46-宮殿-
俺の目の前では戦闘が変わっていた。
楊瀬さんは乱さんが撃つ銃弾を避ける。そして乱さんへと攻撃しようとするが、乱さんもそのまま許すわけがなく、刀を片手で振るい牽制する。
「銃を下ろしてください」
「勝つためです。邪魔をしないでください」
そう言って今度は銃を俺に向けてくる。俺は咄嗟に身構えるが、よく考えたらこの程度の身構えじゃ銃弾が放たれてもダメージを軽減できるはずがなかった。
パン、と銃声がする。
俺の足元に弾痕が出来た。火薬のにおいがしてから、俺の発汗量に拍車がかかる。
見ると楊瀬さんが、その腕を踵落としで強制的に下げさせていた。
「やめてください、と言いましたが」
殺気がこもった目だった。
「いい加減にしろ、私の邪魔をすると許さんぞ」
口調の変化に伴い、先ほどまでが比べ物にならない殺気があふれる。
ていうか、なんだこの状況。
いったい何が起きて――。
ドガン!
という破砕音とともに、校舎がぐらついた。
バランスを崩す。視界が眩む。楊瀬さんと乱さんも離れた。
そしてその瞬間、乱さんが俺に銃口を向けた。
ヤバい。
本能だか何だかが俺にそう告げた。
俺は後ろに向かって高く飛んだ。高く飛んだのは恐怖のあまり制御が聞かなかったからだろう。
そして弾丸が俺の後方の窓ガラスを射抜き、派手に割れる。
俺はその。
その窓ガラスから外に出てしまった。
「げええ!?」
この下は中庭のはず。ここは5階だ。
落下したらまず、命はない。
左手でどこかしらに場を作らなければ――。
そう思った瞬間、何かに俺は乗っかった。
咄嗟だったうえに焦っていて、まったく調整が聞かず、しかも突然現れた床に驚いて――とにかく俺も狼狽えていて、左手を思い切りその床についた瞬間。
「ぐがああああああああああああああああ!!」
真下から雄叫びがした。
そしてそれが俺の立っている床だということも分かり、それが落下の方向へと向かっていることも分かった。
「やべ」
俺はその床をつかむ。
ヌルヌルと滑って掴むことはできない。
「く……!!」
咄嗟に左手に持っていた机の脚で作った即興の武器をとがらせてから、そこに突き刺した瞬間、それは倒れ始めた。
「うわああああああ!!」
かなりの高さがある。これ地面に落下するのと同じじゃねえのか――。
ドォン、と落下して俺が周囲を見ると、3人の人影が俺を見ていた。
「……嘉島君!?」
「おお、虎郷。よう」
俺は驚愕の表情を浮かべている虎郷に、気楽に返事を返してから笑った。