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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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52-宮殿-


「貴様らが来たということは、俺の駒は全て倒されたようだな。残っているのはキングのみということか……」

 一条字先輩は言ってから自嘲するように笑った。

 いや――だから、何でアンタは俺たちが見えてるんだ。

「この空間もそろそろ疲れたところだ。そもそも意味をなしていないことぐらい分かっているのだろう、王城隼人……」

「くっ……」

「この白い空間の外では恐らく建物も破損しているだろうし、お前のダメージを食らわないだとか言うのも、意味はなかったということになる」

「……」

「そろそろ宴会はお開きにしろ」

「……この空間にいる限り、貴方はまだまだ支配されたままだ。だから、他の皆の居場所も分からないはずだ」

「確かにそうだ」

「ならば開かない」

「……じゃあ貴様を食らうしかないようだな」

 2人は淡々と会話を済ませる。

 そして、同時に動き始めた。

 隼人が右足を振るって一条字先輩の頭部を狙う。

 一条字先輩はしゃがんで避けると、両足で跳躍して隼人の顔面に頭突きをかます。

「ぐ……」

 さらに一条字先輩はその跳躍した状態から一回転して、両足を隼人の肩にひっかけた。隼人は腕を固定されて動けなくなる。

 一条字先輩はそのまま、前に向かって重心を傾けると、隼人諸共前に向かって(隼人からすると後ろに向かって)、倒れる。しかし、一条字先輩は着地の瞬間に両手をついて跳ぶことで衝撃を避ける。隼人はそのまま背部を強打する。

「がは……」

 隼人はダメージを回避できていない。



「野生の動きだ……」

「どうする、嘉島。参入するか?」

「やめた方がいいでしょうね。こっちの攻撃は何の意味もなさないし、2人の間に割って入っても、私たちの体をすり抜けるという気持ちの悪い状況になるわよ」

「だな……」

 しかし、だとすれば……。


「勝てないでしょう。恐らく」

 と、後ろから男の声がした。

「……何で……!?」

「何でって……あんなプラカードで本当に私が止まるとお思いだったのですか?」

 楊瀬さんはそう言って笑った。

「く……」

 海馬は構えた。

「ああ、別に戦うわけではありません――というか戦ってはいけないそうです。『一度気絶したことは死を意味している。敗者は戦ってはならなりません。ルールです』と、乱様にそう言われてしまいました。最後にはちゃんと元のキャラを取り戻していらっしゃいましたね」

 楊瀬さんは笑った。

 そして、

「それと、籠目様と華壱様は目覚めず仕舞いです。私だけで皆さまを相手するのは少々骨が折れますから」

 と続けた。

 勝てる気でいるらしい。

「で、無理ってのっはどういう意味だ」

 海馬は言った。

「一条字様の能力はライオン以外にもう1つあります。その能力は――」

「おいおい、楊瀬。王が見ていないとでも思ったのか」

 と、一条字先輩は笑う。

「勝手に俺のことを話すな。貴様、負けたのだから何もしないのが普通ではないのか」

「……申し訳ありませんでした」

「貴様のことだから謝罪しているのだろうとは思うが、直感でしか貴様が何をしているのかは分からない。やはり不便だ」

 そう言って一条字先輩は一度髪の毛を撫でてから――

「Woooooo!!」

 2足歩行のライオンに変わった。

 動物に代わると皆、2足歩行らしい。

「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 さらに一条字先輩は咆哮した。


 聞こえた。

 ピシ、ピシ、と何かがきしむような音が。

「oooooooooooooooooooooooooaaaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 叫ぶ。

 叫び続ける。

 そして最後には、パリン!という音で、まるでガラス細工が崩れていくような音がしていた。


「……思ったより簡単に破壊できたぞ、この宮殿は」

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