!!」

 隼人は動こうとはせず、その突進を見守っていた。

「死ね」

 一条字は確かにそう言った。そしてそのまま隼人の体にぶつかった。

 今度は隼人の体が弾丸のようになり、高速で飛んでいきフェンスにぶつかった。

「隼人!!」

 俺は叫んで隼人の方へ走った。

「そう簡単に行かせるわけ――」

「うっせえ!!」

 邪魔しようとした一条字の体を左手で地面を変形させて隆起させ、吹き飛ばす。もしかしてこの勢いがあったら俺でも倒せるんじゃないか、とか思ったが一瞬だけのことなのですぐに無理だと判断した。それに一条字を倒すのは俺ではない。

 隼人だ。


「隼人!!どうして――」

「……キングダムで痛みから逃げ続けてきたからね……久しぶりだ。痛いってのは」

「!!」

 隼人は笑っていた。そして、静かに立ち上がる。

「これが今まで皆が背負っていた物――背負っていた者なんだね」

 そう言って隼人は俺の方を触ると

「全員で一番上に立とう」

「え……」

「僕は皆に指示を出すし、僕の目標に皆を連れて行くことになる。皆には何のメリットもないけど――それでも」

「メリット?」

 何の話しているんだ。

「さっき言われたのさ。一条字にね。何のメリットもなく君たちは僕に協力させられているって――コマのように扱っているって」

「……何だそりゃ」

 俺は言った。

「俺たちの理念は協力じゃなくて、利用し合うだぜ。忘れたのかよ」

「でも僕は君らのために何もしてない」

「…………」

「だから、皆一緒に頂点になることになる」

「バカか」

 俺は言った。

「俺は家族を守る」

「……??」

「虎郷は人を助ける。海馬は楽しみたい。音河は隼人がいるから。雅は自分の居場所。今日元さんは『脱出』で東先輩も一緒だ」

「それは……」

「お前は頂点になる。これが利用し合う条件だったろ」

「…………」

 隼人は黙っている。

「皆一緒に頂点に立つ。別にいいけど、結局一番上はお前じゃないといけないんだぜ」

「…………」

「それが俺たちのルールだ」

 大体、そんなの考える必要なんてないんだよ。

 こんなこと全員忘れているんだ。ただただ、隼人の夢をかなえるためだけに全員が動いている。今回は王に近づくための一歩として生徒会長になろうとしている。

 これが正しい形なのだ。何の形なのかは分からないけど。

 誰かが誰かのためなんて考える必要はない。自分が今したいことをする。それでいいのだから。

「考える必要は……ない」

 隼人は反復した。

「で、どうすんだよ隼人」

「大丈夫さ。相手の能力は分かってる。君はそこで見ておきたまえ」

「うぉ、その上から目線の本調子……むかつくなー」

 俺は笑った。

 隼人も笑うと、一条字先輩の方へ向かって歩いた。

「話は終わったか」

「待っててくれたんですか」

「まぁな。お前の言葉を聴こう」

「言葉??」

「何かあるだろう。恐らくだが」

「……ああ」

 隼人は言った。

「貴方が間違っていることを証明すると言いましたが、やめました」

「ではどうする。証明できないことは貴様の負けと一緒だぞ。『勝って』証明するといったからな」

「……貴方を助けます」

「……何……!?」

 

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