45-宮殿-
大蛇はすぐさま動き始めた。
華壱は飛び上がるが、虎郷は呆然として動けずに大蛇の突進をまともに喰らって校舎に激突する。
「かは……」
「ナイスー」
「華壱ふざけている余裕はないぞ」
「わあってるわあってる」
おどけた口調で猿は言うと、大蛇の頭の上に乗った。
「一気に行こう」
「任せろ」
2人が会話を済ませる。
虎郷も何とか体勢を立て直し、雅も状況把握を何とか済ませたところで。
大蛇が飛んだ。
空高くに飛んだのだ。
正確には跳躍したのだろうから、飛んだとは言えないだろうが、まるで龍のように伸びるように天へ向かっていった。
「な……!?」
雅が見上げると大蛇は落下を始めていた。
雅と虎郷2人ともを潰すように、口を開けて落ちてきたのだ。
「雅ちゃん、スパイラルよろしく」
そう言って虎郷が、雅に近づいた。
「え……」
「飛ばして」
「でも――」
「早く!!」
そう言った瞬間に虎郷が飛び上がった。
躊躇している余裕はなく、雅はスパイラルを足にかけて、その足に虎郷を乗せて吹き飛ばした。
大蛇の首元に向かって虎郷が飛んでいく。
「させないぜ!」
そう言って華壱が虎郷を叩きつけにかかる。
「これからはちゃんと考えてから攻撃しなさい」
そう言って虎郷は体を無理やりねじった。
空中では当然自由に動けるわけがないので、華壱は応対できない。しかし同時に虎郷も勢いを弱めてしまい、顎の直前で止まってしまった。
「残念だったな!虎郷!」
華壱はそう言って、にやりと笑った。
しかし、
「どうかしら」
虎郷もにやりと笑った。
その状況から、オーバーヘッドのように体を回す。
ドゴォ!!!
と。
大蛇の顎が吹き飛んだ。
「!!!!!」
大蛇は校舎に飛んで行って激突した。
「私にはあのくらいで十分なのよ」
そう言って虎郷はにやりと笑った。
空中で何回転かして、鮮やかに地面に着地する。
それでもなお、蛇はすぐに体を起こした。
「まあ……蛇は死ににくいわよね」
「まだまだ……始まったばかりだぞ」
起き上がり虎郷と雅を睨みつけていた、蛇は。
「ぐがああああああああああああああああ!!」
急に大声で叫んで、地に倒れ伏した。
そして、その蛇の背には何かが乗っていた。
海馬は階段を駆け上がる。
「何が起きてんだよ……」
先ほど空から落下していっていたのはどうも蛇だったらしい。最初は龍かと思ったがまずありえないから恐らくあっているだろう。
海馬は冷静に判断しながら行動の続きを考える。
「嘉島は、いったいどこにいるんだ……?」
と、最上階への階段に差し掛かったとき、
「――う、ぐ?!」
地震。
だと思ったがふと廊下を見ると、何かが見えた。
「!?」
先ほどの蛇だ。蛇の頭が一つ下の階に激突している。
校舎がそれによって揺らされたらしい。窓ガラスが割れて、廊下に突き刺さっている。
「どうなってんだよ……これ……」
海馬は苦笑して、その外を見た。蛇は体勢を立て直そうと動いているのが見えた。
その時、パン!パリンッ!という音がした。上の階の方だった。
そしてしばらく何の音もせず10秒。
「何かヤバいにおいがす「ぐがああああああああああああああああ!!」
海馬の格好いい発言を邪魔するように、雄叫びが上がった。
本当に何が起きているんだ、この動物園的学校には。
海馬は急いで階段を駆け上がった。