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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
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50-宮殿-


 階段を昇り切ると、間髪入れずに雅が屋上の扉を蹴り飛ばした。屋上の扉は障子紙のように破れながら、本来の方向と逆の方向に開いて、悲しい軋み声を上げて接続していた蝶づかいが外れた。

「ひゅーぅ」

 と海馬が冷やかすように言って、雅に次いで屋上に降り立つ。虎郷も既に屋上に立っており、俺は遅れて昇り切った。


 眼前では隼人と一条字先輩が仁王立ちで睨み合っていた。

 2人とも傷だらけで周囲の破損は著しかった。


==========戦闘開始時間=========


 愛していない。

 愛がない。

 政略結婚。

 

「正直、そこまで仲間を見捨てるタイプの人間だとは思ってもいませんでしたよ」

「仲間……? 駒の間違いではないのか?」

「……駒……ですか」

 隼人は一条字先輩を睨んだ。

「貴様には俺と同じ王としての資質を感じる。逆に言えば、俺と同じようなことをしてきたということだろう? まあつまるところ、自らの目的のために貴様の仲間だか友だか言う者たちを利用してきた……」

「利用じゃない。協力だ」

「協力……か……。まあ物は言いようだな」

 一条字先輩はそう言って笑った。

「ならば問おう。貴様は奴らのために協力したのか?」

「当然です」

「何を?」

「……それをあなたに言う理由はありません」

「ああ。だから、理由なく教えろと言っている」

「理由なく教える必要がありますか?」

「……結局そういうことだ」

 一条字先輩は獲物を捕らえたような表情をした。

「だとすると、『理由なく協力なんかしない』。それが貴様の生き方なんだろう? つまり貴様は、自らの協力という形で他人に協力している……或いは、他の人間に協力を要請しておいて、案外みずからは何もしていないのかもしれないな」

「……」

「どこが友だ。仲間だ。結局は駒だろう?」

「……貴方は――」

「そろそろ無駄話もおしまいだ。俺が許さん」

 そう言って一条字先輩は右足を前に出して、体重を乗っけるように前傾姿勢を取った。

「構えろ、王城隼人」

「…………負けません。そして、勝って貴方に教えます」

 そう言って隼人は右手を突き出して構えた。

「貴方は間違えている、と」

 一条字先輩が走り出した。

「キングダム!!」

 隼人は叫んだ。


========数時間後=======



 階段を昇り切ると、間髪入れずに雅が屋上の扉を蹴り飛ばした。屋上の扉は障子紙のように破れながら、本来の方向と逆の方向に開いて、悲しい軋み声を上げて接続していた蝶づかいが外れた。

「ひゅーぅ」

 と海馬が冷やかすように言って、雅に次いで屋上に降り立つ。虎郷も既に屋上に立っており、俺は遅れて昇り切った。


 眼前では隼人と一条字先輩が仁王立ちで睨み合っていた。

 2人とも傷だらけで周囲の破損は著しかった。

 いや――おかしい。この状況は。

 隼人が全力で戦ったのなら――キングダムを使ったのなら、この場所には何の現象も起きていないはずなのに。

「隼人!!」

 俺は叫んだが、隼人は返事をしない。

 見ればわかる。相手に集中している。全力で。

「どうなっているんだ……!?」

 海馬も同様のことに気付いて驚いている。

「使わなかった……ということかしら……」

「使ったはずです。ここでわざわざ手加減する理由がありませんから」

「となると、一条字の能力がキングダムを使えないようにした、或いはキングダムが意味をなさなかった……ということになる」

 3人が思考を始める。

 俺も足りない脳で考える。

 一条字玲王。

 残っている動物はライオン。

 百獣の王。獅子。

 ライオンだとすれば、入学式でのあの咆哮も納得できる――ん?

 咆哮。

 思い出せ、あの時の空気を。

 まるで何者かの圧力がかかっていたかのようなあの空気。

 何かに似ている。

 圧力。空気。視線。咆哮。気絶。

 気絶したのは何故?

 いや、気絶しなかったのは、だ。

 気絶する理由は何かじゃない。

 俺たちが気絶しなかった理由を考えろ。

 圧力――威圧。


 威圧!?

「分かった」

 俺は呟いた。

「嘉島……?」

「隼人は使わなかったんじゃない」

「だから、能力で使えなくしたんだろ?」

「使ったんだ。そして、意味もあった。だって、今目の前にいる彼らは――」

 俺は自らの推理の根底をぶちまける。


「キングダムの中にいる」


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