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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第二章 運が定めたこの世界
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10-身勝手な怒りと衝動的怒り-

「・・・・・・どうしてこうなった」

 俺は呟いていた。

 俺と海馬はかなり広い庭にいた。但し俺は立っていて、海馬は仰向けに倒れている。夕食の部屋の壁が傍らに落ちている。警備員たちが来るかと思ったが、全員帰らせたようだ。

 もう、後には引けない。


「・・・海馬。価値観を押し付けてやる」

「・・・・・・・・・ぶっとばす」

 海馬はゆっくりと立ち上がり、俺を睨んだ。



こうなってしまった理由は一体なんだろうか。とりあえず、少し前の俺の記憶を見てみることにしよう。


「その通り。俺の能力は『運がいい』それだけだ」

そう言って海馬は紙をグチャグチャに丸めて、ゴミ箱を見ずに後ろに向かって投げる。俺のと海馬のを右手と左手で。

紙はゴミ箱に吸い込まれるように入った。

「俺は狙わなくても入る。俺は何かをしようと思っても思わなくてもそうなるはずだ」

 そう言って、海馬は笑った。

「席替えの時も、そういうことだったんだな」

 そう、隼人が言ったとおりだったんだ。


 「偶然自分の前の席だった海馬君が、偶然君の願いを聞き、偶然僕とも出会って、偶然引いた3つのくじが、偶然先生の書いた見取り図と一致して、偶然君と海馬君の願い通りだった」のである。



「・・・で、何かようなのか?」

 今度は隼人に向かっていっていた。隼人の放心状態は解消されている。

「僕らは、君の能力を解明したかっただけさ。でも、どうやらその能力は以前からあったものではないね。つまり新しいものだ。だからそれには『名前』が必要だ。」

「そうなのか。ふーん」

「名前は君が付けていいよ。ていうか、そうしないとダメだ。君の体を能力の方にのっとられる可能性がある。そのために物事に『名前』は存在するのさ。まぁ、そういうタイプの能力じゃなさそうだけれど」

「・・・何か規制はあるか?英語とか・・・」

「そっちの方が僕は好きだね。まぁ、日本語バージョンもなくはないけれど」

「・・・『サデンリィー・ラック』、日本語なら『必然的偶然』だな」

「悪くないセンスだね。後、できれば君の過去について聞かせてくれるかい?」

「理由にもよる」

 なんかどんどんと話が進んでいるな・・・。

 隼人はきっと過去に関する話からその能力が生まれたと思っているのだろう。つまり、海馬は『ミラー』ということか・・・。

「君の過去が、この能力に関わっていると思う。僕はその能力とかを蒐集しゅうしゅうしたいんだよ」

「・・・つまりはどうやったら俺の能力が起こるかということか?」

「察しがいいね」

「・・・いいだろう」

 海馬の言葉と同時に、隼人は目を閉じた。


「俺の家は今日、昨日できたような現状だ。隼人も何の仕事を海馬家がしているかは知らないだろう?」

「そんなには聞かないな。まだできてばかりの会社でこの裕福っていうのはすごいけど・・・」

「そんなすごくは無いな。この会社は俺の力で建てたようなもんだ」

「?」

「・・・別にそこまでいい環境だったとは言わないが、少なからず家族の関係は良好に保たれていた。だが、少し前に宝くじが当ってしまった・・・。2億だったな。もちろん俺の能力だ。その時までは自分の能力を俺は理解してはいなかったがな。その後、俺の父親の立場に居るはずの人間が俺の力に気付いて――このとき俺も始めて気付いたのだが――いろいろな宝くじを買わされた。それらのほとんどが当るんだから、父親の立場の人間から馬鹿笑いがでたな。そして、母さんもどんどんと蝕まれていった。金という欲望に。俺は自分の運を恨んだな。どうしてこうなってしまったのか。本格的にナゾだった」


 それ以上は語らなかった。


「そんなところだ」

 と海馬は締めくくった。

「なるほど・・・ね」

 と、隼人は目を開いた。

「・・・一応聞いておいてもいいかい?」

 隼人は指を出した。そして、


「死にたいとは思わなかったのかい?」

 そう聞いた。


「死ねると思わなかった。死ねるはずが無い。俺は俺の命を絶つことすら許されてねぇんだ」

 海馬は笑った。笑顔ではなかった。



「死ねるほうが幸せだ。俺は運が悪い。死ねたらどれだけ楽だろう」


 瞬間的に俺の体は動いていた。

 机を強制的に立ち退かせ(蹴飛ばした)、海馬の顔を殴った。

 勢いあまって、そのまま壁に激突する。粉砕する。そして・・・・・・。



 あぁ今はそういうことなのか・・・。

 じゃあ、ちゃんと言っておこうか。

「ぜってー命なめんな!」

 俺の発言。

「ぶっ飛ばす!!」

 海馬の怒り。

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