44-宮殿-
「お手伝いしましょうか」
そう言って俺と乱さんの間にスッと現れたのは楊瀬さんだった。
「うぉわ!」
と戸惑っている俺とは逆に乱さんは
「邪魔です」
と一言言って、脇を抜けて俺を狙って一太刀振るう。
「く……!?」
突如として視界に入ってきたそれを避けようと俺は体を無理やりよじった。
そこに楊瀬さんの左足が伸びてくる。
俺の体は机にぶつかって、机を引きずりながら吹き飛ぶ。
「失礼。思わず足が出てしまいました」
「く……っそ!」
俺は焦りつつ、状況を変えるために何とか頭を回すが、
「!?」
乱さんは躊躇なく俺の眉間に銃を突き付けていた。
「やりすぎです」
「やりすぎくらいがちょうどいいでしょう。私のような一般人では能力相手には勝てませんから」
「彼はそういうタイプの能力ではありません」
「勝てばいいんです」
そう言って、乱さんは引き金を引いた。
パン。と。
俺のこめかみを弾丸がかすめた。
「!?」
驚いていたのは俺より彼女だった。
突如、横から蹴りが来たのだ。
「やりすぎです。絶対やめてください」
楊瀬さんが消えてから海馬は校舎内を駆け回る。
どこからか銃声が一発聞こえたが、気にせず走る。
「嘉島はどこにいるってんだ……?」
俺の運を利用して探しているというのに一向に形跡すら見られない。
海馬はそのもどかしさに苛立ちを覚えつつ、走り回っていた。
「……屋上では隼人がやってんだよな……」
そっちに加勢するという方法もある。
そう思って階段に向かって足を向けると――。
窓の外を黒い影が落ちていくのが見えた。
「ぐ!!」
虎郷の蹴りがクリーンヒットして華壱の体が、校舎に衝突した。
さすがに測定と予知では相手にならない。
「貴方の測定では私が攻撃したときしか相手の行動の余地が出来ないでしょう。でも私は相手が攻撃してきても、私が攻撃をした時でも予知ができる」
近未来予知の力で。
虎郷はそう言って華壱に追撃をかける。
「くッ!!」
しかし華壱も黙って攻撃を食らうわけがなく、無理やり体をよじって出る。
大体、予知ができる相手に勝てるわけがないのだ。そう言った意味では虎郷は最強なのだ。もちろん、籠目さんのように例外的に相性というものもあるが――。
「うあぁ!!」
と、横から悲鳴が聞こえて雅が2人の間に割って入る。
「すまないな。私も危機的状況ではこうする以外には思いつかなかった」
と、そう言った籠目さんは――。
「!?」
どうなっているのかと思った。
声はそちらから聞こえたが、存在がないのだ。
いやある。そこにあるが、長い。
その姿は――大蛇だった。
「え……!?」
「華壱。苦戦しているようだ。まとめてやってやろう」