55-最強になれる男-
始まり始まり。
ああ。
こんなものか。結局これ以上の物なんて手に入るわけがない。
今回得たのはチームプレイという形。俺と戦う奴らでここまで統制のとれていた奴は初めてだっただけの話。もう二度とチームプレイという形があることを忘れない。
もちろんこの型となれば色々な戦い方ができるのだろうが、それでも俺にはもう通じない。
俺は最強になれるのだから。
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気づくと蹴り飛ばされていた。
「が……!!」
屋上の外に出れないようにしているフェンスにぶつかり、床に倒れ伏した。
3人も自分たちの前を通過した俺から一条字へと視線を移す。
一瞬だった。
俺が一条字から目をそらした瞬間、1秒無い瞬間に、俺の足をつかんでその勢いで立ち上がり、一気に蹴りぬいた。
「すごいな……俺もここまでの相手は久しぶりだったよ」
そう言って一条字は完全に立ち上がった。
「でもな、俺はお前らに負けることはありえない。俺は最強になれる男だからな」
少しずつ歩き出す一条字。俺は立ち上がって、睨んだ。そしてみんなと同じ位置に立つ。
深手を負っている相手だ。いくらなんでも負けやしない。
「行くぞ」
一条字は言って仁王立ちのスタイルから腰を低く落とした。
そして、
「グルル…………」
獣化した。
猛スピードで俺たちの間合いを詰める。
しかし虎郷には未来が見えているから、スピードは関係ない。
一条字が到着した位置に同時に虎郷の膝が入り、一条字の顔にヒットする。
しかし――。
「!?」
一条字は微動だにしなかった。どころか虎郷の膝を押し返している。
「この程度が……何だ!!」
一条字が叫ぶと虎郷の体がそのまま吹き飛んだ。
「動揺している場合じゃないぞ!!」
海馬が言って大砲を構えた。
『スイッチNo.44 バズーカ』
音と同時にバズーカ弾が飛び出す。そして一条字を狙いに行った。
「ウオオオオオオオおオオオオオオオオオ!!」
一条字が叫ぶと、口から目に見える波紋が広がっていく。そしてバズーカ弾に届くと停止してしまいそこで落下して、爆発した。そして煙が上がると一条字はその中に走り出した。
そして5秒後、海馬がこちらに吹き飛んできて、俺と雅の横に倒れた。
「正さん!!」
「動揺するなというそいつの忠告を忘れたのか?」
一条字はそう言って雅の腹を一発殴った。
雅はそれでぐったりと倒れてしまった。
「うおっと!」
一条字はそう言って俺の攻撃を避けた。
「やはり貴様は適応力が凄いな」
「チッ……!!」
何なんだ、この感じは……。
もう何をしても遅いような……そんな違和感。
「お前の能力は……何なんだ!!」
「楊瀬、結局言ってなかったのか」
独り言のように一条字先輩は言って笑った。
そう言えば楊瀬さんの姿がなくなっている。気づけばいなくなっていた。
「分からず過ごせ。俺は最強になれる」
「くっそ……」
何なんだ、こいつは。
でもわかる。勝てない。俺は何してもねじ伏せられる。
「くっそくっそ……!!」
どうすればいい。
どうすれば勝てる!!
「くっそぉぉおお!!」
何か、何かあるはずだ!!
何かが――!!
「ヒート・アップ」
希望の一言だった。
それは一条字の後ろで声を上げていた。
しかし鮮明に聞こえた。
「……隼人」
「任せろ、ソウメイ君。ここからは僕の番だ」