08-解析終了の音は金鎚-
雨が降ろうが槍が降ろうが・・・とか
例え火の中水の中・・・とかって。そういう職業の人いるよね?
順番に。
古代の戦争の最中の兵士たち。
消防士とスイマー。
そういうのもいるよね。
「で、能力は解明できたの?」
昼休みの間に虎郷を彼女の中学校に返す事にした。
うちは「榛谷第2中」で、進学校ではないのに対して、
彼女の学校は「東海林中学校」という進学校の在校生である。
「いや、分からん」
「考えてみたの?」
「・・・いや・・・隼人が考えるだろう?」
「・・・ふむ」
と顎に右手を添えて、虎郷は言った。
「さっきは、仲間を・・・友達を頼れって言ったけれど、だからと言って頼りすぎじゃないかしら?」
「どういうことだ?」
「自分で考える事も大事だと思うわよ」
「・・・それもそうだな」
というわけで考えてみた。しかし、最終的には
「でもなぁ・・・総合的に考えるとそれこそ何でもできる能力としか思えないんだよ」
という結果だった。
「何でもできる・・・か」
「ん。いや、何でも見えるなのかな?未来が見えるのか・・・人の思いが見えるのか・・・」
「私やあなたと同じような能力という考え方ね」
「あぁ。でも、何かそんな感じじゃないんだよな・・・」
「・・・深く考えるとむしろ出て行けなくなるタイプの問題かもしれないわね」
と。そういう結果だった。
「この地球・・・世界だってそんな物よ。太陽との距離とか人間が生まれて文明が発達したりとかそういうものはほとんどは、偶然がもたらしたものなのだから」
と。
きれいに丸く収めた虎郷は
「ここでいいわ」
と言った。
「ん?まだ後10メートルくらいあるぞ?」
「だから、よ。学校にこられたら、後で噂になると困るのよ。私は清楚で可憐な「深窓の令嬢」を演じ続けるのだから」
「人の学校には侵略してきて、よけいなこと言おうとしたお前が言うのか」
「それで人の心を読んだ責任はチャラということにしましょう」
「安ッ!」
まぁ、安い事に越した事は無いけれど。
そして、結局そこで別れ俺は学校に戻った。昼休みは丸つぶれだったが、掃除の時間には間に合った。
俺は学校ではあまり囃し立てられるようなキャラクターでは無いので、学校に帰っても何か言われる事は無かったが、皆から不思議な目で見られるし、あの女のことを「深窓の令嬢」などと呼ぶ男まで生まれてしまった。
あぁ・・・憂鬱だ・・・。そして隼人のせいで全てこうなったのだろう・・・。
アイツは何もしなくても俺には迷惑をかけるようだ。
そんな事を考えながら、窓の風景を眺める事で本日を終えた。
学校から帰る前に、虎郷の言った事を思い出す。
頼りすぎ・・・か・・・。でも確かに、俺はどうすればいいのだろう。
俺は、アイツが居なければ何もできないのだろうか。
例えば、アイツはもし俺が居なくても事件を解明する事はできる。俺が居る事に意味があるのは、5日かかるのが3日で済むだけの話である。
でも、俺だけでは事件を解決する事はできない。隼人は事件の早期解決のためだけに俺たちを『利用』しているだけの事だ。
早い方が優秀で。速いほうが強い。
だから、疾風の鳥「隼」なのだ。
そんな事を考えた後、誰も居ない教室で
「はぁ・・・」
俺はため息を吐いた。
そして気付けば校門に立っていた。
「ここでアイツの能力を見たんだよな・・・」
ボールの速度と植木鉢の落下速度、ボールの足捌きのテクニックや、全ての位置。
飼育委員の声を聞いてからの反応速度とは思えない。それこそサッカーボールを上に蹴ったらそこに植木鉢が落ちてきたようなものだ。
それに、くじ引きの時もそうだ。隼人が言っていたように、あそこまで偶然が重なるなんてありえない。別の何らかの能力が起因していると考えるほうが自然のはずだ。他人の考えを読めるような・・・見えるような能力と言う事だろうか?
「何もかもありえねぇよ・・・」
そう、ありえない。あってはいけないのではなく、あるはずが無い。
「・・・・・・・・・まさか・・・」
突然、脳神経に電撃が走るような感覚だった。コナン君はこんな感覚を持っていたということか。
俺は走り出した。歩かなければ、隼人の家まで15分もかからない。
その途中に虎郷がいた。
虎郷が俺の方を振り向いた。同時に俺は虎郷の手を掴んだ。
「って・・・何?」
「分かったんだ。多分・・・」
「あぁ、その人の能力の事?」
「ああ」
「どんな結果?」
「常識で考えたからダメだったんだ」
「?」
「だって俺たちは・・・っと」
着いた。そして、玄関のドアを開けた。鍵は開いていた。全く・・・部屋に引きこもるなら、家の鍵は閉めろ!と思って気付いたが、基本はオートロックだった。のでそれはつまり隼人はそこにいるということ(しばらくしてから気付いた)。
そして解析終了の音が鳴る。隼人は頭に白い手ぬぐいを巻いていた。
トン、カン、と。金鎚が音を鳴らしていた。
「・・・あ、嘉島君」
「隼人・・・!」
「ダメだろう、ドアを蹴破っちゃ。まぁ直したけれど」
そして、頭に巻いていた手ぬぐいをはずして言った。
「君たちはさっさと着替えて。行くよ」
その発言に虎郷が反応した。
「どこに?」
「海馬君家。聞いてるよね?」
そういって、隼人は準備完了していた。
着替えを終了させた俺たちは、リビングに立った。
「隼人・・・」
「・・・嘉島君も分かったんだね?僕とは多分違う結果だろうけど」
相変わらず、見透かしたような態度をとった。
「あぁ」
「で、どんな結果なのかしら」
虎郷がさっきと同じ質問をする。
「常識で考えちゃダメだよ・・・だって僕らは、」
俺の方を向いてアイコンタクト。
「「非常識だから」」
新作考えると今の作品に支障が出てしまうタイプなので
新しい小説のネタは闇に葬ってみた。
うむ。どうにも頭から消えない。