49-宮殿-
「何してんだバカ」
海馬に殴られた。
がれきに埋もれてしまい、気絶して動かなくなった楊瀬さんと華壱を縛りあげ、楊瀬さんの首には『嘘吐き』というプレートをかけておいた。意味があるかどうかは分からないが、恐らくこれで消えたりはできないだろうと言っていた。でも、多分意味ない。そっちに賭ける。実際そうなると困るが。
「まあ、何とかなると思っていた」
「予想外過ぎて俺の運でも対応できなかったろうよ!!」
「虎郷が助けてくれたんだから、いいだろ?」
「ギリギリだったけれど……」
虎郷はそう言って俺を睨んだ。
「終わり良ければ全てよしってことで!な!」
俺はそう言ってこの場を治めた。
「治まってないですし、奏明さんが言わないでください」
雅が珍しく冷たく言い放ったのを聞いて、ああ、こりゃ割とまずかったな、と気づいた。
「これどうするんだよ……」
海馬が苦笑いを浮かべた。
「いや、多分学校側が費用出してくれるんじゃないかなと思ってやっちゃった……」
俺の自信のない発言を、
「まあ、それそうでしょうね。乱さんという選挙を管理する者に拳銃の携帯を認めていた……んでしょう?」
と虎郷はフォローしてくれた。
「ああ。だから――」
「限度があるけど」
結局責められた。
3人は俺をジト目で見つめている。気まずい。
「でもそんなことより」
「そんなこと……ですか」
雅が怖いが、
「そんなことより」
と俺は続けた。
「聞き捨てなりません。奏明さんはまだ何もしていません」
「何も……?」
なんだろう。何かをしてあげるのだろうか。靴でも舐めるのだろうか。何にせよ遠慮するが。
「ごめんなさいの一言もありません」
「……ごめんなさい」
「はい。問題ありません」
雅はそう言って笑顔になった。海馬も虎郷も「まあいいや」という微笑で目を逸らした。
「ありがとうございます」
俺は静かに言って、俯いた。
何だろう、別に同級生なので上下関係なんてないけれど、それでもいつも下手に居てくれる人間に怒られるのは、うん。
興奮する。
「……」
虎郷が俺の心を読んだのか、冷たい目と殺気を見せるが、今度こそ華麗にスルーした。
「で、だ」
俺は上を見上げた。
「屋上……か」
俺は呟いた。
3人も上を見上げた。
「一応、向こう以外は全員終わったけどな」
海馬はそう言った。残っているのは一条字先輩……と、シオさんか。
「加勢しに行くか?」
「アイツは嫌がりそうだけどなぁ……」
「それでも、もしもということもあるでしょう」
と虎郷が言った。
「もしも……って、アイツが負けるってことか?そりゃあるかもしれないけど、その程度のことはもしもってほどでもないだろう?」
「もっと大変なことがあるでしょう」
そう言って虎郷は俺を睨む。先ほどの視線よりも強く、だ。
「彼が負けることは、響花へのダメージを意味するのよ」
「!!」
「急ぎましょう」
虎郷はそう言って走り出した。海馬と雅は間髪入れず、俺は少し遅れてから走り出した。