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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第七章 戦う未来とこの世界
289/324

30-大掃除 開始-


 5月5日。こどもの日。

 つまりゴールデンウィークは満喫して、明けた日ということだ。 


「始めるぞ」

 一条字先輩がそう言ってまた紙を投げるように配った。


 大掃除。

 校内に何人かの手勢がいる。そいつらを気絶させた人数で勝敗を決める。


 ……え。

「これだけですか?」

「説明はいらないだろう。これだけだ。日下、さっさと準備しろ」

「分かってるわ」

 そう言ってシオさんは準備を始めた。

 と言っても刀を構えるだけだが。

「俺は海馬の武器を使うことはできないのか?」

「俺の武器は運が悪かったら意味の分からない結果を与えるだけになる」

「音河の武器は?」

「ギター弾けるだけじゃなくて能力とちゃんと見合わないと意味がない」

 隼人が言った。

「ていうかそもそも、その人の武器に触れた時点でその武器はそこから存在を消す」

「ってことは音河のも海馬のも使えないってわけか」

 結局俺はこの右手と左手で戦えと……。

 しかもあの刀とかよ……。

「嘉島奏明。貴様もさっさと用意しろ」

 一条字先輩に急かされて、俺は昇降口に立った。シオさんも遅れて、俺の横に立つ。

「奏明、よろしく頼むよ」

 そう言ってシオさんは右手を出す。

 俺もその手を握って

「よろしくお願いします」

 とあいさつを済ませた。




 ところでこの間の夜の話の続きをしておこう。

「そうか」

 俺の推理を聞いて隼人は一言呟いた。そして黙った。

「……」

「……」

「……」

「……?」

「え、何かないのか?」

「別に何もないけど?」

「……お前の意見を聞かせてほしい」

「君の推理が当たっているという確証も、外れているという根拠も僕は持ってない。だから君の考えに関しては、そうか、としか答えられない」

 いや、そうだろうけどもう少し何か言ってほしい。

「そうだね。ならば僕の考えを言おう」

 隼人はそう言って俺の方を見た。

「君の推測は間違えているのかもしれない」

「……え?」

「例えば、僕ら側を勝たせたいのだとすれば、どうしてミヤビ君の時に行動しなかったって言うんだい?」

 ああ、それは確かに……。

「逆も同様に、一条字先輩側を勝たせたいのだとすれば、どうして楊瀬さんの時に行動を起こさなかったのか、ということになる。」

 ……。

「つまり、間違えているのかもしれないということだ」

「いや、反論させてくれ」

「どうぞ」

「向こう側も予想外だったんじゃないか?」

「根拠は?」

「海馬の運の良さと、雅の予想外能力だ」

 俺の発言に隼人が止まる。

「つまり――結局どっちなのかはわからないけれど、もしも俺たちを勝たせたいのだとすれば、予想外的に雅の行動が負けの方向に動いてしまった。逆に、一条字先輩側を勝たせたいのだとすれば、海馬の運が予想以上によくて、進化するとは思っていなかった……とか」

「……なるほど。説得力はある。しかし、どちらにせよ僕の推論にも君の推論にも根拠がないね」

「……そう……だな」

「そうだ」

 隼人が言った。

 そして俺を見る。

「君はシオさんの闘いを見ているだろ?」

「ああ」

「だとすれば、わかるはずだ。君とシオさんが戦ったとしたら、どちらが勝つ?」

「……俺が負けるだろ」

「ということは、もし次の闘いで相手側が何か介入してきたとしたら、僕らを勝たせようとしているってことだ」

「でも俺が負けるっていう根拠もないだろ?」

「それは今回の籠目さんとヒスイ君との戦いでも一緒だろう」

 ……それもそうか。

「まあ介入してきたときに相手がどちらが勝つと思って介入してくるかもわからないからこの考えも意味ないね」

「否定が早いな」

「完全に思い付きだからね」

 ま、やってみればわかることさ。

 隼人はそう言って、

「眠いから寝る。出てって」

 と言ってからベッドに横になった。

 俺はその言葉を渋々受けてからそのまま出ていった。




 わざわざ何故このタイミングでこの話をしたのか。

 それは始まってからの驚愕の事態につながるからである。


 事態について端的に説明するなら、結局はこの戦いも勝敗の決められない戦いとなってしまった。


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